板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  スタートミーアップ  > SMU 第171号「発想の原点」

SMU 第171号「発想の原点」

先週は、セミナー明けということもあり、投資理論ばかりになってしまいましたね。

特にSMU 第170号「アホな株主が企業をだめにする」における理論の一つの結果である「アホな株主が企業を駄目にする」は、分かりやすいのですが、その過程が難しいのですよね。

ある上場企業CEOから電話があって「難しいよ!」といわれてしまいました(笑)。

なので僕は、「なら、出張してオタクの役員にセミナーやろうか?」と申しましたところ、「駄目、俺より役員の方が頭よくなっちゃうから、俺が先に受けたいぐらいだよ」だって。(笑)

でも、個人投資家や中小経営者に混じって、セミナー受講ってわけにもいかないでしょう。

だって、「はい、わからない人は、手を上げてください」と僕、よくやるのですが、そこで元気良く、「はぁ~い」って、手を挙げちゃったりしたら、洒落になりませんからね。(笑)いやいや、それ以前に、セミナーに来ちゃまずいよね。なので、ひっそり個人レッスンですね。

あのぉ~このWEBサイト、何人かの上場企業の社長様が見ているわけなので、この場を借りて断っておきますが、「今更聞けないバリュエーションと企業価値創造・個人出張セミナー」は、密かにお受けしますが、189,000円では、やりませんよ。あしからず。

上場企業の社長様方、あまりおばかな経営していると、一株だけ買って、株主総会に出かけていって、「御社のWACCは何パーセントぐらいだと考えておりますか?」とか、「今の成長期に配当ってのは、つまり再投資対象がないってことですか?」とか、「現金をたくさん持って居て、かつ株価がフェアバリューより低いのに、なぜ自社株買いをしないのですか?」とか、公の場で聞いちゃいますからね。

いや、(合コンで3度ほど会った)M氏より、「一株だけ」ってのが、明らかにタチが悪い行動だから止めときます(笑)

しつこいようですが、2月19~20日に合宿セミナー実施します。
募集していますから、お早めに。

「今更聞けない」状態になる前に、早いうちにね。

概ね皆さん、セミナー後の感想は、「俺、今までよく投資(または会社経営)やってたものだな」となります。

それでは本題です。

 I don’t care what anything was designed to do.
 I care what it CAN DO.

日本語に意訳すると・・・

 何のために設計されたのかなんてことは、どうでもいい。
 それで何が出来るかに関心がある。

これ、僕が何かを発想するときの根本心理です。

たとえば、SMU第103号「資本コストと割引率」で紹介した投資手法などは、本来「株価変動履歴から判断される投資リスク(CAPM)」を入れるべきところに、僕の場合、「自分勝手割引率」を入れたりする発想が生まれるわけです。

この「資本コストと割引率」の実際の使い方について、少し補足しましょう。

このWEBでしつこく書いていることですが、僕はCAPMには、重大な問題が潜んでいて、全く信用していない・・・というより役に立たないと思っています。(セミナーでは、一応教えますよ)

本来、「株式資本コスト」っていうのは、投資家から見れば「期待収益率」です。ですから、僕は自分が当該企業に対して想定した「価値変動リスク」・・・(いいですか、価値変動であって、価格変動じゃないですからね。一文字しか違わないので間違えないでくださいね)を考慮して、自分なりに利回り(=リスク度合い)を「ベタっと」入力しちゃうわけです。

その結果得られた理論株価と時価の比較を行い、投資するかどうかを判断するわけです。

ですが、この手法を誰かに教えると、こんな質問が帰ってきてしまうのです・・・。

「バリュエーションのときの価値変動リスクって、どのような企業をどの程度にするのか感覚的につかめないのですが・・・」って。

そういう方が多いので、僕は以下のようにお伝えしています。

「将来業績予測=将来フリーキャッシュフローの予測」が正しいと仮定した場合に限定されますが、WACCの因数であるところの、「株式資本コスト」以外をすべて埋めます。

つまり、有利子負債コスト(既知)、限界税率(既知)、純有利子負債と時価総額(既知)の比率を入れるって事ですね。

ビジネススクール等では、この「株式資本コスト」にCAPMを用いて、

 Ks = rf + [ E ( rm )  –  rf  ] *β

とするわけですが、これは何度も書いているように使いません。

その代わり、この状態で・・・

時価総額(株価×発行済み株式数)と、理論株主価値(=企業価値-有利子負債)の値がイコールになるように「株式資本コスト」を変数としてゴールシークさせます。

ゴールシークの意味が分からない場合は、「株式資本コスト」の数値(まあ、通常10%弱)を細かくいじって、理論株主価値=時価総額になるような「株式資本コスト」の値を求めます。(これ、「手動ゴールシーク」って名前を付けちゃいました(笑))

以上の結果、得られた「株式資本コスト」は、概ね以下のような意味を持ちます。

「投資家が、現在の株価で当該企業に投資した場合に得られるであろう年平均投資利回り」ということになります。

実際にエクセルでゴールシークさせる場合は、「ゴールシーク」より「ソルバー」(マクロ関数)を使った方がいいです。どうもゴールシークは、「ドンピシャ」にならないと変数がすっ飛んでいってしますのです。

まあ、近い将来、もっと客観的で、もっと現実的な手法をご紹介できると思います。

話し戻します。

発想とは、「想像に制限を持たせない」ことから生まれるのです。

今僕は、新しい投資理論について、相手が数学者だろうが、経済学者だろうが、んなことには無関係に、newCAPMに挑戦しています。

僕の発想回路には、制限など全くありませんから。

(ただし、断っておきますが・・・僕が暖めている理論は、それが正しく、かつ新しいと証明されたとしても、「一つの企業を熟知する」以上の結果は得られません。現在のCAPMより、遥かにマシという程度です)


2005年1月23日 板倉雄一郎

さてこれから、セミナー卒業生との新年会です。たのしみぃ~。





エッセイカテゴリ

スタートミーアップインデックス