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SMU 第178号「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力」

ちょっと前になりますが、オンライン証券会社の増収増益が、次々に発表されていましたよね。
これって、どういうことを意味するかお分かりですか?
「個人投資家(正しくは投機家)が増えた」というのは、当たり前のコンコンチキですが、そんな表面ではなく、もっと本質的な、日本経済に与える「悪影響」を書いてみたいと思います。

オンライン証券会社の収益は、当たり前ですが、個人投機家の短期投機における取引手数料です。
ご存知のように、「一取引辺りの手数料」については、松井証券によるオンライントレードの発祥以降、劇的に下がりましたよね。これ「自体」は非常に良いことです。
しかし、おかげで、日に数十回というトレードを、個人でも、自宅にいながら、少し前の投資銀行のトレーダーのように実現できるようになりました。
これ、結論から言うと、日本企業の株価を押し下げる要因になるのです。
なぜか・・・・

まず、何度も書いていることですが、企業にとっての資本コストは、投資家にとっての期待収益率です。
(ここがわからない人は、先を読んでも分かりませんよ。このエッセイのバックナンバーで復習してくださいね。)
これまた何度も書いていることですが、企業が価値創造を実現できる根源的な理屈は、すなわち・・・
Economic Profit = (ROIC-WACC=Spread)*IC
当該企業の経済的付加価値=
[投下資本利益率?加重平均資本コスト=スプレッド]*投下資本
です。
よって、企業が経済的付加価値(=理論的には、当該企業の時価総額の年間上昇分)を、高めるためには、ROICを向上させるか、WACCを低下させるか、または、スプレッドがプラスである場合に限り、ICを増やすということになります。

さてここで、「一取引辺りの手数料」がオンライン証券会社のおかげで、劇的に低下したのは確かですが、それ以上に「取引回数」が上昇したからこそ、オンライン証券会社の増収増益となったわけですよね。
つまり、これは、(一取引あたりの手数料が下がったインパクト以上に、取引回数が増加するとなれば)市場全体として「取引手数料総額が上昇する」ということです。
この負担は、一体誰がするかといえば、当たり前ですが、主に個人投機家というわけです。

さて、個人投機家は、そのコストをどうするか?
これは簡単です、キャピタルゲイン(株式値上がり益)を上昇させることによって回収しようというわけです。よって、おしっこを我慢してまで、小さな利ざやを積み上げようとして、大切な人生の時間を「浪費」するアホが増えるわけです。

つまり・・・・・
「個人投機家の期待収益率は、取引手数料の増大分と同等程度上昇する」
というわけです。

これは企業にとっては、すなわち・・・
「資本コストの増大(WACCの増大)」を意味します。
なぜなら、しつこいようですが、「企業の資本コスト=投資家の期待収益率」であるからです。
結果、企業のROIC-WACCスプレッドは小さくなり、ROIC一定、IC一定の場合、企業の経済的付加価値は低下します。
ちなみに、資本コストが上昇したからと言って、ROICが増加するわけでもありませんし、ICはむしろ増やしにくくなるわけですから、株価は(企業が生み出すキャッシュフローに対して相対的に)自ずと下がります。
以上をもっての結論は、
「(一取引あたりの手数料が下がったインパクト以上に、取引回数が増加するとなれば)
オンライン証券会社の増収は、株価の下げ圧力」というわけです。

おっと、「税効果」もありますよ。
利益確定しなければ、キャピタルゲインがどんなにたくさん得られても、無税ですよ。
短期投機家の皆さん、せっせと税金払ってくださいね。「今」は10%ですけどね・・・・

あら、僕、何か理論的に、間違っていますか?
反論するなら、いつも書いていることですが、「論理的」に反論してくださいね。

「価値は、時間が経たなければ、創造されないのです。」

以上本題でした(今後は、本題を最初に持ってきますね)

話し変わります・・・書きたいことが、次から次へと沸いてくるので、以下、ティップスのオンパレードです。

「バブル崩壊だけが、2002年の日経平均7000円台の理由?」
これは、本題の続きとしてもよいのですが、バブル崩壊だけが原因で、日経平均が4万円?7000円台まで、下がったのでしょうか?
もっと他の本質的な原因があると僕は思っています。
僕は、「株式持ち合い解消」が、株価を下げたと思っています。
つまり、「投資分に多くを期待しない株式持合い」=「投資家の期待収益率が低い」=「企業の資本コストが低い」が、日本経済を急成長させ、株価を押し上げてきた。
しかし、持ち合い解消によって、株式の売り手が多くなったおかげで、株価は下がった。
その分を、個人投機家が吸収したおかげで、日経平均は8000円前後から、1万数千円まで戻した。
しかし、先の本題で説明しているように、あらゆる企業の資本コストが(個人投機家のおかげで)上昇した結果、日経平均は、企業業績が良いにも関わらず、それ以上にはならない。
あら、これも、僕、何か、間違って、いますかねぇ?(笑)

話し変わります・・・・

「最近最も感動したDVD」
僕の頭がいかれた!っと思わないでくださいね。
最近最も感動したのは、自分自身のインタビューを収録したDVD
http://www.visionet.jp/goods/itakura/itakura.htm
です(笑)。
収録して、その後忘れていたのですが、このWEBのアクセス履歴を見たところ、上記からのアクセスが結構上位に来ていたのでした。
版元から送っていただいたDVDを90分間見る間に、僕は正直こう思いました。
「こいつ、すげぇ?なぁ?」
やっぱ、僕は、頭がいかれて来たようです(笑)
ちなみに、この版元の社長は、前回の当事務所主催「企業価値評価シリーズ」合宿セミナーの卒業生です。
(僕に入ってくる印税なんて、ホントたかが知れていますから、金稼ぎのための文章ではありません。)
でもぉ?、収録の前の夜、酒飲み過ぎたせいか、かなりお顔がむくんでおります(笑)

「アクセス履歴」
当WEBのアクセス履歴ですが、最近どういうわけか投資銀行からのアクセスが増えてきました。
今更僕のエッセイから得るところなんて、あるのでしょうか?????

「官僚と政治家」
バリュエーション(企業価値評価)のことを話すと、こんなことをおっしゃる経営者が多いです。
「ああ、そういうの、うちの経営企画に任せているから、僕は結構」
ははぁ?、まるでどこかの国の、官僚と政治家の関係に良く似ていますよね(笑)
いつか、慌てることになりますよ。こわぁ?っ。
企業価値創造のメカニズムを知らなくて、一体何が経営なのでしょうかねぇ?

「P&Gによるジレット買収」
確かにバフェット氏は賢いです。
でも、賢いだけじゃなくて、ついてますよね(笑)。
だって、18%プレミアムですよ。
株式交換による買収ということですから、バフェット氏は(バークシャーハサウェイ社を通して間接的に)P&Gの大株主になったというわけですね。
「僕にも、もっと、ツキがほすぃ?!」と思っているうちは、投資で成功できません。
だって、バフェットは、
「だって、そういうことになるようなエクセレントカンパニーに投資しているんだから、当たり前です。」なんて思っているだろうし・・・

今日は、こんなところで。
次号(おそらく明日)は、「バランスシートを小さくする経営手法」について書いてみたいと思います。
その必要性と、理論的な価値について。

そろそろこのエッセイ「スタートミーアップ(SMU)」は、最終回に近づいております。
なぜなら、僕は、そろそろ「スタートミーアップ」を終えるかもしれないからです。

2005年1月31日(分) 板倉雄一郎 

いやぁ?エッセイ一回休みって、金は貯まらないのに、ストレス溜まるよ(笑)
あら、ホントは、1月31日分を休みって書いたのにぃ?ごめんなちゃい。
1月30日分(日曜日分)のお休みが、僕のミスによる一回休み、とさせてくださいな。





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