板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第97号「基本」

確かに「夏」は、それだけで幸せだけど、ちと暑すぎますね。
昨年まで住んでいた都心に比べれば、今の千葉県船橋市は、ずいぶんと涼しいけれど、それでも暑いです。
あと20年もしたら、東京都心は人が暮らせる場所じゃなくなるように思うのは、僕だけでしょうか?
ラスベガスのように、屋外は人が10分も居れないようなところになるのではないかなぁ。
そんなところに、借金までして住宅を購入する人の気が知れません。

昨日の大阪での講演は、体調不良+腹痛で大変でした。プロとして失格ですね。
それにしても、監査法人の会計士の方々と世間話(企業話)をするのは、大変興味深いです。
「大手監査法人に契約を打ち切られた企業が、どこの監査法人に逃げ込むのか?」の具体的な話は、大変参考になりましたよ。企業評価をする上で、「***監査法人」による監査を受けている企業は要注意となるわけですね。
ごめんなさいここでは固有名詞は書きませんが・・・まあ知っていますよね。
4(監査法人)社ほどあります。

さて本題の「基本」ということについてです。

SMU95号「失望」に対して、何人かの読者から「止めるな!」メールやコメントを頂きました。
SMUの中心からは外しますが、例によって気まぐれエッセイなので、気が向いたときにボチボチ書いてみます。ちょっと、ふて腐れただけですから。
95号に対して、
「自分にとって企業評価シリーズはルーキーの頃に学んだことのおさらいであり、忘れかけていた基本的な事項を再認識させていただける貴重なブログです。」
というコメントを頂きました。
これ、とても大切なことですね。
つまり、基礎が危ういところで、どんなに高度で複雑なことを学んでいっても、なんの役にも立たないというわけです。当たり前のことですが。
で、このSMUの企業価値評価に関係する情報を一まとめにしている書籍ってあるのかなぁ?と思った次第です。
僕自身は、20代の頃から経済経営に関する本が大好きで、「日本経済新聞の読み方」にはじまり、たくさんの本を読み、さらにベンチャー企業経営(=つまり、机上の学習だけでは成功しないことの証明をしてしまったわけですが)、株式投資、ベンチャーキャピタル経営(=つまり投資信託)と実践を交えながら得た知識と経験をベースに、基礎部分のお話しを書いているわけです。
もしかしたら、企業のファンダメンタルズに関する基礎知識なる本ってあまりないのでしょうね。もしくはあったとしても、あまり注目されていないのでしょうね。もしくは、僕の「企業価値評価シリーズ」で参考図書としている「企業価値評価」(マッキンゼー&カンパニー)のように、初心者にはちょっと無理な内容に、いきなり飛んでしまっているんでしょうね。
この辺、マーケットがあるようなら、「おりおば」の次にでも書いてみたいと思います。(商業文章なら、売れればいいですからね)

と、ここまで書いて、ふと思いました。
「僕は、なぜ、黙って一人で儲ければいいものを、わざわざ人に教えるのだろうか?」と。
僕は政治家でもなければ、先生でもなく、単にビジネスマンです。だから、知っていることをひけらかしても意味は無いし、無知な人が安値(高値)で売ってくれる(買ってくれる)株式があるから、儲かるわけですからね。
つまり大変広義では「お金は、愚者から、賢者の手に渡っていく」だけの話です。
以前、株式投資と競馬の違いについて書いたことがあります。株式投資は儲けられそうな企業があった場合(自分が仕込んだ後に)多くの人に、その企業のことを伝えた方が、利回りはよくなり、一方、競馬の場合、勝てそうな馬が居れば、誰にも言わず、一人でこっそり馬券を買ったほうが(オッズが下がらないので)利回りがよいわけです。
確かに直接の売買行動については、これが正しいのですが、利益確定という段階になると、株式投資の場合も、自分ひとりで誰にも言わず「さよなら」したほうが、利回りがよくなりますよね。
で、広義では、先ほど書いたとおりになるわけです。
以上は、短期のゼロサムゲームの話でよく用いられますが、実はあらゆることがこれと同じです。
仮に長期のバリュー投資であっても(直接的には確かに世の中の価値創造に加わっていることになりますが)、結局は、その企業なり事業の利回りが良いと判断する能力によって、その能力がない人のお金が回りまわって集まってくるだけの話です。ですから、賢くない人がたくさん居た方が、賢い人の儲けは多くなるわけです。
ここで言う「賢さ」は、つまるところ、「物事の価値評価を自分の判断でできる能力」と、その判断を下した「自分を信じ、行動に移す事」に要約できます。
つまり、僕は「ずる賢く」こう考えているわけです・・・
「仮に、知識を与えたとしても、それを信じ、行動に移さなければ何も変わらない」と。
学習できても、行動に移せない人が多いだろうから、僕の収益のマイナスにはならないだろうというわけです。極めて正直に書いちゃいましたけど、ホントの話です。

「女性の口説き方」みたいな本を出版する人が、「こんなホントの事書いてしまって、競争が増えることになりはしまいか?」とは考えていないでしょう。本当のことをいくら書いたところで、それを学習する人がいくら増えたところで、「じゃあ、前を歩くあの女性に声をかけてみるか・・・いやできない」となる人がほとんどだからです。
行動に移せる人は自然に効果的に学習することもできます。よって、結局のところ、あらゆる勝敗は「やるか、やらないか」に集約できるというわけです。当たり前ですけどね。
話は、いきなり最初に戻りますが、いずれにしても、基礎がないところで、何をやっても(短期ではラッキーもあるでしょうけれど)駄目なんですよ。
昨日の講演の内容も、「IPOを目指すなら、企業価値のルールを知れ」ということでした。
だってそうでしょう。そういう企業がどんどん増えてくれれば、投資機会も増大しますからね。

2004年7月22日 板倉雄一郎




 


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