板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第140号「期待値」

「実践・企業価値評価シリーズ」セミナーの受講日程希望を毎日何通か頂いております。
ありがとうございます。
皆さん、それぞれご都合があり、調整が非常に難しいです。
でも、可能な限りご希望にお答えできるように、調整いたしますです。はい。
(もうしばらく、希望日程を集めさせていただきますね)
以上、よろしくお願いいたします。

ところで、本題、「期待値」についてです。

「年末ジャンボ宝くじ」のTVCMが散々流されています。
「ウリ」は、「当選本数の増大」らしいです。
確かに当選本数は多く設定(予定)されているのでしょう。
しかし、その分母であるところの、ユニット数は伝えられていません。
極めて当たり前のことですが、当選本数より当選確率が大切ですよね。
みずほ銀行のWEBで調べたところ、1ユニットあたりの(少なくとも)1等(2億円)の本数は、これまでと全く変わらず1つだけです。
当然ながら、1ユニットの枚数(確か、1000万枚)も変化がありません。
よって、(少なくとも)1等の当選確率は、これまでとなんら変わりません。
計算するのが面倒なので(ほんと、めんどくさがり屋です僕は、エクセルでちょいとやるだけなのにね)、詳細は省きますが、おそらく期待値は、これまでとなぁ?んに変わらないのでしょう。
ということは、主催者から見れば「全収益に占める払い戻しの割合」に変化が無いわけです。
(すいません計算していないので、払い戻し比率が変わっているかもしれません。)
これまた当たり前ですが、払い戻しの割合を増やしてしまったら、主催者は儲からなくなってしまいますからね。
しかしTVCFでは、当選本数が多いこと「だけ」を散々宣伝しております。
分子ばかり宣伝して、分母の増加については、全く触れないわけです。
(それに言及したら、消費者をだませませんけどね(笑))
「おりおば」的に言えば、主催者は「おりこうさん」で、消費者は「おばかさん」というわけです。

注釈:
「実はこれ(僕もマーケティングに関する商品を昔、ハイパーネットという会社で提供していましたので、よくわかるのですが)、たとえば懸賞広告を実施した場合の消費者の反応は、提供企業の当選商品予算を一定にしても(期待値が同じでも)、高い確率で安いものを当選商品とするより、低い確率で高価なものを当選商品にした場合のほうが、応募件数は増えるという傾向があります。」
:注釈終わり

きっと、今回も売れるのでしょう。売れることを見込んでいるから、当選本数を具体的に告知できるわけですからね。
う?ん、みんなで不買運動して、発売ユニットを彼らの予想より大幅に下げて、後に「当選本数は結果的に何本だったんだ?」と質問して、(当選本数は、告知より少なくなりますから)「虚偽広告」で訴えるという乱暴な提案をしたいわけではありません。
(んなことしても、何の見返りも無いですからね)
期待値では、人の心を動かせないということを言いたいわけです。
つまり、多くの人の心理は、どれほどそれが発生する確率が低くても、それが起こったときの損益が大きければ大きいほど、期待値に変化が無くても興味を示すということです。
論理的には、損益が大きい分、確率が低いわけですから、その損益は小さく見えてしかるべきなのですがね。
これは、宝くじだけの話しではないところが面白くて・・・
たとえば、保険。
実は保険ビジネスというのは、理論上の期待値と人の心理のギャップがあって初めて利益を生むビジネスです。当たり前ですが、金融機関自らが損失をこうむるような商品をリリースするわけ無いですからね。
ほら、居るじゃないですか、
たいした固定資産でもないのに、多額の火災保険に入っていたりとか、
夫婦共働きなのに(どちらかの死亡時の減収のリスクヘッジとなっているのに)互いに生命保険に入っているとか、
ぶつけて全損になったら困るほどの経済的に無理のある高級車に乗っているものだから、車両保険に多額の保険料を支払っているとか、
以上は、保険会社のいいカモで、「おばかさん」となります。
(もし、調査したら、保険をたくさん契約している人と、宝くじを大量に買う人の相関関係が、極めて密接だったりするかも?)

ですが、当然、「大当たり!」となる人は、必ず存在します。
この部分を、いくら確率が小さいからと言って、全く無視するわけにはいきません。
人生何があるかわかりません。
ノーベル経済学賞を受賞するほどの「おりこうさん」の場合、ある事象の確率の小ささを無視した結果、膨大な損失を出してしまった例がありますよね。
世の中面白いですよね。

ですから僕も、ネットで「年末ジャンボ宝くじ」を買っちゃいましたよ!
3000円分(笑)
大当たりしたって、ここで発表なんて絶対にしませんからねっ!(笑)

2004年11月24日 板倉雄一郎





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