板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第95号「失望」

突然ですが、このエッセイ、「少なくとも」、64号以降に書いてきた企業評価を中心とした内容については、書く気力が減衰しております。
理由を一言で言えば、「丁寧に書いても、伝わらない」という、書き手に常に存在するジレンマです。
それでも、商業文章なら、「売れればいいさ」と解決することもできますが、せっかく能動的に読んでいただいているにもかかわらず、その真意が伝わらないのでは、解決のしようがありません。
アクセスがいくら伸びても、直接稼ぎになるわけではありませんし、直接の稼ぎを目論んで毎日アップーデートを始めたわけでもありません。ただただ、「読んでよかった」、「なるほどねぇ」という読者が生まれることを望んでいただけなのです。当たり前ですが、このWEBから直接の儲けはありませんからね。

毎日読んでいただいている方の、悪口にならないように慎重にその経緯を説明するつもりですが。。。

「板倉さん、毎日読んでいますよ、デイトレの日記」
確かにデイトレに関するティップスは書いています。ですが、主な内容はその正反対に位置する企業価値評価についてです。

「子株(=株式分割のこと「らしい」)が出るときは、儲かりますよねぇ」
確かに、短期では、これ以上ないぐらいの儲け「ネタ」です。しかし、企業価値になんら変化がない株式分割による株価高騰は、バブル以外の何者でもありません。それを「承知で」博打るなら、それはそれで、一つの手段だと思いますし、僕も実際に「デイトレ資産」では、やっています。しかし、「お金というものは、自ら意思を持ってリターンを追いかけます」から、こんなこといつまでも続きません。このような話を何の躊躇もなくする方々は、1988~90年を知らない人たちばかりです。

「株式分割による株価高騰は、スタンダードになるかもしれませんね」
ありえません。超短期では、今も昔(無償増資といわれていた頃)も、株価が上がる材料ではあります。しかし、企業価値に変動がありませんから、すぐにしぼんでしまうバブルです。経営者がこれを材料に分割直後に高騰した株価を利用した公募増資などするのは(「おりおば」で言えば「おりこうさん」の分類ですが)株主に損失をかぶせる手法でしかありません。

「動きが悪いから、捨てました」
確かに僕も、そう思うときがあります。しかし、しつこいようですが、お金はリターンを求めて動きます。仮に、株価に対して異常なぐらいキャッシュフローが良い会社があったとします(仮にでなくともありますが)、この企業がいつまでも放っておかれると思いますか? その企業は、毎年着実に現金を積み上げ、今仮に純資産倍率が2倍でも、数年で純資産倍率が1倍を下回ります。そのようなときに仕込もうとしても、遅いのですよ。

「業績のいい会社ありましたよ」
業績のいい会社、経営の優れた会社、は、確かに良いです。しかしそれが既に株価に織り込まれていては、投資としてのうまみは薄れますし、そのような企業の場合、次々に発表される業績によって、株価は乱高下します。

「低成長分野で、ぱっとしないですねぇ」
派手か、地味か、などというのは、どうでもよいことです。
その企業を手に入れるために支払う現金が、得られる価値より「十分に」少なければ、それでよいわけです。

ということで、しばらく、カジュアルネタにシフトします。

2004年7月20日 板倉雄一郎





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