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SMU 第125号「個人投資家のおかしな投資判断」

SMU124号の続きで、「個人投資家のおかしな判断」やってみましょう!

おかしな判断その1 : 取得株の個別買値
一つの企業に注目していると、時間の経過とともに、その株を徐々に仕入れていくことになります。
すると、多くの場合、同じ企業の株式でも、その仕入れ値にバラツキが生じます。
そして、高値で仕入れた株式は、さっさと切り捨てたくなり、底値で仕入れた株式は、ずうっと持っていたくなります。そういう人たくさん見受けられます。
でもね、持っている株は、同じ企業の株式であれば、それぞれをいくらで仕入れていようが、「すべて同じ価値」ですからね。
どれを先に売ろうが、どれを取っておこうが、損益に変化はありません。
(信用口座の場合は、建て代金に対する金利がありますから、この限りではありません)

おかしな判断その2 : 分散投資
「一つの企業の投資比率が高いと不安だから」という理由は、わからないでもないですが、そもそも数多くの企業の情報を取得して分析するのは大変です。それより、投資先を絞って、その代わり絞った投資先について熟知する方が、効率が良いわけです。
でも、なんとなく分散した方が、安全! とか思うわけですよね。
しかし、その分散先が、同じ国の、同じマーケットで、同じような業種では、ほとんど意味がありませんよ。そんなに分散が好きなら、インデックスを買えばいいじゃないですか。
それでも不安なら、普通預金(を各行1000万円以下)すればいいじゃないですか。
というか、そもそも株式投資なんかしなければいいですよ。

おかしな判断その3 : 株価が「下がっているから売る、上がっているから買う」
いやいや、どんどんやってくださいね。
この方法では、論理的に、絶対に損しますから。

おかしな判断その4 : 「増収増益だから買い!」
あのですねぇ、確かに増収増益が悪いことはないですよ。
でもね、大きく3つの理由で、企業価値が上昇するとは、必ずしもいえません。
(1) そもそもその増収増益以上の期待がすでに株価に織り込まれている場合・・・この場合、増収増益でも、その発表とともに株価は下落します。
(2) 企業の資本調達コストを下回る投下資本利益率の範囲での増収増益・・・・この場合、いくら増収増益でも、企業価値は下落します。(この辺は、ちょっと難しいので、理屈は割愛します)
(3) 投資抑制による増益・・・投資を抑制すれば、企業の利益は増大します。つまり前期が絶頂というわけで、今後は、ジリ貧です。

おかしな判断その5 : チャートを見て「下げているから買い、上げているから売り」
これねぇ、最も大きな間違いですよね。
過去の株価の推移(つまりチャート)が、いくら下げていようが、企業価値がそれ以下であれば、買えないわけですし、いくら急速に上げていようが、企業価値がそれ以上であれば、買いなんですよ。
つまり、企業価値判断基準を持っていない人は、損しますよね。

(他にもたくさんありますが)というわけで、企業が価値を創造する基本的なメカニズムを知らない人は、
(1) 冷静さを維持できない
(2) 判断できない
というわけで、ほとんど間違いなく、損をするというわけです。

2004年10月22日 板倉雄一郎





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