板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第161号「貧乏暇なし」

「スマトラ島沖地震」に関しては、これまで積極的に触れないようにしてきました。

なぜなら、一人の人間に起こった悲劇という尺で考えれば(=つまり、その人間の数の多い少ないに因らずに考えれば)、毎日、その被害者(または被災者)の身に起こった事を想像するだけで、世界の終わりを見たような気分になってしまう僕としては、それらひとつ一つ全てを書くことができないからです。

ですが、やはりこれほどショッキングな出来事は、他に無い・・・と思ったことがあるのです。

それは、(スマトラ島沖地震に関して)ユニセフが現在最も懸念していることが、「親を失った幼い子供たちの人身売買の恐れ」だということです。

何とも言い様がありませんよね。。

「恐ろしいことだ、人間とはいかに他人を思いやれない生き物だ」というのがショックの直接的な原因ですが、貧困にあえぐ人々にとって見れば、そんなこと「大したことではない」ということになるのかもしれない・・・と思うことが尚一層ショックなわけです。

しかし今、それが政治的な戦略であれ、何であれ、各国の支援は、少なくとも被災者にとってプラスに働くわけですから、幸いです。

日本もこれを機に(という表現は不謹慎かもしれませんが)、日本独特の世界への貢献を訴える絶好の機会ですから、是非生かして欲しいものです。

さて、今週末は、いよいよ「実践・企業価値評価シリーズ」合宿セミナーの開催となります。

これまでのセミナーは、僕自身がセミナーコンテンツを作成(というか考え)、主に「言葉」によって受講生の理解を得るという方法でしたが、当事務所の優秀なパートナーのおかげで、パワーポイントによるプレゼンテーション資料が完成し、効率が格段に向上しております。今週末、とても楽しみです。

企業価値評価(エンタープライズDCF法)にしても、不動産の投資利回り(収益還元法)にしても、債券利回りと価格にしても、金融商品の評価は結局、それらが生み出す将来キャッシュフローの現在価値の総和というたった一つの評価方法に集約されます。

当たり前のことですが、会計上の利益ではなく、キャッシュフロー(現金収支)が経済価値の根源です。

会計上の利益では、人件費や家賃の支払いは出来ません。支払いが出来るのは当たり前ですがキャッシュに限られるわけです。

本日のテレビ東京「オープニングベル」においても、「キャッシュフロー」についてのティップスがありましたが、そもそもキャッシュフローの意味がわからなくて、よくもまあ不動産投資信託や株式などに投資が出来るものだと関心(?)してしまいます。

一体、何を基準に投資利回りがプラスになり、それがどれほどなのかを個人投資家の皆さんは考えているんでしょうか?

ビールのわずかな値段の上下に神経質に反応するのに、投資利回りの測定方法については、その基礎すら知らない。

知らないのに(ディスカウントストアーに積極的に出かけて節約して生み出したキャッシュを)投資する・・・とにかく、不思議で仕方ありません。

まぁ、そういう方がいらっしゃるおかげで(笑)、分かっている人は(分かっていること以上に)儲けることが出来るわけですから、そんな「分かっていない人」の存在を否定も出来ませんし、よってセミナーの受講生を恒久的に増やそうとも思わないわけですが。

金融の考え方なんて、実は大して難しいものではないんですけどね。

ところで、年始ということもあり、「今年の日本経済は・・・」なるコンテンツ(TV番組、新聞記事など)を良く見かけます。

その内容の多くは、GDPの成長率なるものの予測を持ち出し、それがプラスなのかマイナスなのかといった、実はあまり意味の無い議論が行われています。

意味が無いというのは、

1、日本全体の成長率をいくら議論したところで、一人当たりの利益については、それを参考にすることはできない。

2、そもそも、少子高齢化&人口減少(は、既に取り返しの付かない事象です)を前提にしたら、いくら純輸出に期待できそうな日本経済の構造をもってしても、日本全体の成長率は、「絶対に」低下する。

という二点から考えただけでも、意味が無いわけです。

人間皆、金が欲しいわけです。もちろん僕も金が欲しいわけです。

ですから、日本全体を論じたり、金儲けの基礎が無いところで投資をしたりすることは不毛です。

今個人に出来る最も効率の良いことは、(特に日本人においては)フィナンシャル・リテラシーを磨くことなのです。その上で稼いだり、稼いだ金を増やしたりした後は、車を買うでも、家を買うでも、被災者への寄付でも、何でもいいじゃないですか。

「学習する時間を割けない」という方へ、
「貧乏暇なし」ではなく「暇が無いから貧乏」なのですからね。

2005年1月11日 板倉雄一郎





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