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SMU 第62号「天国と地獄(Tips)」

もう答えを知っている方も多いとは思いますが、今日は天国と地獄の分かれ道についてのお話(Tips)です。
道が二股に分かれています。
片方の道は天国につながり、もう一方の道は地獄へとつながっています。
もちろん、どちらがどちらにつながっているのか、あなたにはわかりません。
それぞれの道には、門番が一人ずつ立っており、門番の一人は「あらゆる質問に対し」正直に本当のことを答えます。もう一人の門番は「あらゆる質問に対して」嘘を言います。
あなたは、どちらか一方の門番に、たった一度だけの質問が許されています。
さて、あなたはどのような質問をすれば、天国がどちらかを知ることができるでしょうか?

これは、僕が10代後半、ゲームソフト会社をプログラマーとして起業したとき、ある書物にあった問題です。確かコンピュータのプログラミングに関する理論を解説する内容の本だったと記憶しています。
当時のコンピュータは、今からは考えられないほど、処理速度が遅く、かつメモリ容量が小さかったのです。具体的に言えば、CPUの内部演算は一度に8ビット(現在は個人用でも32ビット、ゲーム専用となると64ビットがあたりまえ、ちなみに、32ビットは8ビットの4倍ではなく256倍の処理が一度にできるというわけです。)、メモリは個人用のもので64キロバイト(現在はラップトップでも1ギガバイトですから、当時の1万倍以上!)が主流でした。
つまり当時は、演算処理能力も記憶容量にも限界があったわけで、ある処理をするためのプログラムは、可能な限り、容量を小さく(=プログラム行数を少なく)かつ速く(=合理的な論理)処理ができるように書く必要があったわけです。つまりコンピュータのリソースの効率の最大化が必要であり、そのためには、合理的なアルゴリズムが求められたというわけです。

前置きはこのぐらいにして、最初の質問の答えに進みましょう。
最初の質問の答えは、
どちらか片方の門番に、
「あちらの門番に『どちらが天国へつながる道ですか』と聞いたら、どちらと答えると思いますか?」と質問します。
門番が「あちらの門番なら、こちら(あちら)が天国だと答えるでしょう」という答えが返ってきます。
あなたは、どちらの門番に質問したにせよ、門番が答えた道とは別の道を選びます。あなたは無事に天国にたどり着けます。

解説はしてもいいですが、できれば紙に書いて試してみてください。
天国が右の場合で、右道に嘘つき門番、左道に正直門番の場合。
そして、天国が右の場合で、右道に正直門番、左道に嘘つき門番の場合。
以上を試せば理論的には十分な検証が可能ですが、それでも納得しない人は、
さらに、天国が左の場合で、右道に嘘つき門番、左道に正直門番の場合。
そして、天国が左の場合で、右道に正直門番、左道に嘘つき門番の場合。
を試してみればいいでしょう。
わかりましたか?

現在のコンピュータプログラムの環境は、当時に比べて格段に、いや飛躍的に良くなってはいますが、同時に求めることも複雑化、高度化しています。よって、どんなにコンピュータの技術が進歩しても「遅せぇ?なぁ?」と感じることがあるわけです。おそらくこれから先、何年経ってもコンピュータの技術が進歩する以上に、人間の要求は高まるわけですから、このイタチごっこは、現在のノイマン型コンピュータから新たな形に進化しない限り、永遠に続くわけです。
コンピュータに限らず、人は条件が限られていればいるほど、その知能を使って状況を好転させようと努力します。案外バブル崩壊による経済の停滞は、日本企業にとってその潜在的価値をなお高める結果になったのではないでしょうか。
「もう駄目だ。これ以上はできない。」ということを合理的に説明するのは「やれる方法」を探すより難しいということを忘れてはいけませんね。

2004年6月10日 板倉雄一郎
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