板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  スタートミーアップ  > SMU 第167号「株式投資と競馬」

SMU 第167号「株式投資と競馬」

まずは、お知らせですが、「合宿セミナー」が終わったばっかりだというのに、次回開催予定についてです。
日程は、2005年2月19,20日(土日) 
19日土曜日10:00?本セミナー開始、20日19時全シリーズ終了予定です。(その後が大変なのですが(笑))
が、まだ案内ページ(「実践・企業価値評価シリーズ」のリンク)には、詳細を反映できていないので、申込はもうちょっとお待ちくださいね。
今回より、本セミナー開催前に、セミナー受講者で、かつ希望者にのみ「プチ・エクセル教室」(合宿第一日目午前9時より50分間)を実施する予定です。
というのも、「エクセル苦手」や「効率のよいシート作成方法を知らない」という方が、本セミナー中に、講義よりシートに集中してしまって、講義内容をしっかり聞けないという問題を解決したいからです。

(たとえば・・・数式の上にカーソルを持っていって「F4」キーを押すと、数式の「相対参照」と「絶対参照」を切り替えることができるの知ってますか? という極めて基本的かつ有用なティップスから、「CAGR(Compound Annual Growth Rate)年平均成長率」の求め方の数式まで、幅広く教えちゃいます!
結構驚いちゃうのは、べき乗の演算記号「^」を知らない人が多いのですよ。これ知らないとDCFできませんから。と、書いている僕も、つい最近まで、「F4」機能のことを知りませんでした。)

当日はおそらく、これまでの卒業生の方々も「エクセルサポート要因」として、お手伝いにいらっしゃると思いますので、きっと楽しいセミナーになると思います。(特にセミナー後(笑))
多くの方々との出会いを楽しみにしています!

それでは、本題になりますが、本日は、豆エッセイをいくつか・・・

「株式投資と競馬」
こんな疑問、感じたことありませんか?
「儲ける方法(経済価値の測定方法)を知っている人が、なぜ自分で密かに儲けずに、人に教えちゃうわけ?」って。
これ、「株式投資と競馬」の違いがわかると解決できる疑問なのです。
もし「いけてる馬」を見つける能力があったなら、誰にもその手法を教えない方が、その人のリターンは大きくなります。つまり、(予想通りになった場合に限りますが)オッズが高くなります。教えてしまったら、皆がその馬を買うものだから、オッズは下がります。当たり前ですよね。
(だから、競馬の場合の予想師は、この考えに限定すればインチキです)
それでは「いけてる企業」を見つける能力があったなら、「自分が投資した後に」可能な限りその企業が「いけてる企業」であることを吹聴(?)した方が、リターンが大きくなります。
(だから、アナリストは正しいと早合点してはいけません。彼らの報酬の源泉を考えれば、それによって彼らの発表にはバイアスがかかっていることをお分かりいただけますよね。それと掲示板の類も同様に、信頼できませんよね。)
これを一般化すると、皆が、評価方法を知っていれば、個別企業をいちいち教えなくとも、自然と『いけてる企業』に金が集まります。つまり株価が上昇しますよね。
ということが、「知っている人が、教えちゃう」ことの合理性です。
もちろん、こればかりが、教えてしまう理由ではないですよ。

「先見性・将来予測」
地球シミュレータという馬鹿でかくて、高速演算が可能なコンピュータシステムがあります。このシステムの目的は、商業的にはコンピュータ技術の競争に勝つということですが、表面的には、「地球の将来を予測する」というものです。
数学や物理学、天文学、流体力学、などなどなどなど、たくさんの既知の理論をソフトウェアとして組み込み、実時間より速い速度でシミュレーションを行えば、地球の将来が「ある程度」予測できるというわけです。
つまり、将来を予測するためは、その「メカニズム」を利用するとなるわけです。
占い師でもない限り、予測した結果が間違っていたときのイイワケの準備として、人は、既知の理論によって、将来を予測します。(ええと、機関投資家が、一部上場に投資するのも、この「イイワケ」の準備としての要素が無くはないです。)
あくまで、「神はサイコロを振らない」という前提の元に行われるシミュレーションですけどね。
「神はサイコロを振らない」=「全宇宙の素粒子の位置とベクトルを測定できれば、すべての将来は予測可能」という考え方ですよね? アルバートさん。
しかし、だからといって、「理屈なんて知っても仕方がない」と早合点しないでくださいね。何も知らないよりは、はるかにマシな将来予測が出来るようになるわけですから。
だって極端な話しですが、「地球は丸い」と知っている人の地球将来予測の方が、それを知らない人の予測よりマシでしょ。

「理論の限界」
この話を書く前に、まずは「理論」という言葉の定義をします。
物事を理解する上で「理論では不十分だ」という方がいます。この方の中では、「今わかっている限りの理論」ということで理論が定義されているわけです。よって、この方の考え方は間違っていません。
一方、「理論がすべてだ」という方の場合、理論による予測と実際の結果に差が生じた場合、まだ人間にわかっていない理論や情報があるからであって、理論という概念そのものは完璧だと「理論」を定義しているわけです。
この場合も、(不確定性原理を無視すれば)間違っていないとなります。
で、以下で使う「理論」という言葉は、より一般的な考え方に近い前者の定義だと思ってください。

一般的な講演やその懇親会などに御呼ばれして雑談していると、主に中小企業の経営者がこんなことを言います。
「経営は理屈(理論)じゃないよ」
読者の方の予測とは、大きく違うかもしれませんが、僕もそう思います。
しかし残念なことに、このようにおっしゃる経営者の方の振る舞いは、「難しい勉強をしなくて済むためのイイワケ」と感じます。
「経営は理屈じゃない」との発言に、僕が納得するのは、その人が一通りの経営理論や経済原理などを知った上で、かつ経営経験のある場合に限定されます。
理論は完全ではありませんけれど、不確定な未来の予測を可能な限り正確に予測しようとか、現在の経営効率をもっとアップさせようとする努力が無い経営者の経営する企業に投資した投資家は、「騙されている」のと一緒ですからね。そもそも会話をするとき困りますよ。単語が通用しなくて。
「フェラーリなんて、買うより見ていたほうがいいよ」と、フェラーリに乗ったことが無い人に言われてもねぇ・・・

「経常利益」
僕が知っている限り(ということは、英語表記と日本語表記だけですが)P/L上の利益を語るとき、この日本以外は、EBITDA(営業利益)またはNet Profit(当期利益=税引き後利益)がよく使われます。
経常利益という(英語訳はなんだっけ?(笑)のは、ほとんど使われません。
ところが、この国では、どういうわけか、「経常利益」というのがよく使われます。
「売上高経常利益率」だとかね。
なんでこの国だけが経常利益を重んじるのか不思議だったのですが(不思議でも、皆が使うから、僕の本でもたびたび使っていますが)、最近その理由がわかってきました。
一般的に、営業利益と経常利益の差は、「受け取り利息」?「支払利息」ですよね。(それ以外にもありますが、まあ細かいことは言わないでね)
で、利益を考えるとき、「有利子負債には金利という資本コストがあるが、株式にはコストが無い」と考えるアホ経営者が多いからではないかと思うのです。
つまり、「経常利益なら、資本コストが引かれているからそれを使う」ということで、「株式コスト」を無視した時代の名残なのだと思うのです。
違うかなぁ? きっとそうだと思うのですケレド・・・

ということで、本日の豆エッセイは、以上ですが、ここまで読み進めていただいた読者の方は、最初に書いたセミナーの案内忘れちゃってるかもしれないので、思い出してくださいね。よろしくです。

2005年1月18日 板倉雄一郎





エッセイカテゴリ

スタートミーアップインデックス