板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第109号「不動産投資」

SMU108号(=前号)での紹介とともに募集を開始した「企業価値評価セミナー」の一般受付ですが、今のところ「順調に」申込が集まっています。

「順調に」というのは、「驚くほどたくさんの申込」でもなければ、「全然申込がなくて、がっくり」でもなく、その中間といったあたりです。

それでも、僕は感慨があります。僕はITに目をつけ、「商売になる」と思ったのは、古くは「Macintoshとパソコン通信」の時代でした。あれから、僕はネットユーザから、ネット事業者になり、その後に大失敗を経験し、その数年後ネット・バブルが始まり、崩壊。

近年、ネットがようやくキャッシュを生む時代になりました。

(だからと言って、まさに成長過程にある新興ネットベンチャーが、配当やら自社株買いをするのは、賛成できませんが・・・そんなことするぐらいなら、投資機会を探して、実際に投資して、企業の内在価値を高めていただきたいと、真っ当な株主なら思うはずです。事実、配当を発表したおかげで、株価が下落の一途ですよね。一体何を考えて経営に当たっているのでしょうか???これも企業価値が如何にして高まるのかを全く知らない経営のなせる業です。)

事実、僕の(個人)ビジネスは、講演も、コンサルティングも、執筆も、そしてセミナーも、このWEBを通じて営業し、キャッシュを生み出しています。高校生の頃、母親をだまくらかしてパソコンを購入してから、既に23年になります。

僕の着眼そのものは、間違いではありませんでした。今は、それだけでも、十分に満足です。でも、満足を超えて「うれぴぃ~!」になりたいので(笑)、是非セミナーに申し込んでくださいね。しつこいようですが、一生役に立つ知識です。

それでは、本題「不動産投資」です。

世の中、REITに始まって、不動産に関連する投資についての話題が多いですね。実は僕、不動産投資は一切やっていません。有り余るほどの資金量があったとしても、恐らく僕は、不動産投資はしません。

いつものように、結論から先に書いてしまいましょう。「不動産は、それ自体が価値を創造しない」からです。「不動産に価値は無い」と言っているのではありません。

僕個人も雨風凌いだり、荷物を置いたり、郵便物を受け取ったりと様々な生活の中心として「住むという機能のための不動産」があるわけです。同様に、「住むための機能を求めるが、経済的に所有することができない(または、しないほうが有利と考える)」という大多数の人が居る限り、賃貸不動産が収益を生むことも事実ですし、「住むための機能」ばかりではなく、店舗や事務所としての価値を否定するつもりは、100%ありません。

更にしつこく「否定しないです」を連発すれば、以上を背景にした不動産投資に「うまみが無い」とは全く思っていません。しかし、結論で書いたように、「不動産それ自体には価値はあるが、不動産それ自体が『価値創造』を行うものではない。」と、見抜いているから、不動産投資は、「投下資本利益率」を考慮すると、僕にとっては「うまみが少ない」ということになるわけです。

以上のことを、しつこく解説するまでも無く、価値を生み出す源泉は、「人」にあります。人は人に対する(マーケットに対する)価値を「創造」することができます。

人を扱う経済主体として企業があります。企業は人件費や設備投資を負担する代わりに、人から生み出される「価値」を市場に提供するシステムですから、企業を所有する者は、その企業が真っ当に経営されている限り、投下資本に対する利益が、インフレ率や、地域(たとえば国)全体の平均的な経済成長率を上回ることが、しばしばあるわけです。

いつも書いていることですが、経済的な成功とは、得られた絶対額の大小ではなく、得られた経済単位(たとえばキャッシュ)の相対的な価値に基づくものであるわけですから、他者より多くの投下資本利益率を得られて初めて、経済的な成功となるわけです。

「他者より多くの投下資本利益率」を得るためには、そこに「創造された付加価値」が必須となります。でなければ、単に「金額が増えただけ」ということになり、この場合に増えた金額で手に入れられる価値は、金額が増える前に手にいれられるモノの価値と金額が増えた後に手に入れられる価値が等価ということであって、経済的な成功には全くなっていません。

ちょっと分かりにくかったかもしれませんが、以上を理由として、僕は不動産投資を一切しませんし、今後するつもりもありません。投資をするなら「価値創造を伴う」企業に限定しているわけです。但し、不動産に関わりたくないということではありません。

もし「不動産を有効活用する手法を持った企業(=たとえば、ホテルの不動産を所有する企業ではなく、ホテルのオペレーションをする企業)」があったとすれば、間違いなく投資します。

この場合も不動産投資ではなく、不動産を利用した、付加価値「創造」をする企業を所有するということになるわけですが。 ちなみに、今の日本を経済的に不幸せにしてしまった80年代の「バブル経済」の根源は、「それ自体が価値を創造しない不動産」の相場上昇に起因していることを、忘れないでくださいね。(参考までに、「イトーヨーカドー」と「ダイエー」の命運を分けたのは、前者が不動産(=本社ビルでさえ)所有しなかったのに対して、後者は不動産(=店舗でさえ)を所有したという歴史的事実があります)

また、世界の大富豪のランキングを観てください。一時的には「不動産王」が台頭することはあっても、継続的に上位に居るのは、「企業を所有している者(=人の価値創造を所有する者)」です。

ちなみに、「不動産で儲けている者」は、多くの場合「不動産を所有することによる収益」に頼っていないという事実です。たとえば不動産証券に投資する者より、不動産の証券化を開発し、販売している者が儲かるようになっています。

調子に乗って、本当のことを書いてしまいますと・・・・(本当のことを書いてしまう人は、体制から嫌われるんですけどね)世界最大のタバコ企業の役員のほとんどは、タバコを吸いません。日本最大のケータイ事業会社の役員のほとんどは、ケータイを使わないらしい。酒屋は、酒を飲まない。飲んだら、飲まれて、商売になりません。つまり、ミイラ取りは、ミイラにならないことが大切なわけですね。

以上、非常に大切な「お金の価値」に関するエッセイです。

2004年9月21日 板倉雄一郎




 


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