板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  スタートミーアップ  > SMU 第31号「コンサルティングという仕事」

SMU 第31号「コンサルティングという仕事」

だいぶお休みしてしまいました。ごめんなさい。

このところ、このWEBのアクセスが増え、僕もこの連載を書くことの意味が高まっているように思うわけですが、感じること、思うこと、主張したいことがたくさんあって、ありすぎるものだから、なかなかタイプが運ばないというへんてこりんな状態というわけです。

政治、経済、政策、生活、仕事、などなどなどについて。

でも、僕は「評論家」ではなく「起業家」なわけだから、何らかの形で「実現」出来ることに関心があるわけなので、自分で実行可能な範囲について真剣に考えるようにしているというわけです。 今回は、久しぶりに、僕自身の仕事について書いてみようと思います。

コンサルティングという仕事。結論から書いてしまえば、一般的に「コンサルタント」などという職業は、根本的に「詐欺師」でなければできないと思う。なぜなら、コンサルという仕事は、クライアントの事業について「契約解除」という以外に責任を取らず、もちろん自分自身では「意見」や「提案」をするだけで、「実行」は伴わないから。

著名なコンサルタントの手がけたコンサルが「うまく行かない」なんて評判は良く聞く。確かに、彼らの作った「企画書」なり「事業計画書」を見るたびに「頭でっかちの独りよがり」だと思うことがしばしばある。

事業が失敗すること自体の全てがコンサルタントの責任だとは思わないが、このような評判が話題になるとどうなるか?コンサルタントは自然と「うまく行きそうな企業」の仕事を請けるようになる。

その結果、「改革」、「カイゼン」や「業績アップ」が必要な企業のコンサルティングをするコンサルタントはいなくなり、コンサルティング経費を負担できる余裕のある企業をコンサルタントはクライアントにする。

とまぁ、ここまでは一般論。で、僕は、作家、ベンチャーキャピタリスト、講演を中心としたタレント業、そしてコンサルタントなどがあって、まとめて「起業家」と言っているわけだが、つまりコンサルもやっている。

もちろん、僕のコンサルティングは、「提案と実行」がセットになっていることを心がけているけれど、最近(NTTコミュニケーションズのアドバイザーに就任し)、僕の周囲からこんな事を言われます。

「なんで、『ミスター・ベンチャー』が大企業の仕事してるんだよ!」と。

正直、この意見に「確かになぁ」と思っていました。確かに、僕はあらゆる表現手段で「大企業をぶっ潰せ!」、「経済の新陳代謝が民の経済的幸せと発展を約束する」的な事を訴えてきたわけだから、僕自身の行動はおかしい。

でも、やっていて実は楽しいし、違和感は感じない。。何でだろう?と、ふと考えた。そしてそのワケがわかった。

まず第一に、(「ベンチャー」という言葉の意味を解説するには多くを話さなければならないが、その一つに相対的な「劣勢」という意味があると僕は解釈している)NTTは確かに大企業だが、もはや、たとえばYahooBBの前に「劣勢」ではないかと最近いろいろ調べる中で感じているということ。

例えば、ADSLの契約者数ではほぼ並んでいるわけだが、孫正義という天才で極めて優秀な企業家による後発企業が、あっという間に大企業に並んだ事実を考えれば、既にNTTは劣勢だと判断できなくも無い。

もしかしたら、10年後、「電話(IP)局といったらYahoo!」だったりするかもしれないからだ。僕は、車で言えばMercedes BenzではなくBMWが好きだったり、企業としてはMicrosoftよりAppleComputerが好きだったりと、つまり「2位が世の中面白くする」と思っていることが、僕が起業家である所以だったりするので、ベンチャー経営スタイルをそのまま実行し優位に立とうとしている孫正義グループより、ベンチャーの「べ」の字も知らないNTTを応援するのが楽しいということがある。

僕のベンチャー精神が最も彼らに不足していると考えるというわけです。僕が根本的に望んでいるのは、「絶対的な支配を作らない」ということであって、それはつまり「競争」が最も大切な市場の原理だと思っているというわけです。だって、そうでしょ。

NTTとYahooが、そしてその他の企業が競争して初めて消費者に都合の良い商品が出来上がるわけだから。 そして第二の理由は、極めて簡単だ。「NTTから仕事の依頼が来たが、ソフトバンク・グループからはそれが無い」僕も、生身の人間だし、5年前に自己破産をしているから、今の稼ぎが平均以上だとはいえ、決して経済的に裕福な状態じゃない。

そして、仕事上将来の保証なんて何にも無い。だから、買ってくれるところに自分のタレントを売る。当然のことというわけ。そもそも、企業家、起業家のほとんどが尊敬する孫正義ではあるが、僕は彼に不義理をされた過去があるし。だから、社会の「尺」で図るのではなく、一人の人間として一人の人間を評価した結果という事になる。

ソフトバンク・グループの活動は、確かに面白い。持てる経営資源をフルに利用したベンチャー的経営が面白い。しかし、はっきり書いておくが、NTTであろうがソフトバンクであろうが、誰か一人が圧倒的な市場占有率を持ってしまったら、我々消費者の徳には絶対に成らない。

僕のわずかな能力を、そのために使いたい、そんな事を思うコンサルタントなんだよね。ホントは、自分でその勢力を作るつもりだったのだけれど、実績的には失敗だし、多分今後もさまざまな形で「失敗」をするだろうし、だから、僕の経験をコンサルという形で力にしたいのさ。

断っておくが、僕は経験主義。だから、やったことの無いことのコンサルなんて絶対にしない。大学教授が「経営論」なんて講義で話すわけだけど、実際に「経営」をしたことのある大学教授なんて、誰か知っているか?あいつらの話に、少なくとも僕は価値を見出せない。だって、童貞君がAVだけ見て、体位の説明することに興味ないだろ?やってみなけりゃわからないのだよ。すべては。 えっと米倉誠一郎氏は、別だよ。彼は少なくとも僕の話(=経験者)は良く聞いてくれるから。

2003年6月23日 板倉雄一郎





Previous Entry:
SMU 第30号「BMW 」
Next Entry:
SMU 第32号

エッセイカテゴリ

スタートミーアップインデックス