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SMU 第139号「株式投資と不動産投資」

昨日のSMU 第138号「幸福を得るメカニズム」の僕なりの答えです。
「自分は、幸福だと思うこと」が、恐らく幸福になる最も現実的な方法だと思います。(この件は、以上)

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それでは本題「不動産投資と株式投資」についてです。

SMU 第109号「不動産投資」でも、この件は書きましたが、今回はそれをもう少し分解して考えてみたいと思います。

結論から先に書きますと、不動産を直接所有することは「経営」であり。株式投資は、まさに「投資」ということになります。

なぜなら・・・・
(SMU第109号と内容が被りますが)不動産はそれ自体が価値創造を行いません。よって、不動産投資で期待することは、家賃収入などのインカムゲインとなります。

(バブル以前は、不動産価値そのものが増え続けるという誤解により、インカムゲインより不動産価値上昇に投資魅力がありましたが、今後はそんなことは無いでしょう・・・なぜなら不動産価格算定は現在、収益還元法を用いているからです。)

一方、株式投資(企業の一部、または全部所有)は、主にキャピタルゲイン(株価上昇)が投資目的です。

株式投資の場合、価値創造エンジンも含めて所有対象になるわけですが、価値創造エンジンとは、当該企業の経営者+企業の資産ということになります。

彼らの仕事は、収益のどれほどを再投資に回すかを考え、再投資先を探し、そして実際に再投資を行い、さらにそれらを経営することです。ですから、基本的には企業の内在価値が上昇し、結果、株価上昇となるわけです。

まあ、簡単な話、株式投資とは、経営者も含めて、その一部または全部を買っちゃうというわけです。ですから、株式投資をする人は、純粋に「投資家」ということになります。

一方、不動産に直接投資する場合、そこから生まれるインカムゲインのどれほどを再投資するか、再投資する場合、その投資先(物件)の選別などを、不動産に投資した人間が自ら考え実行しない限り、価値創造が行われないというわけです。

ですから、不動産に直接投資する人は、「投資家」という側面もありますが、価値創造を前提にすると「経営者」なわけです。以上が、冒頭の結論の理論となります。

断っておきますが、これは「どちらが有利」だとか、「どちらが正しい」と言うことではありません。あくまで事業の性格(価値創造エンジンも含めて投資するのか、価値そのものに投資するのか)の違いだということです。

「経営より分析が得意だ。」という方には、株式投資が合っていますし、「経営を人に任せるのはいやだ」という方には、不動産投資もしくは起業が向いているというわけです。

株式投資の場合、企業を見抜く目を持っていれば、企業が抱えるリスクは小さく見えますし、不動産投資の場合には、物件を見抜く目と同時に経営手腕を持っていれば、当該する不動産が抱えるリスクは小さく見えるというわけです。実は不動産投資の方が、儲けるための要件が多いのです。

僕の場合、109号でも書いたとおり、株式投資となります。

理由は、「社長失格」=経営者失格であること、さらに不動産を見る目を持っていないということが主な理由で、結果的に不動産投資のリスクが大きく見えるわけです。

それだけではありません。特に、自然災害などのリスクは、企業にも不動産にも悪影響を及ぼしますが、予測不可能です。予測不可能ですが、長期では間違いなく起こります。

このとき、不動産が被害を受ければ、その経営者であるところの不動産所有者自らが、その建て直しをしなければなりませんが、企業の場合、経営者も含めて所有しているわけですから、賢い経営者が存在する場合、自力で(株式投資家から見れば、特に何もしないうちに)回復することが不可能ではないという点が、僕を不動産より株式投資に向かわせている投資リスクの面からの理由です。

その他、資産の流動性という点でも、上場株と不動産では、投資額が100億円程度までであれば、その流動性に雲泥の差があります。さらに忘れてはならないのが「税」の存在です。インカムゲインには、毎年(減価償却費などの費用は控除されますが)税がかかります。

けれど、キャピタルゲインには、利益確定しない限り、株価が100倍になろうが、1,000倍になろうが、税は発生しないという利点があります。(まあ、その分企業が法人税を払いますけれど)

逆に、利益確定しなければ現ナマは全然入ってこないじゃないかよぉ~という、一見したところの問題点もありますけれど。(この点は、後述)

こんなところです。

僕の話は、この程度にしますが、多くの人が誤解していると思われる、「不動産投資=投資家」の式は間違っていて、正確には、「不動産投資=投資家+経営者」ということになり、結果、不動産投資は、結構「経営者としての仕事」をすることになるわけです。

話はティップスになります。

株式投資でもインカムゲイン(配当)はありますよね。一般的に、投資利回りの高い再投資先がある限り(=企業の成長期の場合)、配当などせずに内部留保し再投資することにより、当該企業の内在価値の上昇(株価上昇)となりますが、おいしい再投資先がなくなってくると(=企業の安定期以降)、企業はフリーキャッシュフローの多くを配当することになります。よって、成長期の配当利回りは低い方がよく、安定期以降は配当利回りを追及するということになります。

安定期に入りつつある、かのマイクロソフトの今期の配当額は、(なんと)320億ドル!(およそ3兆2,000億円!)ですよ。今期一期での話ですよ。すごいですねぇ。

投資家ウォーレン・バフェット氏と、経営者ビル・ゲイツ氏は仲が良いと聞いていますが、彼らの会話がどこかのメディアだか本に載っていました。おおよそこんな感じのことでした。

「我々は、キャッシュリッチじゃないよね」
(彼らに限らず、IPOまでこぎつけた企業家のほとんどが、同じ事を口にします。)
つまり、資産は計算上世界の第一位と第二位ですが、現金の比率は非常に少ないというわけです。

まあ、否定はしませんが、今回の(つまり今年だけの)配当で、ビル・ゲイツ氏の懐には、いくら現金が入ったと思いますか?

「ビル・ゲイツ氏の懐に入った現金 = 320億ドル × ビル・ゲイツ氏のマイクロソフトに締める株式シェア○%(もちろん筆頭株主)」です。とんでもない、キャッシュリッチさんですよね。

一方、ウォーレン・バフェット氏の場合、彼が会長を務めるバークシャー・ハサウェイ社は、多くの企業の一部または全部を所有していますから、それら傘下企業からの配当はもちろん、同社の収益にはなります。

が、この会社、もう数十年経っているのに、バフェット氏の投資眼力により、常に新規の高利回り投資対象を見つけられるものですから、これまでたったの1ドルも、株主への配当を行っていないのです。

全ての収益は再投資され内在価値になっているわけです。すごいです。

よって、バフェット氏はキャピタルゲインを得ます(バフェット氏も、もちろん同社の筆頭株主)が、受け取れる現ナマは、役員報酬および賞与ということになります。本当にバフェット氏の場合、総資産に占めるキャッシュの割合は低いですね。

一般庶民は、稼いだ金で、価値創造を行わないものばかり欲しがるのに対して、彼は株式投資そのものが、一般庶民のそれに置き換わっているわけですね。
(書いている僕自身の「過去」が、まさにその愚か者の張本人だったわけですけどね(笑))

話は、至極当たり前のところに落ち着くわけですが、何かを欲しがるのなら、それ自体が価値創造を行うものを欲しがった方が、資産を増やせるというわけです。

至極当然です。

投資対象としてではなく、自分が住むための住宅を、借金してまで所有したがる人の気持ちがわかりません。借金をしてもよい合理的な条件とは、そのコスト(借金のコストは金利ですが)以上の投下資本利益率を得られる投資対象がある場合に限ります。でも、百歩譲って、長期固定金利で住宅を買うのはちょっとだけ納得します。変動金利で借金していたら、近い将来、地獄が待っています。

2004年11月24日 板倉雄一郎





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