板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第92号「ウィークエンダー」

今週は、体調不良が続き、エッセイのアップデートをかなりサボってしまいました。
でも、一時的要因ですからね。

昨日(金曜日)は、当事務所のスタッフに応募いただいた方々の面接会を、お台場のホテル日航東京で行いました。単なる事務作業をしていただくには、大変もったいない知識、経験をお持ちの方ばかりだったので、急遽「投資クラブ」的な展開になりましたよ。
今後は、持ち回りで投資対象を発掘し、メーリングリストで意見交換を実施して、それぞれの投資や仕事に役立てるという按配です。
さてさて、どんな展開になるのか、大変楽しみです。これまでの僕なら、明確で具体的な行動計画を考えるところですが、今回は、それぞれの参加者のバリューを上手に分配できるように、手放しで議論していく中で、自然発生的な方向を探ってみたいと思っております。

ところで最近、企業の増資が相次いでおります。
日本経済新聞の記事によると、今年上半期だけで、既に1兆6000億円ほどの資金が、市場から調達されたということです。さらに、昨日はイオンの1000億円を越え公募増資が発表されました。
この記事を読んで、僕のあたまには、再度「?」が浮かびます。
記事の内容は割愛しますが、公募増資の記事であるにもかかわらず、その内容に「株主価値の増大」に関わる内容がほとんど無いということです。売上高で世界小売業の10位以内を目指すとか、そのための手段として出店やM&Aを加速させるとか、集めた「資金の使い道」については、書かれているわけですが、その手段によって、どれほど株主価値が増大するのか・・・という点については、ほとんど記述がありません。増資によって増えた資金を、過去の投下資本利益率のまま運用するだけでは、一株辺りの価値に変動は全くないわけです。増資に応じる個人なり機関投資家なりは、その株式の価値増大を目論んでいるわけですから、単純に売り上げや利益が、増資で資金が増えた分だけ、増えるのでは、意味がないわけです。
イオンのケースではありませんが、有利子負債の返済に増資などによるキャッシュフローを使うとすれば、それは当該企業の資本コストの上昇になる(有利子負債より株式の方が、株式より、今後の金利上昇を考慮しても高い)わけですから、その分、投下資本利益率を上昇させなければ、株主価値は高まりません。
いずれにしても、つまりは「収益性」の向上がなければ、株主価値は変わらないわけですね。
くっつけたり、増やしたりという行為自体は、価値創造にはなりえません。この点重要です。

それでは、今週のバックナンバー紹介ですが・・・あまり書いてないので、紹介するほどでもありませんね。今週はキャッシュフローの極めて簡単な捉え方について書いた第89号辺りを是非読んでみてください。「会社四季報」の各情報の意味するところがわからないという個人投資家もたくさん居る現実に日々驚いておりますが、このエッセイに書かれている内容ぐらいは、ぜひとも理解していただきたいと思います。もちろん、僕のためにではなく、ご自身のために。

追加ですが、不思議なことがもう一つあります。
何度も書いていることですが、企業の価値変動が全くないのに、株価が高騰する「株式分割」についてです。確かに需給の関係から、株価が高騰する仕組みそのものには理解できます(理解できるだけであって、バブルであることには変わりありません)。ならば、ということで、株式分割と同等の効果のある、「単元株数の変更」は市場がどうみるのか・・・という点です。
具体的には、コンビニの「セブンイレブン」が、8月2日に、それまでの単元株数を1000株から100株に変更するという事実に基づいて、同社の株価変動を見てみると・・・大して変動していません。
不思議ですよね。というより、これが正常なわけです。
しつこいようですが、株式分割と単元株数の変更は、どちらも企業価値に変動が全くなく、また、どちらも当該企業の株式を所有する最低単位が下がるという全く同じ効果があるわけです。にもかかわらず、株価変動に与える影響は全然違うようです。
まあ、いいですけどね。
ただ、以上のようなマーケットの(特に個人投資家の)動きは、間違いなくバブルを生みますよ。
バブルははじけますからね。

2004年7月17日 板倉雄一郎





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