板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第83号「学習効果」

株価が下落しています。つまり投資機会が増大しています。でも個別銘柄では、特に僕の目をつけた銘柄は、大きく下がりません。がっかりです。また今日も、獲物を探します。

それでは、今日のエッセイです。

僕は、大学や就職活動関係での講演も結構やります。

そこでよく聞かれるのが、「学生のうちに何をすればよいのか?」ということです。僕は、常にこう答えてるようにしています。「市場にポジションを取りなさい」と。

学生に限らず、あらゆる人の学習効果を最大化するのは、「リスク」の存在です。簡単に言えば「痛い思い」や「現実に儲かるうれしさ」に勝る刺激は、少なくとも学習効果において他にないということです。

「毎日、日本経済新聞を読んでいます。」とか、「経済学部で良い成績を上げています。」とか、そういった人たちに、ちょっとした「簡単な質問」をして、まともな回答が帰ってきたためしがありません。

僕の講演履歴を見ていただければわかりますが、いわゆる有名校、一流校でも、はたまた(日本の)有名校が主催するビジネススクールでも、同じです。

僕は、このような場所で講演する機会があるたびに、事前には「楽しみだ!」と思うのですが、事後では、「一体何を勉強しているのだろう?」と思うわけです。

よく言われることですが、「学習のための学習」ばかりが先行しているということでしょう。

たとえば経済学・・・これは、明らかに将来の経済を予測するための学問です。つまり、もっと直球で言ってしまえば、「儲けるための学問」なわけです。究極には、それ以外の目的など、(学者を食わせるためという部分以外には)無いわけです。

よって、「儲けたいから経済学を勉強します。」という人にとって有効であって、学習効果を得るためには、何らかの形で「市場にポジションを取らなければ意味が無い」となるわけです。

10万円でも良いですから、株式投資なり、自分の「痛い金」を使って、市場にポジションを取らなければ、何も学習できません。

よくありますよね、株式投資シミュレーション。あれ、役に立たないとは言いませんよ。でも、人間は常に愚かな生き物です。だから、痛い思いが現実に無ければ、「ああ、あれは、適当にやっただけだからしょうがないのよ、本当の金を使うときは、もっと真剣にやるから大丈夫」などと、自分に対してイイワケをするわけです。

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。」という言葉を僕は、何度も引用していますが、歴史に学べるほど賢い人など、それほど多くはありません。少なくとも僕はこの場合「愚者」です。そして、僕が見聞きしてきた多くの人(いや、100%)は、この分類で言うところの「愚者」です。大切なことは何より、自分を過信しないことです。そして、市場にポジションを取ることによって、初めて自分の「実態」が自分に見えてきます。

数字は、嘘をつきません。だから、講演で食べている人のほとんどは、数字の話をしません。本人のいい加減さがバレバレになってしまい、食いっぱぐれてしまうからですね。僕も倒産からの5年間、実際にそうしてきました。数字を語ることを避けてきたのです。でも、「これじゃ、僕の価値が無い」と思うようになり、最近のエッセイなどにも現れているように、数字を捕らえ、数字で話をすることにしたわけです。

人に自分の考えを話して、数字を示して、初めて本当の理解が得られますからね。文字や数字にできないことは(芸術の範囲以外)理解していないことと同義です。

「初歩的学習~実践(ポジションを取る)~結果の数字の分析~人に話す~学習」のサイクルなくして、人は学習などできません。 と、偉そうに書いた僕は、学習と実践が進めば進むほど、自分の無能さを確認するばかりです。

2004年7月6日 板倉雄一郎 

今日の数字占い 3302 , 4680




 


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