板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第177号「安く仕入れて(調達して)、高く売る(運用する)」

金儲けの方法なんて「安く仕入れて、高く売る」、もしくは「安く調達して、高く運用する」ただそれだけなのです。

誰でも知っていることです。

八百屋や魚屋は、誰に教わるわけでもなく、そんなことに気がついていて、実際のビジネスに使っています。

しかし、ちょいと頭がよくて、ファイナンスの勉強などをした人は、この本質を忘れてしまうのです。

不思議です。

たとえば、サラ金から資金を調達してビジネスをすることが、経済的に合理的な人も居ます。

どんな人だと思いますか?

簡単です。サラ金から資金を調達するときのコスト(30%弱)以上の、利回りを実現できるビジネスを持っているか、または探せる人です。

仮に、年率50%の利回りを期待できるビジネスを持っている人が居るとしましょう。(そんな人、めったに居ませんけれどね)

この人の場合、すべての投下資本をサラ金から、30%の「資本コスト」で調達しても、儲かるわけです。

なぜなら、そのスプレッドが、(50%-30%=)20%もあるからです。
このスプレッドがプラスの場合、投下資本を増やせば増やすほど儲かるわけです。

このとき、資本コストをもっと下げれば、もっと儲かりますよね。

極端な話、資本コストが、ほぼリスクフリーレート(日本では、2%程度。
ビジネススクールなどでは、長期国債のレートをもって、それとするらしいですが)と同等であれば、投下資本利益率が50%も無くても、儲かるわけです。

投下資本利益率が、わずか3%の、馬鹿馬鹿しいビジネスに投資しても、ちゃんと(3%-2%=1%のスプレッド分)儲かるわけです。

以上は、なぁ~んにも、難しくないですよね。

話は、ウォーレン・バフェット氏と彼の会社バークシャーハザウェイに移ります。

ご存知のとおり、彼の投資パフォーマンスは、長期で考えれば、誰がなんと言おうと、圧倒的に優れています。

これをもって、様々な人が、彼の「投資手法」について研究し、様々な本が出版され、挙句の果てにはウォール街のアホ連中が、「バークシャーと同じポートフォリオのファンド」なるものまで、開発しようとしたわけです。
(このアホのおかげで、バークシャーは、B株を発行するハメになったことはご存知ですよね)

多くの、一般的に「賢い」とされている、実はアホ連中は・・・。

「彼の成功の運用側だけを見ているわけです」

よって、「バフェットの銘柄選定術」なる、馬鹿馬鹿しい本が出版されたり、先ほどの「ポートフォリオ真似っこファンド」なるものが、検討されたりするわけです。

それを、一生懸命読んで、「僕もがんばるぞー」なんて人が、たっくさん居ます。
ご苦労様です(笑)

彼と彼の会社の成功の本質は、以上のように、「運用側」に気を取られたら、把握することが出来ません。

注目すべきは、「調達側」なのですよ。

つまり・・・。

「資本コストの低さ=調達の安さ」が、彼と彼の会社の成功の本質です。

彼の洞察力は、そうカンタンに真似できるものではありません。

「バフェットの銘柄選定術」なる本を読んでも、それを理解できたとしても、結局は将来の不確定な要素に対する洞察力という本能が必要になります。本の内容は非常に簡単ですが、それをこれから先の将来に適切に応用できる人など、ほとんど居ません。

もちろん、僕もその一人だと、充分理解しています。

しかし、仮に「資本コスト」を安く出来れば、彼ほどの洞察力が無くとも、しっかり儲けることが出来るわけです。

注目すべきは、「運用側」ではなく、『調達側』。
つまり、彼の会社「資本コストの低さ」に、彼の成功のマジックが潜んでいるのです。

ならば、資本コストを安くする方法は・・・・ごめんなさい、それがいつかちょいと触れた『プチ論文』の要素ですから、ここで書くことは出来ません。ごめんなさい。

2005年1月29日(分) 板倉雄一郎 

PS:
あるセミナー受講予定者からの、疑問質問に答えているうちに、以上のような文章を書いてしまいました(笑)。

で、昨日のエッセイで書いたとおりの、『お休みモード』は、嘘になっちゃいましたとさ。





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