板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第131号「投下資本利益率」

ブッシュが勝ちましたね。
僕は米国民ではありませんから、米大統領選挙の有権者ではありません。よって、この結果にどうこう言う立場ではありません。ですが、世界はもっと危険になり、貧富の差がもっと激しくなることは、共和党の政策上、おそらく間違いないでしょう。ということを前提に考えれば、貧富の富側に居られる方策を考えるしかないわけです。なんせ事実上の米支配下にあって、且つ大統領選挙権の無い日本人ですからね。

ところで、この歳になると、周囲の不幸が目に付くようになります。
友人が亡くなったり、知人の親御さんが病気になったり、台風や地震の影響もその一つです。
僕の身近では、愛犬の雄太(ゴールデンレトリーバー雄9歳)が、3年ほど前から「肥満細胞腫」という皮膚にできる癌に侵されていて、年に一度程度、皮膚に腫瘍が確認され、そのたびに切除手術を受けています。今年もつい先週、米粒ほどのしこりを発見し、昨日手術をしてまいりました。
獣医の判断では、3度目の再発なので、今後は抗がん剤などによる癌の投薬抑制をする方がよいそうです。
本犬は、9歳とは思えないほど非常に元気で、食欲もあり、毛並みも良いのですが、残念です。僕は活力を失ってしまいそうになります。逆に言えば、それだけこの子達から活力や幸せを頂いているというわけです。

ところで本題「投下資本利益率(ROIC)」です。

これまで何度と無く、ROICについては、書いてきました。
結局、様々な企業のオペレーションについても、経済新聞記事についても、それらを突き詰めていくと、このROICにたどり着いてしまうから、結果として、文章の入り口でネタとしていることが何であっても、何度もROICについて書いてしまうわけです。

売上高は、もちろん大切な財務指標ではありますが、それは目標利益達成のための手段でしかないことは誰でもお分かりのことと思います。
同様に、利益も、目標とする投下資本利益率の手段でしかないわけです。
ですから、本日(11月5日金曜日)の日本経済新聞でも複数個所で取り上げられている売上高経常利益率だとかは、意味が無い数字だとは言いませんが、「で、ROICはどうなったの?」と結論を求めたくなるような指標というわけです。

銀行の基礎的なビジネスモデルについては、誰でもお分かりのとおり、資本調達(銀行の場合は大半が預金)におけるコスト(預金金利)と、事業(銀行の場合は融資がその事業の主体)の利回り(貸出金利)の「差(スプレッド)」が企業価値を生み出す根源です。これは誰でもわかります。銀行のビジネスモデルが比較的シンプルですからね。
金融機関以外の企業においても、この理屈はなんら変わりません。
企業が有利子負債や株式によって調達した資本のコストを上回る事業の利回りを達成できなければ、企業価値は減衰します。当たり前のことですが、企業のステークホルダーの誰もが、当該企業のROIC以上に稼ぐことはできないというわけです。

金融商品は、多種多様です。おそらく今後も一見複雑な商品がどんどん開発されることでしょう。
ですが、お金の理屈それ自体は、何も変わらないわけです。
儲けるためには、「自分のお金を、どこに、どれほどの期間、置いておくか」に収束し、その置くべき場所は、「リスクに対するROICの最も高いところ」というのが解となります。
あらゆる財務指標は、このROICのそれぞれ一つの因数に過ぎないわけです。
ですが、日本経済新聞紙面上で、投下資本利益率をメインに取り扱った記事は、あまりお目にかかれません。よって、記事そのものを、複雑にしてしまっているというわけです。
(ROICに近い指標として、ROEやROAがありますが、どちらもその手の教科書が指摘するとおり、分母と分子の整合性が取れていないので、正確さはありません・・・投資先を探すときのスクリーニングには利用しますけど。)

こと金融商品となると、その商品自体の仕組みの理解に集中しがちですが、基本的には同じ「お金の理屈」で解決できることを忘れてはいけませんよね。

今日は、こんなところで。

2004年11月5日 板倉雄一郎





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