板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第175号「ゴールドラッシュ」

昨日のエッセイ(SMU第174号「孫正義は狼中年」)について、反響が大きいです。

「あんなに書いちゃって、大丈夫ですか?」という反響が多いのですけれど、大丈夫もクソもありません。

僕は、自分が感じたことをただ書いているだけですからね。

僕は、北朝鮮の住民ではありませんし、孫正義は金正日でもありませんからね。

僕の指摘が正しいのか、それとも孫正義の経営が(僕なんぞの指摘の枠に入らないほど)優れているのか・・・これは将来分かるはずです。

その時、もし彼の経営が優れているということになれば、この場で「孫さん、さすがです!僕が間違っていました。」と正直に僕は書くつもりです。

もう一度この場で、昨日のエッセイのコアについて、(ソフトバンクに限らず)一般化して整理すると・・・

1、当該企業が生み出す、キャッシュ・フローの全て(又はそれ以上)を再投資(し続ける)モデルでは、永延にフリーキャッシュ・フローは生み出されませんから、少なくとも理論的には企業価値はゼロです。

2、それでもバークシャー・ハサウェイのように「内在価値の増大」という可能性について言うならば「資本コストが相当に低い」か、又は「投資先のキャッシュ・フローがプラス」であるべきです。(そのうちそうなる計画なのでしょうけれど。)

3、一方、「通信インフラ」という分野は、恐らくいつまで経っても新しい技術が開発され、長期に渡り、常に大きな「投資C/F」を必要とするでしょう。
例えば、ケータイ事業を始めれば、その通信速度をどんどん向上させるための設備投資や開発資金が必要になるというわけです。そしてそれは、ある時点でピタリと止まるということは無いでしょう。(その分のコストを考慮した上での、価格破壊なら問題ありませんけどね)

4、シェアを獲り、その上で高付加価値商品を提供し、利益に繋げる・・・このモデルが成功する条件は、シェアに排他性(たとえばWindows)がある場合に限ります。コモディティ商品の場合、一時的にシェアを獲得できても、それはアッサリとひっくり返されてしまいます。航空業界を見れば明らかです。

5、トヨタ自動車は、その下受け企業無しでは、現在の価値創造を継続できないどころか存在することさえ困難です。よって、トヨタは下請けの教育はしますが、下請けを「敵」とはみなしていません。

この1~5を、まとめて同時に、且つ相互作用を考慮しながら、考えてみてください。昨日のストーリーがよくお分かりいただけると思います。

そもそも、ソフトバンクは、一体何がしたいのでしょうか?

僕には、それがさっぱり分からないのです。(笑)

インフラの王者になりたければ、KDDIなどを「えいやぁ~」と買収して、その後に、バッサバッサやったほうが早いのでは?(買えるかどうか、知りませんが)と思いますし、儲けたいのなら、インフラなんかに手を出さず、高付加価値のアプリケーションだけをやればいい。

「ゴールドラッシュで一番儲けたのは、ホテル事業と鉄道事業」ということがベースなのでしょうけれど、彼のグループで、一番儲けているのは、ホテルでも鉄道でも無く、結局「掘っている人(ポータルサイトYahoo!)」じゃないのかしら。

あぁ、ゴメンゴメン。ホテルや鉄道も、「将来」すんごく儲かるんだったよね。

そして、高速列車の開発やホテルの改装費用なんてのは、たいしたことないんだよね。

いざとなれば、ホテルの2~3個売れば大丈夫だもんね。

そして、孫さんの列車を使った客だけしか、孫さんのホテルに泊まれないようにすればいいんだよね。

でも、それって、孫さんが「一番攻撃していた企業」の体質と同じなんじゃない?(笑)

2005年1月27日 板倉雄一郎





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