板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  スタートミーアップ  > SMU 第4号「秋です」

SMU 第4号「秋です」

先週もまたまた、連載をサボってしまいました。ごめんなさい。


<第4号>秋です

先週は、遊びで札幌。仕事(講演)で新潟は燕三条。と、ちょいと秋を先行して楽しめるような場所へ行ってまいりました。

「札幌は寒いだろうなぁ~」などとちょっとした楽しみを感じながら、秋モノ衣類をバッグに詰めて向かった先は、最近の東京の気温が一気に下がっていたせいか、ぜんぜん東京と変わらずちょっと残念。 

でも、ススキノで食べた「一心亭」はおいしかったし、その後、うちのカミサンと一緒に行った「N43」というバーはなかなか良かった。

「N43」は札幌の高台にある高級住宅地にある。聞くところによると何の職業だかわからないが自宅を改造したオーナーが営む店ということだ。

カウンターからは札幌市内が一望できるので、「その時」にはなかなか良い。なので、ちょいと気になる女性を誘っての札幌一泊旅行には最適と思われる。「思われる」と書いて、今年の春までやっていた「懲りないくん」とずいぶん違う自分がいることに気がつく。

それまでは、「XX嬢と札幌一発旅行!でN43なるバーを発見」などと書いていたはずが、今は「思われる」なぁ~んて他人事になっていたりする。

なっていたりするが、「あの頃はよかったなぁ~」などと思ったりは「まだ」していない。甘い甘い新婚生活なわけでもないし、かといって何か問題があるわけでもない。まあとても自然になじんでいるように本人は思っている。

だけどこの先どうなるか・・・とても楽しみではある。

実はこの旅行、きっかけは僕のフライトマイルの期限切れ対策。とってもセコイ話だが、この年末に数万マイルのマイレージが消えてなくなってしまうことが判明。

そこで特にそれ以外の目的もなくJAL往復チケット1万5,000マイルで購入というわけ。

ヒコーキに良く乗る人はフライトマイルをしっかりためる。そして溜まったマイルを見て喜ぶ。銀行に預金しても事実上金利ゼロだから、日本人の貯蓄癖のはけ口にでもなっているのだろうか、フライトマイルは飛んだ分だけ確実に溜まる。

でもね、よくよく計算してみると、フライトマイルによる航空運賃の割引率って実はたいしたことない。だけど使わないで消えていくとなると「もったいない」とうろたえる。僕の場合は、JALのアカウントを持たないカミサンの旅費(実はこれも、ツアーパッケージを利用)を負担したから、結局「マイルがもったいない」という理由で、旅行会社を儲けさせる羽目になった。

旅行から帰って「でもさぁ、二人で札幌一泊旅行して、計2万円(=カミサンのツアー代)だから、一人1万円でしょ~安いよねぇ」などと自分を慰めていたりする。

そもそもポイントシステムとは、マーケティング用語で言うところの「顧客の囲い込み」なる作戦であるからして、ポイントを貯めるという行為は、逆に言えば企業に「囲われる」ということになる。

そして、「もったいない」という心理が、一層の購買意欲につながるというわけだ。

かくして企業は、消費者の金が他の企業に逃げないようにとポイントシステムを導入する。ポイントシステムには、実はとんでもない落とし穴があることを一応書いておきます。

まず、企業にとっては「簿外債務」。

つまり顧客が持っているポイントは顧客の要求によって、その企業の商品なりに企業側の負担で転化する義務を負っているから、企業にとって実質的な債務である。

しかし多くの場合、企業が発行しているポイントが全部で何ポイント、いくらに換算できるかを正確に把握できない(顧客が「いつ」「何に」変換するかを前もって知る方法がない)ので、正確に帳簿の「負債の部」に計上できなかったりする。

だから、企業にとってポイントシステムは、会社の財務的な状態を正確に把握することの妨げになる。

正確に把握できないだけなら良いけれど、もっと深刻な状況を招く引き金にもなったりする。

たとえば、ある企業の信用状態が悪くなり、その企業の顧客(=ポイントホルダー)が「この会社はヤバイらしい」などの噂が広がれば、この企業に対する潜在的な債権者であるところのポイントホルダーは、直ちにポイントを商品に変換しようとする。

その結果、企業はポイントという負債を一気に支払うことになり、悪いケースの場合は、そのポイントの変換によって資金繰りが悪化して倒産することだってありうるわけだ。

この場合、顧客(=ポイントホルダー)もすでに持っているポイントの権利を全部消化できずに、泣き寝入りということになる可能性も秘めている。ポイントシステムは一見「得した」気分を味わえるし、企業にとっても顧客の囲い込みを可能とするWIN=WINのシステムだが、消費者も企業も、実質的な債権債務についてちゃんと考えておかなければならないということになる。

ということで、僕の場合は、あらゆるポイントを可能な限り早期に商品に転換しているというわけ。たとえば僕が持っている「ビックポイントカード」なるものがある。

ビックカメラ全店共通のポイントシステムで、買い物をするときに毎回提示する。すると店員さんが「ポイント使いますか、貯めますか」などと聞くわけだが、どう考えても「貯める」合理的な理由が見つからない。

だから僕は常に「使います」といっているわけでございます。

もしかしたらポイントがある一定以上に溜まったら、何か別の恩恵でもあるんでしょうか?貯めたポイントに利息でもつくのでしょうか?僕には「貯める」を選択する人の気持ちが良くわからないでございます。

ということで、今週は終わり。

また来週ちゃんと書きますです。はい。

2002年9月27日 板倉雄一郎





エッセイカテゴリ

スタートミーアップインデックス