板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第135号「セミナーでの受講生の取り組み」

ちょっとエッセイのアップロードタイミングが、悪くなってしまいました。ごめんなさい。
正直告白(?)すると、ちと疲れ気味です。
日曜日(11月14日)は、セミナー。
月曜日(11月15日)も、セミナー。
本日(11月17日)は、これから名古屋に移動して、またセミナー。
ということで、自分で喜んでやっているのは良いのですが、ちと疲れ気味です。
一方的に、マニュアルに沿って教えるということならば、いくつか平行してセミナーを行っていても、たいした問題は無いのでしょうけれど、インタラクティブ重視で行っているセミナーの場合、グループごとに微妙に進捗状況が違っていたりします。また、後半の回は、具体的な個別企業を評価するわけですが、これも受講生のリクエストに沿って企業を選ぶわけなので、グループごとに違っていたりして、結構大変なわけです。
おかげで、僕個人が興味の無かった企業の評価をすることになり、結果オーライなのですが・・・。
(以上、ちょとだけ弱音をはいたわけです。お許しを)

ところで、本日の「学習とは」ということになりますが・・・・
SMUでも何度か触れたことですが、学習とは何か? について、それぞれの受講生の取り組み方に大きな違いがあるということを感じるわけです。
特に後半の、財務諸表から、会計上の企業の姿ではなく、企業の経済実態を把握するという段階に進むと、「財務諸表の再構築」というのが一つのテーマになります。
すると、ある数値を計算するときに、財務諸表のどの項目を使うのか? という点に神経が集中し、どの項目を加算し、どの項目を排除するのか? について、「なぜ、それを加えるのか?」=「求めようとしている数値は、本来何を分析するためのものなのか?」といった、本質的な理解を求めた上で、項目選択をする方と、単純に「どれとどれを足せばよい」と理解する方に、分かれるわけです。
当然、後者の方は、別の企業の評価を行うとき(企業ごとに微妙に財務諸表の項目に違いがありますから)混乱することになり、前者の方は(「なぜ」という原理に着目して理解する関係で)、財務諸表の項目に多少の違いがあっても、自力で分類することができるわけです。
言うまでも無く、前者の手法が「学習と理解」ということになり、後者の手法は「暗記」となり、前者でなければ実践には生かせないということになります。
この差は、実際に個別企業の評価を行う段になって、顕著に現れます。
当然、セミナーでは「その理由」についての講義に重点を置いていますが、人によって差があるのは否めないというわけです。

せっかくですから、一つ例を挙げましょう。
「投下資本利益率」を算出する時、分子にはNOPLAT(営業利益から、みなし税を引いたもの)を、分母には、「有利子負債+資本」を使うわけです。
このように文章で書いたものを暗記するのは、非常に簡単です。ですが、実際にBS、PLから算出しようとすると、「流動負債の中の「未払い」や「仕入債務」は、どうするんだ? 負債は負債だけど、有利子じゃないよな・・・なぜ有利子負債だけを扱うんだ?」などと、暗記の場合、躓くわけです。
しかし、「分母と分子の整合性を保つために、分子のNOPLATから、既に資本コストとして差し引かれている項目は、分母からも排除する。」と理解していれば、自然とどの項目を投下資産として扱うのかは自力で判断できるわけです。
一見コストがないように見える「未払い」や「仕入れ債務」は、資金提供者(「仕入れ債務」の場合、その資金提供者は、商品の納入業者ということになります」から見れば、商品価格にそのコストが上積みされていると考えるのが合理的です。商品価格にコストが上積みされているということは、営業利益の段階で既にその資本コストが利益から差し引かれていることになります。よって、分子からコストが差し引かれているので、分母からもその分の投下資産を差し引かなければ、分母と分子の整合性が取れず、数値として価値を失うというわけです。

概ね、大学などでの授業のスタイルは、卒業のための単位の修得が最も大きな目的になりがちで、結果、残念ながら後者の手法を取ることが多くなり、社会に出てもあまり役に立たないとなってしまうわけですね。

それでは、いきなり問題です。
キャッシュフロー計算書の、営業CFから投資CFを引いた値(フリーキャッシュフロー)と、財務CFの関係について答えてください。とくに、FCFと財務CFの「差」は、一体どこへ行った(または、どこから持ってきた)のでしょうか?

それにしても、受講生のビフォー・アフターの変化はすごいですよ。
受講グループごとにメーリングリストを作成するのですが、個別企業の評価に入ると、このメーリングでエクセルシートが飛び交い、意見交換が盛んになるのです。
ある受講生の間違いを、別の受講生が指摘したり、受講生皆が迷う点を、受講生同士で解決したりと。(なので、しばらくこちらからの解答をひかえていたりします)
もし、このセミナーを「パワーポイントと棒読みの講義」でやっていたら、こんなことにはならなかったでしょう。やはり、僕のセミナーの最大の特徴である「エクセルのシートに計算式を書き込む」という作業があって始めて、受講生の理解が深まるというわけです。我ながら満足です。

今日は、こんなところで。

2004年11月17日 板倉雄一郎





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