板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第129号「経営とは?」

昨日のセミナーも楽しかったのでした。
結局いつものように、顧問先ベンチャー企業のミーティング1時間+セミナー3時間+懇親会3時間と、しゃべりっぱなし・・・ではなく、今回のセミナーは当事務所スタッフの一人に講師をやっていただいたので、セミナー中は30分ぐらいでしたよ、僕のしゃべりは。
その話せなかった分(?)懇親会で思いっきり、理論物理の話しなどを展開してしまいました。
時間と重量の物質の速度による変換を行うローレンツ変換の式を持ち出して、観測者の移動速度に影響を受けない光の速度(2.997925*10^10 cm/sec)の話や、全宇宙の星の数やら、宇宙が広がっていることを観測する手法としてのドップラー効果(赤方偏移)の話しやら、「過去は観測の仕方によっていかようにも変化する」という量子力学の話しなど、結構ぶっ飛んで喜んで話してしまいました。
楽しかったです。

自動車工学、理論物理、企業価値評価・・・なんだか全然関係ないようですが、それぞれ「バランスと相対的な関係」がコアになる話しなので、僕の中では大きな差の無いことなのですよ。
どの話も、(話し方が上手だから(笑))、楽しくってたまりません!

それでは本題、「経営とは」ということになりますが・・・・
「経営とは、株主資本の管理」ということが結論です。
一般的に「経営とは?」と問われた経営者は、普段の「作業」を思い浮かべ、やれ「能力の高い社員を集めること」だとか、「リーダーシップ」だとか、「組織の管理」だとか、様々な作業面から思いついたことをその答えとすることが多いわけです。
ですが、以上の「作業」は手段であって、その目的は、「株主から預かった資本を、彼らの期待収益率以上の利回りを、事業よって達成する」ということに集約されるわけです。この意味では、ファンド運営も、事業会社も、金融機関も、すべて全く同じ結果を追っているわけです。
不動産投資でも、株式投資でも、債権への投資でも、その商品の性格と詳細に違いがあっても、すべて全く同じお金の理屈の上に成り立っているわけです。
ですから、投資家(企業の場合株主)の期待収益率(=株主資本コスト)(a)以上の事業利回り(投下資本利益率)(b)を実現するのが、経営者として最低限の義務であって、(b)―(a)をスプレッドといいますが、それがどれほどプラスになるかが、すなわち経営手腕ということになります。
経営とはこの一点に集約されるのです。
このスプレッドと投下資産の積をEVAといったりしますが、いきなりEVAといわれても、ちんぷんかんぷんになってしまう人が多いわけですが、以上のように説明のしかたを工夫すれば、誰でもわかる簡単なことなのです。
つまり、経営とは、それ自体は非常に簡単な、誰でも理解できることを目的にしているわけであって、その目的を達成するために、さまざまな事業上の工夫や努力が日々のオペレーションというわけです。
さてさて、問題は、そんな簡単なミッションを理解しつつ、日々の経営オペレーションに当たっている経営者がどれほどいるか?ってことですが、実はあまり居ません。つまり企業がその価値を創造するメカニズムを理論的に理解している経営者は、それほどいないわけです。それも上場企業の経営者の中にもそれほど多くはありません。
僕に言わせれば、以上の理屈を理解していない経営者が、一般投資家から資金を集めること自体、詐欺に相当するとさえ思っています。
「あなたの会社の資本コストは?」との問に、「?ですから、?%ぐらいです」と答えられる経営者は少ないのです。その会社に投資している投資家(=株主)がどれほどのリターンを期待して投資しているかについて、日本の上場企業の経営者の認識は、非常に低いのが現実です。
こんな会社に投資している人は、かわいそうですね。
いや、いつも書いていることですが、情報を精査しない投資家自身の自業自得です。
たとえば、当該企業の社長の発言や、有価証券報告書を墨から墨まで目を通せば、誰でもわかることなのですからね。
投資するなら、「経営とは?」という問に、数値で答えられる経営者の率いる企業にすべきです。
さて、あなたの投資先は、大丈夫でしょうか?

2004年10月28日 板倉雄一郎





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