板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第179号「ゴールドラッシュに例えて」

前回のエッセイ(SMU第178号「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力」)が、難しくてよく分からないという方のために、今日は、「ゴールドラッシュ」に置き換えて、カンタンに書いてみましょう。(だって皆さん、「個人投機家の増加=株価の上げ要素」と勘違いしているでしょう?)

ホテルは、オンライン証券会社です。
個人投機家は、もちろん、一攫千金を狙った採掘者です。
鉄道は、ISPをはじめとするネットインフラです。
企業は、「採掘場」としましょう。
そして「採掘権」を株式と考えてくださいね。
(ただし現実の企業との違いは、採掘場は価値創造を行いませんが、企業はそれを行うという点です。が、これは今回無視します。なぜなら、今回比ゆしたいのは、「短期」の個人投機家のお話ですからね。つまり「時がたたなければ、価値は創造されない」ということです。)

採掘者が増えたおかげで、ホテルは儲かるようになりました。
つまりホテルの稼働率が上昇したわけです。
ホテルは、宿泊費を下げ、価格競争が始まりました。
(=ネット証券の出現による売買手数料の低下)
採掘者は、それまで、せいぜい年に数回しか採掘に出かけなかったのに、最近ホテルが宿泊費を値下げしたのをいいことに、毎日ホテルに宿泊し、毎日採掘に行くようになりました。もちろん鉄道を利用して。
(=個人投機家の増加)
一泊辺りの宿泊費は、確かに安くなったのですが、毎日宿泊するものだから、結局年間の宿泊費全体は、むしろ増えてしまいました。
(=市場全体の取引手数料の増大)
それでも、採掘者は、「大丈夫、その分、ゴールドをたくさん発見してやるさ!」と、毎日毎日がんばるのです。
(=個人投機家の期待収益率の増加)
宿泊費の増えてしまった採掘者にとって、それまで以上に多くのゴールドを掘り当てないとならなくなります。
これは、すなわち、採掘者にとって、それ以前は、1Kgのゴールドで充分満足していたのに、今では1Kgより、もうちょっと多く採掘しないと、同じ満足が得られなくなったということです。
(=「個人投機家の期待収益率は、取引手数料の増大分と同等程度上昇する」)
ところが、「採掘場」は、採掘者の都合だけで、直ちにゴールドの産出量を増やすことなど出来ません。
よって、採掘者は、増えた分のコストを補えない採掘場の採掘権を「割高」と感じるようになり、次々に「もっとゴールドの取れる採掘場は無いか?」ということで、採掘場を渡り歩くことになるわけです。
渡り歩くということは、採掘権を人に譲り(売る)、その金で別の採掘権を買うということになります。
採掘権が割高だという理由での売り手が多くなれば、採掘権価格は下がります。
つまり、その採掘場全体の採掘権価格は、ゴールドの産出量に対して相対的に低下してしまうというわけです。
(=算出されるゴールドに対する「相対的な株価の下落」であって、日経平均の「絶対値」が上がるとか、さがるとか言っているわけではありませんからね。)
どうですか、わかりましたか?

ところで、冒頭にゴールドの定義をしませんでしたよね。
なんだかわかりますか?
ゴールドは、当然ながら「キャッシュフロー」です。

あれ? 気がついちゃったあなた・・・あなたはバリュー投資に向いています。
(というか、バリュー投資って、日本人のDNAに組み込まれている性質と似ているのですよ。)
採掘場が生み出すゴールドは、長期では、少なくなるどころか、少しずつ増えているわけです。
正確には、ゴールド産出量を年々増やしている採掘場「も」あるというわけです。
そして、その価値は、当該採掘場の採掘権価格の短期的な上下に無関係に存在するわけです。
つまり、ゴールド産出量の割りに、採掘権価格が安い採掘権を買えばよいわけですよ。
そして、余計なコスト(宿泊費)を払って、一生懸命毎日毎日採掘場へなど出かけなければ良いのですよ。
時がたてば、皆が改めて、ゴールドの価値に気がつきますし、時が経てば、ゴールドの産出量そのものも増えるわけですよ。もちろん、まともな採掘場の管理者が居る採掘場に限りますけどね(笑)

「時が経たなければ、価値は生み出されないのです。」

ところで、ホテルや鉄道はどこ行った? という方へ・・・
彼らは、確かに儲けましたよ。
ただ、大きすぎるホテルや、ハイテクに投資しすぎた格安高速鉄道は、急いで投資しようとしたために、高利のお金を調達しなければならなかったらしいですよ。
なので、稼いでも、稼いでも、金利(資本コスト)が高くて大変らしいですよ。
まあ、今は、それでも、金利が安いですから、何とかなっているらしいですけどね。
それでも足りないから、時には、ヨーロッパで、ヨーロッパの通貨建ての借金を、高利で実施した人も居たとか居ないとか(笑)
いくら固定金利(利率固定の社債)で資金調達していても、期限が来れば、新しい借金(社債)に切り替えなければならないみたいですからねぇ。
そのときに、金利が上昇していないことを、祈るしかないですよね。
でも、その人、ゴールド産出量の非常に多い採掘場の採掘権を持っているらしいから、いざとなれば、その採掘権を売れば、何とかなるかもしれませんけれどね。

以上は、将来の話ですよ。それも、僕の想像の域を出ていませんしね。

ということで、僕は、相手が小学生だって、経済や経営について説明できるというわけですよ。
当事務所のセミナーでは、こーんな説明も、僕は多用しますよ。
どう? いいでしょ? うちのセミナー(笑)
(セミナーでは、個別企業の批判や、推奨は一切いたしません。あくまで分析手法を教えるために、個別企業を題材するだけですから、あしからず。)

以上、「ゴールドラッシュにたとえて」でした。

価値を生み出し続ける企業を探すのは、知恵と知識と経験が要るのです。
必要なモノのうち、その価値に比較して安く買えるものは、とっとと買いましょう。
セミナーの価値がわかる人だけ来ていただければ良いのですけどね。
だれかれかまわず、人数さえ増えればよいとは、思っていないのですよ。
(だって、セミナーそれ自体は、大して儲からないもん。)
でも、受講希望が殺到すれば、やっちゃうんだよね(笑・・・おだてに弱いんですよ)
僕の信念は、「日本人のフィナンシャル・リテラシーを高めたい」ということなのです。

2005年2月1日(分) 板倉雄一郎 

PS:「バランスシートを小さくしてゆく経営手法」については、次回、ティップスで書きますね。
次回の本題は、「ゲーム理論の弱点」について、書いてみましょう。





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