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SMU 第149号「レバレッジと事業リスク」

師走となりましたが、僕は自分のペースで仕事とお休みの調整を行っておりますです。

よって、「忘年会」と「渋滞だらけの東京」には、可能な限り行かないで済むように、いろいろ考え中です。なんのこっちゃ?

いえいえ、投下時間利益率を最大化するのが、個人部分の事業の大切なところだと、そういうことです。

予断ですが、「僕のThinkPadは、どうなっちゃうの?」なぁ~んて心配には及ばず、IBMとしては、投下資本利益率の低い部門の売却による現金収入と同時に、中国市場への足場作りができたわけであって、とても賢い選択だと思います。

ところで本題、「レバレッジとリスクの組合せ」についてです。

一般的に、有利子負債による事業のレバレッジは、薄利ビジネスに良く利用される資本戦略ですよね。

何度か書いておりますが、大手商社のようにROA2%弱のビジネスでは、自己資本比率が高ければ、投資家は投資しません。

よって、有利子負債比率を増やして(=資本コストを下げ)、自己資本比率を低下させ(=レバレッジを効かせ)ROEを高める必要があるわけです。

以上は、当たり前の話なのですが、それでは、事業リスク(=事業のリターン)とレバレッジの組合せについては、どうなるか・・・・について考えてみたいわけです。

【組合せ1:高レバレッジ&低リスク】
 しつこいようですが、これは「あり」ですよね。

 【組合せ2:低レバレッジ&高リスク】
 これは、そうでなければなりませんよね。「あり」です。

 【組合せ3:低レバレッジ&低リスク】
 これは、組合せ1の逆で「あまりよくない」です。

ここまでは、まぁ、当たり前といえば当たり前です。

では・・・

【組合せ4:高レバレッジ&高リスク】
 これはどうでしょうか?

机の上で分析ばかりしている人たちにとっては、ROIC-WACCスプレッドが大きくなるから、企業の信用力が著しく低くならない限り「あり」と答えるわけです。

しかし、(ハイパーネットがそうであったように)この組み合わせは、「駄目」なのです。なぜ駄目なのかというと、そもそも「ハイリスク・リターン」を望んでいない低リターンのお金(=有利子負債)で賄おうとするわけですから、様々な問題を引き起こします。

例えば、高リターンの可能性のある新規市場に取り組もうとすれば、そもそも高リターン(=高リスク)より、低リターンでも低リスクであることを望んでいるお金を使っていると、そのお金が(つまり金融機関が)「いやだ」とか言うわけです。

(僕は痛いほど経験しました)つまり、低リスクをレバレッジによって高リターンにするのか、高リスクによる高リターンにするのか、どっちかにしてくれ!っというわけです。

「駄目」なはずなのに、結構あるんですよこういう企業。

ドコとは書きませんが、結構あるんです。注意したほうがいいですよ。たとえその会社の社債格付けが「AXX」であったとしても。講演などでいつも言っていることですが、経営にとって最も重要なのは、事業リスクと資源のベクトルの一致なのです。

このベクトルの一致(高リスクの事業には、高リターンを望む資金)が図られていないと、経営は大変なのです。経験的に言えることです。 今日は、こんなところで。

2004年12月9日 板倉雄一郎





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