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SMU 第78号「未来の証券取引」

未来の株式取引はどうなるか?
こういう話題大好きなんですよ。
で、未来予想の実績としては、これまでほとんど大当たりなんですよ。
だけど、それを自分の事業としてやるから、失敗するんですよ。(詳しくは、57号にて)
それに気がついたから、これからは、自分が「こうなるだろう」と思うところの事業を手がける企業に投資することにしたんですよ。
つまり、企業家から投資家というわけです。
まあ、たいしたことないですが、少なくとも今は。

で、今日は、取引端末の未来について僕の予想をお話します。
まず、端末の映像の前に、株式取引の基本が変わる(基本に戻る)のではないかということについて・・・
現在、株式の取引は、ある企業の株主価値を、細切れにしたところの単位(=株式)を、いくつ、いくらで買う(または売る)という注文をするわけですね。
しかし、この考え方は、株式投資の基本であるところの、「企業の株主価値を手に入れる」ということに対して、感覚的にずれがあると思うんです。
なぜなら、人は株式投資をするとき、株価は気にしますが、その単位(株数)が、当該企業の何パーセントに当たるのかを、ほとんど気にしていないからです。
株を買うという行為は本質的に、その株式を発行している企業の株主価値の一部を所有するということです。
だから何株で何パーセントを所有できるのかということは、非常に大切なことなのです。
これまでは、まあ仕方ないです。
その昔は、コンピュータも通信も無かったわけですから、紙に印刷した口数が取引の基本だったわけです。
でも、それは時代と共に変化してきました。
近い将来、紙としての「株券」がなくなるのは、皆さんもご存知だと思いますが、進歩の一例ですね。
で、株式の取引は、「一株をいくらで売買するのか」ということから、「その企業の株主価値の何パーセントをいくらで売買するのか」に変わる(=本質に戻る)のではないかと、思うわけです。
よって取引単位の数値としては、これまでの逆数になります。
1000万株発行している企業の場合、「一株」=「1000万分の1シェア」、「1000株」=「1万分の1シェア」となるわけですね。
つまり、これまでは「何株」と注文していたのに、未来は株主価値の「何分の一」と注文することになるわけです。
で、当たり前ですが単元株などなく、最小単位が決められるだけになります。
ちなみに、「株価板」は、一時的に残ります。
この場合上記の最小取引単位をベースに、売り買いの気配が、現在のように表示されるというわけです。

さて、以上を基本にして取引端末画面のイメージですが・・・なんと3D!になります。
コンピュータの処理能力がアップして、CPUが暇だからという、いい加減な理由で3D表示をさせるわけではありません。
3D表示は、必要になるわけです。

まず、株数からシェア(比率)という考え方に変わるわけですから、企業の時価総額を表示しなければなりません。
時価総額は、株価と発行済み株式数の積ですから、当然、X軸とY軸が必要ですよね。X軸に現在の株価、Y軸に最小取引単位(現在の一株)の総数となり、その面積が時価総額(=企業の時価株主価値)となるわけです。

まずこの段階で、当該企業の時価総額の規模が一瞬にして「重みをもって」認識できるわけです。
うん、これはいい。
おまけに開示義務のある大株主の分は、時価総額面積が色分けされて、かつ名前も表示されるんです。
浮動株の比率も、外国人の比率も一目でわかるようになるんです。
で、Z軸は、どうするのかといえば、ここには個人の売買値段を反映して、上記時価総額面積とは別の「色」で、上下に表示されるわけです。透かしが必要ですね。
つまり買いのときは「時価総額面」よりZ軸上で下に、売りの時は時価総額「面」よりZ軸上で上に、希望売買価格と売買シェアによって形成された「面」が表示されるわけです。
ここでよいのは、自分がこの価格でこの企業の一部を所有すると、こぉ?んなに時価総額がふえちゃうんだぞぉ?という認識が「絵」としてできるというわけです。
現在の単なる株価表示では、このように認識できませんから、株主価値に対して、ばかげた時価総額になるような株価も平気でつけてしまうわけですね。
特に株価が上昇中は、つい「追いかけて」しまうわけです。
そういう行為を「絵」で示すことによって、暴走が防げます。
つまり、四季報に出ている程度の情報なら、一画面に「絵」として表現できちゃうんです。
すごい!

注文の入れ方ですが、現在のように、「指値」の場合に、テンキーで数値を入力するような、馬鹿馬鹿しい(=株価の絶対値にさほど意味が無い・・・というより僕は結構よく入力ミスをやらかしてしまいます・・・きりのいい数字に売り買いの気配が固まることがありますが、あれほど、意味の無いことは他にないぐらいです)ことはなくなって、ジョイスティックやカーソルキーで「カチカチ」とやることによって、「注文面」が上下に動くわけです。詳しい数値は横に小さく出ていれば、それで良い訳です。
大切なのは、当該企業の何パーセントを、いくらで買ったときに、その企業全体がどれほどの価値と見積もられるのかを「絵」で認識できることです。
どうですか? 画面が目に浮かびますか?
(ちょっと、難しいですかね)

ちなみに、売買価格と株数をカーソルキーで入力するぐらい、今でもさっさとどこかがやって欲しいものですよ。
最初は「一株」の「現在値」にポイントされていて、カーソルの上下で株価の上下、カーソルの左右で株数の増減といった具合にね。
で、自分の買い建て限度を超えるところまで、カーソルを動かすと「ぶーぶー」と音がして、それ以上動かせないとか。
ゲームソフトの会社に端末の取引アプリケーションを作らせれば簡単です。
この場合、証券会社のシステムも、東証のシステムも全くいじる必要は無く、かつ端末の処理方法の変更だけだから、端末と証券会社間のプロトコルにも一切手を加える必要は無いんです。
端末の演算能力と表示能力がこんなにアップしているのに、どういうわけか証券取引に関しては、未だに「テキストベース+チャート」となっているわけです。もったいないですねぇ。

以上は、画面の状態ですが、内容的にはもっとすごいことになります。
それは、個人の企業評価の詳細な方法を端末に覚えさせることができ、且つ
必要な情報を、端末が勝手に探してくる! となるはずです。
この辺のスクリプトの自由度が、将来の証券会社の勝敗を決めることになります。
間違っても手数料の高い安いでの勝負ではありません。
現在も、企業のスクリーニングを行うために、いくつかの指標を引数にして、その範囲を指定することができますよね。
たとえば、「ROE20%以上、かつ、自己資本比率40%以上、かつ、PER30倍以下」とかね。
それの延長です。
たとえば、僕のように、企業の将来キャッシュフローを最も重要な企業価値評価の基礎とするような人は、当該企業の過去の有価証券報告書から、キャッシュフロー計算書の数値を抜き出して、適当に定義した方法によって、その企業の価値を計り、その結果を先ほどの売買画面に「透かし面」として表現できるというわけです。
これを参考に売買値段をカーソルキーでカチカチやったり、マウスホイールで動かしたりしながら注文できるわけです。すごい!

ここで、極めて重要な未来のテーマに気がつきます。
株式の売買が成立する・・・その根拠とは何だと思いますか?
僕は、「人によって、企業評価を割り出す方法と、その元になる情報に差がある」からだと思います。
つまり、全員が同じ情報と同じ企業価値分析方法を持っていたとしたら、まずいです。
あらゆる人が同じ値段で欲しがり、同じ値段で売りたがるわけですから、売買は成立しません。
これは資本主義の崩壊を意味する可能性すらあります。
ところが実際には、同じ情報と同じ分析方法を持っている人などごくわずかで、ほとんどの人の企業価値評価が結果的にまちまちなので、売りたい人と買いたい人が出会い、売買が成立するわけですよね。つまり出会い系。
だから、上記の「自動企業評価インテリジェントシステム」(と勝手に名前をつけました。いや僕が考えたんだから、勝手でもええ)は、多肢にわたる情報と分析方法を定義できないと、株式市場が崩壊しますよね。
この点重要です。
かなり豊富な引数を、豊富な方式で計算した結果と、それらに投資家本人の「主観」を組み込めるシステムが必要だというわけです。
さらに企業評価の方法を示したこのスクリプトそのものが、売買される可能性すらありますね。
でも現在の「自動チャート売買」と同様、本当に儲かるなら、だれも自分の手から離しませんけどね(笑)

つまり、何を言いたいのかというと、今のネット証券会社の活動に全く「創造」が無いといいたいわけです。
あちらもこちらも、「値引き」だけでしょ。全く芸がありません。
で、以上のような方法は(一部単位株制度を除き)実現不可能じゃないんですよ。
技術的にも、全く問題ありません。
東証のシステムの変更も必要ありません。
東証がシステムを変えるほど大げさな変更が必要なのは、株という単位から、当該企業の保有比率に変更する部分だけですからね。
それまでは証券会社が現在の株式単位の中で、暫定的に以上のシステムを稼動させればよいわけです。

いいでしょ?
でも僕は自分でやらないよ。だって、自分でやると失敗するもん。
どっかのネット証券会社、やってくださいよ。ねぇ。
プレイステーションのシミュレーションゲームを作るほど難しくないよ。

以上、SFでした。

2004年6月30日 板倉雄一郎





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