2004年09月29日
SMU 第113号「実利のための学習」
「企業価値評価セミナー」が3本走り出すことになり、ちょっとだけ混乱気味です(笑)
「あれっ? この話は、このグループで前回したんだっけかな?」などと。
「これ、やりましたっけ?」と、受講生に聞くのは、講師としての姿勢としては最悪ですね。
でもね、それでかまわないと思っているのです。
なぜなら、「やりましたよ」という人と、「やってないです」という人が混在することを確認できますし、「やってないですよ」と発言する人は、要するに理解できていないというわけで、そういう人が多ければ、復習講義をすることになりますから、結果オーライというわけです。
こういう場合、「やりましたよ」という人には時間の無駄にならず、且つ、「やってないです」という人には、ちゃんと理解してもらうために、同じ事柄を「別の視点」で話すことにしています。
何度も書いていることですが、物事の「理解」というのは、人に話したり、文章化したりすることによって、深まるものです。いや、深まるというより、その行為によって初めて理解するわけです。
で、理解を超えて「理解が深まる」というのは、同じ事柄を別の視点から見たことを表現できるようになることです。ここまで到達しないと、自分の投資判断、経営戦略の決定などに「自信を持つ」ことはできないわけですね。
わかりやすく、比ゆを使うとこうなります。
「渋谷駅周辺」についての地理の理解というのは、渋谷駅を中心に据え、常に渋谷駅の方向を意識しながら歩き回ることによって達成できます。同様に「原宿駅周辺」についても同様のことが言えます。
しかし、「渋谷駅周辺」のある場所、たとえば「渋谷消防署」の位置を、渋谷駅を中心に置いた場合の位置と、原宿駅を中心に置いた場合の位置との両方を理解することにより、渋谷駅と原宿駅の地理的関係も認識できるようになります。これが理解を深めるということになります。
すると、たとえば消防署とは別のNHKの場所は、渋谷を基点にした場合と、原宿を基点にした場合との両方を認識できるわけで、結果「どっちからでも大して変わらないよ」(実際には原宿駅からの距離の方が若干近い)と解釈できるわけです。
企業価値においては、いつか書いたことがありますが、EPS(一株当たり利益)とPER(株価収益率)それぞれの意味を別々に「文言の暗記」とするのでは、PER=株価/EPS という理解には達することができないわけで、つまり、それぞれの「数値の重さ」を感じることができなくなってしまうわけですね。
この辺が、卒業をするため(=成績を取るため)の学習と、実践に生かすための学習の大きな違いとなります。
そんな姿勢でセミナーに臨んでいるわけですが、残念なことに、実際のセミナーの場面では、僕の話(=つまり、一つの事柄を複数の視点から解説)を聞くことによって、理解を深めることより、僕の「文言をメモる」のに必死な人が見受けられるのです。
ノートを貸し借りして事足りるなら、はじめから「Valuation」という本を買って読めばいいわけです。でも、多くの人はこの本を読んでも「文字は追えるが、理解につながらない」となるわけでですから、講義では話しに集中して、メモは取らず、復習として同書に目を通せばよいのに・・・といつも思っているのです。
以上は、この国の「教育行政」の悪癖と理解しています。
たとえば、「企業価値とは、その企業が将来生み出すフリーキャッシュフローの現在価値の総和である。」なんてことは、(僕は通ったことがありませんが)大学の経済学部や商学部では、おそらく教えているはずです。しかしながら一切身についていないわけですよ。(実際、経済学部出身の受講生は複数存在します)
「一つの事柄を、複数の視点から捉え、理解を深める」などと大げさなことを言うまでも無く、「企業価値とは、その企業が将来生み出す将来フリーキャッシュフローの現在価値の総和である。」ということは、すなわち、「債券価格は、その債権が約束している将来キャッシュフロー(債権の場合は利息と満期の返済)の現在価値の総和である」とつなげられるはずですし、債権の場合のIRR(内部収益率)は、すなわち「表面利率」であり、市場での売買価格の額面からの乖離により「利回り」が変動すると理解が進み、この場合の利回りは、投資家から見れば「その債権リスクに見合った期待収益率」となるわけで、最近もてはやされている不動産の価値評価における「収益還元法」についての理解もこれと同様であると、理解できるはずなのです。
(ちなみに、以上の文章を100%理解できなくて、且つ、お金が欲しい、または、同じ労働に対してお金をもっと稼ぎたいと思っている人は、「企業価値セミナー」を受講した方がいいですよ。そんな方は、すなわち「お金の理屈」を理解していないわけで、つまり労働効率が悪いわけですから・・・営業でした)
つまり比ゆで書いたところの原宿駅と渋谷駅の相対的な関係と、ある特定の場所が、それぞれの始点からの相対的な位置関係を理解するに至るわけです。
以上の理解のためには、「メモを取る」なんて行為は、ほとんど意味がありませんし、メモを取る行為に没頭することは、そもそも受講料を溝に捨てるようなものなのです。
当事務所の「企業価値評価セミナー」に限らず、社会人としての学習は、それまでの学生としての学習手法から決別することから始めないと意味が無いですよ。
で、何が言いたいのか・・・というと、受講中にケータイの呼び出し音がするわけですよ。
誤解を恐れずに書けば、僕はかまいませんよ。だって、受講料もらっているわけですから。
でも、せっかく受講料と貴重な時間を使う受講者自身の損になるわけですからね。
「大丈夫かしら?」と思ってしまうわけです。
「1円でも無駄にしない」ということと「ケチ」とは、まったくもって別物ですからね。
これも「貧乏暇なし」=「暇が無いから貧乏」の確かな証拠となるわけです。
ところで、「企業価値セミナー」の3回目辺り(「辺り」と表現するのは、受講生の基礎知識によって、講義内容を調整しているので、受講グループによって進行が違うため)では、企業の「バリュードライバー」(=企業が企業価値を生み出す根源的な理屈)の解説のために、新規投資の営業利益に対する割合(正確には、「本業による営業利益に(1−限界税率)を掛けた額」と新規投資の割合)、新規投資の永続的な利益率、営業利益の永続的な成長率によって、企業が生み出すフリーキャッシュフローを算出し、それを適当な割引率で現在価値に変換し、その総和を求めることをエクセルシートで実行するわけです。この段階でバリュードライバーの検証のためのシートを手に入れることができるわけですが、そのシートを使って、(エクセルのシートですから)簡単に「各種因数の変化」と「企業価値」の関係を検証できるわけです。
たとえば、新規投資の利益率が割引率(=企業から見れば資本コスト=投資家から見れば期待収益率)と同じであれば、「どれほど新規投資を増やしても企業価値に変化が無い」ということが検証できますし、さらに新規投資の利益率が割引率を少しでも下回る場合には、増益が続いたとしても、企業価値は減衰することが理解できるわけです。(つまり、増収増益が無条件で企業価値を上昇させるわけではないわけです)
これらのことは、「〜ということなので、各自適当に数値をいじって確認して置いてください」と伝えても、おそらくほとんどの受講生は、やらないですよね。
もったいないですよ。せっかく「お金の価値を知ることができるシート」を作成しているのにね。
しつこいようですが、僕にとっては、痛くもかゆくもありませんよ。だって受講料もらっているわけですからね。
ちょっと難しくなりましたが、実務や実利に生かす学習というのは、以上のようなことなのです。
追加ですが、いわゆる「証券マン」、いわゆる「銀行マン」、いわゆる「投資家」、いわゆる「経営者」などと世間で分類される職業の「大部分」の方々は、以上のような「お金の理屈」について、ほとんど理解していませんからね。あしからず。
板倉雄一郎 2004年9月29日





















「企業価値評価の仕方を教えます」という案内が、以下の会社から来たのですが、板倉さん的にはどうですか?
http://japanbrand.jp/