板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第11号「ネクタイ選び」

今週は珍しく、予定より早くエッセイです。

この時期、世間一般と同じように、僕の予定も夜が中心。よって、昼間のうちに出来ることとして、来年発売予定の単行本やこのエッセイを含めた連載の原稿書きに勤しんでいるわけでございます。

倒産からもう少しで5年の月日が経ちます。この間にあれやこれやとちょっかいを出した仕事が、定着してきたり、無くなったり・・・ 書く事は気が付けば年に一冊の単行本が中心だけど、このところまた週刊誌などの連載の話が舞い込んできたり、講演の仕事に関しては、ここしばらく多くの受注が無かったけれど、来年の初めから10回ほどの予定が決まっている。

企業コンサルはほぼ三ヶ月に一社程度増え、現在僕が何らかの席を持つ企業は13社。ベンチャーキャピタルは小規模だが、確実に成長している企業に投資できた。

一方、ラジオ番組は当の昔に終わってしまって、自分の日記連載「懲りないくん」は自分で止めた。TV出演はどういうわけか月に一度ぐらい舞い込んでくるが、それ以上売れるわけでも、それ以下になるわけでもない。

ということで、振り返ってみれば、この5年間は、自分に何が出来るのか?
とか、自分は何をやっていると楽しいのか?
とか、そもそも自分の能力は何をすれば効率よく稼げるのか?
とかを試していたように思う。

で、結局何をすることになるのか?

については、一つ一つの具体的仕事が決まっているだけで、それらを総合的に「どんな人」に成るとか成りたいとかはぜんぜん決まっていない。決めたくも無いのだけれど。つまり、常に自分の可能性について幅広いオプションを持っていたいということが決めたことって事でしょうか。


<第11号>ネクタイ選び

実は先週「河村隆一」のコンサートに行ってきました。僕の積極的な趣味ではない。

カミサンが彼のファンというわけでもない。女優としてのカミサンが、彼のコンサートの途中で上映されるビデオに出演したのがきっかけでスタッフ扱いのチケットが手に入ったというわけだ。

カミサン曰く「プロデューサーから、『旦那さんとご一緒にどうぞ』って言われたの」って事で、半ば強引に連れて行かれた。案の定、僕は会場で一人思いっきり浮いていた。

「きゃぁ~、リューイチィ~ッ!」なんて声がおよそ5,000人から発せられ、後半のバンドセッションでは、全員が立ち上がって「王子様」に向けて叫びながら腕を振り上げリズムを取る。

いやぁ~辛かった。 辛かったが、それでも得るところはあった。

なんでまた彼はこんなにも女性に人気があるんだろうか?なんてことも、少し答えを得られたように思う。それはつまり本人が「僕の職業は『王子様』」とでも言っているように、「成りきっている」からだろう。

それから、コンサートが行われた「東京国際フォーラム」の音響の良さだ。河村隆一本人もステージ上で認めていたが、聞いていても、きっと歌っていても、気持ちのいい音場を作り出すことが出来る構造なのだろう~なんて事はどうでもいいのだが、僕自身がさまざまな自己表現のチャンスを持っていながら、どれもこれも「そこそこ」である理由、つまり「成り切っていない」に気が付いたのは大きな収穫だった。

いやいや、僕が言いたいのは、そんなことじゃない。その辺の事は、現在の連載『社長失格の幸福論』(GMOシリコンバレーエクスプレス)に書いていることで、ここで言いたいのはこの「機会」に注目したいのである。

僕は、たとえばネクタイを買いに行くたびに、「いままでと違うのを買わなくちゃ買う意味が無い」などと考えながらネクタイを選ぶ。そして「うん、これなら無いよな」などと納得して買うわけだ。

確かに全く同じネクタイは部屋の衣装棚にあるわけではない。あるわけではないが、そこに並べてみると、新しいネクタイも、それまでのネクタイと同化してしまう。

つまり、冒険したつもりのネクタイは、ぜんぜん冒険になっていなかったというわけだ。何度買い物に行っても同じ事の繰り返しだ。

ネクタイに限らず食材でも、ゲームソフトでも何でも同じだ。ところが僕は「河村隆一」のコンサートに行った。そしてそこでしか得られないものではないが、何かを得て帰ってきた。その機会はカミサンに与えられたわけだ。

つまりネクタイ選びを一緒にしてくれる他人の存在が、その機会を作ったといえる。

僕とカミサンは、性も違うが趣味も違う。僕はもう一つの視点と価値観を手に入れたのかもしれない~なんて事を言いたかったわけだ。

でもね、とんでもなく趣味の違ったネクタイは止めてよ。河村隆一ならよいけれど、氷川きよしだったら「やだねったら、やだねぇ~」。

2002年12月22日 板倉雄一郎





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