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SMU 第45号「青色発光ダイオード訴訟・中村氏 おめでとう!」

おめでとう!久々の明るいニュースだ。

「200億円!」がすごいんじゃない。中村氏自信がメディアで発言するように「これで、技術者になりたがる子供が増える!」ということがすごいのだ。この国の戦後の成長の影には、産業界の特に技術者の貢献が欠かせなかった。

なのに、企業も、社会も、政治も、だれもそれを大切にしてこなかった。そこに、このところ僕があきらめてしまった、この国の愚かさが潜んでいる。

TVなどのこのニュースに関する、インタビューに答える「アンポンタン経営者」(たとえば、NTTドコモの立川~こいつあたりはいないほうが日本が良くなる)などは、「企業は困りますよねぇ~今頃言われても」と、間抜けで、バカで、不用意な発言をしている。あきれる。

企業が今まで、技術者や、発明者や、起業家をないがしろにしてきたツケが回ってきただけのことなのだ。そんなことも分からず、社長だとさ。

いや、そんなことがわからず、配慮できず、今の利益の源泉に思いをめぐらすことができないバカだから、今の制度と社会の中で社長なるものができているのかもしれない。こんなやつらが経済を動かしていたら、長期的にはダメになる。

発明や、著作や、アイデアや、個性をもっともっと楽しく生きるために、その権利をしっかり「社会に対して」主張できる社会でなければならないのだ。

と、ここまでは、喜びと批判なのだが、現実はどうやら僕の予想通りだ。

政府は、この2月にも今回のような事(個人の価値が認められ、企業のインチキ利益が減ること)が煩雑に起こらないように、法律(特許法35条)の改悪をするそうだ。あきれる。

これでもうこの国は、本当にだめになる。東大阪市の「まいど一号」をはじめとする産業界の根底に、少しずつ力が芽生えてきたのに、そういう動きを「政府広告」あたりで評価している振りをしながら、実態は全て政府がダメにする。

先週おぼろげに書いた文章の意味は、「潰れ行く日本」という意味である。今回の判決と法律の改悪は、僕をして、「本当にダメだなこの国は」と思わせるのに十分である。

国も大切だ。故郷も大切だ。家族も大切だし、自分も大切だ。僕は、個人主義だが組織を否定することとはまったく違う。しかし全ては「個」の集まりでしかない。どんな組織の力も「個」の力の集合に過ぎない。だから、「個」の価値が伸びる社会でなければ、その集団であるところの企業も、国家も価値を失っていく。力を失っていくのだ。

売上高が40万円、固定費が80万円、借金が800万円、で資産といえば「それ自体が価値を創造しない」モノと「潰れ行く他者の債権」ばかり、おまけに価値あるものを作り出そうとする社員に報いないばかりか、彼らががんばれない社則ばかりを考える経営者の経営する会社を、誰が本気で救おうと思うのだ。

これが立ち直るとすれば、それはおそらく奇跡だろう。今、取り組めばよいのか?潰れてから、取り組んだほうが良いのか?今の僕は、後者になりつつある。

2004年2月1日 板倉雄一郎





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