板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第38号「シングル・アゲイン」

皆様、大変ご無沙汰しております。
今週から、また「なんとなく週間」のエッセイの始まりです。
毎週レポートされる僕のWEBへのアクセス状況は、エッセイの休止とともに、当然ながら徐々に下がりはじめ、その数字を見るにつけ、大げさに言うと「世間から忘れ去られてゆく」感を久しぶりに感じていた。

久しぶりにとは、まさに1997年のハイパーネット倒産?「社長失格」の発売までのおよそ1年間と似た気分だったというわけだ。
倒産の頃は、失敗に至る過程が前向きのチャレンジであったからだろう、「いつかまた復帰してやるさ」という思いが静かに僕の心に流れていて、結果確かに「社長失格」とともに再デビューができた。
しかし、今回のWEB上での引きこもりにはいくつかのわけがあって、そのわけが後ろ向きのことばかりだったので、以前と同じというわけには行かない。
それでも、何の更新も加えない僕のWEBに、多くの人が来てくれるのを見ながら「ひと段落したら始めよう」と、少しだけ僕は他人を考えるようにもなっていた。

そのひとつの大きな理由であるが、僕はおよそ6ヶ月の別居の結果、シングルアゲインとなった。
彼女に男ができたわけでもなければ、僕に女性ができたわけでもなく、はたまた僕が「懲りないくん」活動を再開したいからでもなかった。
彼女の幸せや希望をすべて満足させるためには、僕はいくつかの大切なことを犠牲にしなければならなかった。その大切なものを犠牲にしないために、僕は彼女に対して「ああしろ」「こうしろ」と押し付けることもできたと思う。きっと彼女もそれに従ってくれたと思う。しかし、そんなことをしていたら、彼女の華はしおれて、いずれ枯れてしまうように思った。
そして、僕は今年のGWの頃、彼女に別れたいと伝え、10月28日、離婚が成立した。

何事につけても、僕は少なくとも一回は失敗するようだ。
起業志望の人が、よく考えることのひとつに「失敗しないために、十分に勉強して、用意周到に準備してからはじめる」というのがある。僕も結婚については、そんな感じだった。でも結果は失敗だった。
一人の失敗ならどうでもよいことだが、事業も結婚も相手が居る。僕は再度、自分の欲望のために誰かを巻き込むことから一歩遠ざかった。
わがまま放題やりたいだけなのか?
人を傷つけたくないのか?
人を幸せにする自信がないのか?
単に不器用なのか?
まあこの辺については、転んでもすぐに起き上がらず、じっくりその失敗と向き合う僕の得意技で解決して行こうと思う次第である。

ところで、話は変わって、エッセイ休刊中にやったことをいくつかご紹介しよう。
2003年夏、僕はふとしたきっかけで「田舎暮らし」を目標に掲げた。そして原資は千葉県船橋市の実家の住み替えということで、千葉県は内房に大きな別荘&自宅を探してみた。ところが優柔不断な僕の場合、なかなか決められない。
そんなあるとき、僕は顧問先から東京湾クルーズに誘われた。30フィートほどのよくある「四級免許船」によるクルーズだったが、「田舎暮らし」を模索していた僕に大きなヒントを与えてくれた。
「そうだ!、モーターヨットという別荘もありじゃないか!」と。
読んで字のごとく不動産から動産に心が大きく動いたってことだ。
で、いろいろお得意の妄想をして検証してみた。
するといろいろなメリットが頭に浮かぶ・・・
1、 お隣さん問題・・・これはつまり不動産を買ってしまった場合、お隣さんに変な人が居たら結構ショックであり、そもそも不動産価値というのはその周囲の環境に大きく左右されるというわけだが、船の場合、お隣さんやハーバーがいやになったらさっさと「家」ごと引っ越せる。
2、 地震問題・・・地震は必ず来る。それも大きな地震。不動産の場合、土地がなくなることはないにしても建物は壊れる可能性がある。そして電気や水などライフラインがしばらく途絶える。しかし船の場合、そもそもライフラインや地面からはスタンドアローンなわけだから、津波以外は問題ない。それに津波といっても東京湾の奥のさらに奥、そして水門まで付いていたら(おそらく)大丈夫だろう。
3、 仕事と環境・・・この夏、ボート屋に誘われて、50フィートの大型ヨーロピアンクルーザーで伊豆七島は式根島まで一泊旅行をした。海から眺める東京や島の景色に、僕は言葉を失った。講演やミーティングを上手に調整すれば、新島や式根島のハーバーで数日間の執筆旅行もできるはずだ。あの環境が「常」となると都会育ち(?)の僕は耐えられないかもしれないが、飽きたら東京に戻ればよいし、また欲しくなったら3時間の航行でたどり着ける。
以上、つまり僕と僕の仕事に非常にあってるってことだ。
いくら金があっても、週末ぐらいしかプライベートの時間をもてないのでは、デイクルーズが精一杯。するとベッドルームが3つもある50フィートクラスの船は、持っても見栄の範囲でしかない。
いくら時間があっても、船の保管と運用にはコストがかかる。それに居場所に無関係に稼げる人もめったに居ない。
が、僕は幸い、以上の条件を満足している。
これしかない!
なぁ?んて、そもそも船を買うお金は?
そんなもん、いったん「ホシィ~」となれば、何とかするさ! ハッハッハッァ?(ほんとか?)

ということで、やれることから準備を始めた。
まずは、それまで総重量5トン未満の船、かつ沿岸から5海里(だったかなぁ?)の航行しかできなかったいわゆる海の原付免許である4級小型船舶免許から、一気に限定なし1級の免許へ。
10月24日、無事新しい一級免許が届いた。
これで、長さ24メートルの船まで操船できるし、航行範囲は限定されない。
そして、多くの新艇や中古艇を見て回った。
現実感が増し、僕は上記の後ろ向きのプロジェクトから心を開放することができた。
やはり僕が生きていくためには、事業でも恋愛でも車でも船でもなんでもいいから「将来現実にかえることが可能な夢」を追いかけていないと生きていけないようだ。
僕の好物は、夢なんだな。

2003年11月3日 板倉雄一郎





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