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SMU 第60号「雇う人と雇われる人」

講演や読者からのメールなどで、よく聞かれることがある。
「起業家(または企業家)の資質って何でしょうか?」
「僕は、???な人間なんですが、起業家に向いているんでしょうか?」
「経営者と従業員(社員)の一番の違いって何でしょうか?」などなど。
まとめてしまえば、人を雇う人と、雇われる人に、それぞれ素性みたいなものがあるのではないかという前提の上で、両者の違いはなにかという質問だといえる。
僕自身を含め、周囲の企業家や経営者を観察した結果、確かに共通した素性みたいなものはある。
安易に考えると、能力、計画力、実行力、などが言われるが、これらは従業員でも必要なわけであって、雇う側と雇われる側の違いではない。
それでは、僕が思うところの両者の決定的な違いとは。

全く前提も条件も無いところで「経営とはなんだ?」と問われれば、僕は教科書どおり「株主資本の管理だ」と答える。同様に「経営者がもっとも重視しなければならないことは?」と問われれば「株主価値の最大化だ」と答える。あたりまえのことだ。ただ具体的な答えではない。
具体的に株主価値を高めるためには、投資資本に対する利益率を継続的に高めるということになる。
投下資本に対する利益率を高めるためには・・・・(この辺は話が長くなって本題からそれるので割愛する)と、話を続けていくと、まあそこら辺の経営や戦略に関する本に書いてあるようなことばかりになってしまうわけだが、これらを実現するためにもっとも大切なリソースは、いわずもがな「人」である。資源に乏しい日本の場合には特に、有能な「人」が集まって、効率よく仕事をこなさなければよい結果は得られる事が無い。(場合が多い・・・優秀ではない経営者でもしっかりお金を稼げる企業は、実はとってもよい会社ではある。)
よって、経営の目的を達成するためのキーは、「人」にある。当たり前だ。
つまり優秀(とは具体的にどういうことであるかは割愛する)な人間を集めるためには、どうすればよいのかということの答えが、如いては雇う側と雇われる側の違いということになる。と僕は思っている。
経営者の中には、自分が如何に優秀であるかが、優秀な人間を集めるために必要だと思っている人も結構居る。しかしこれは大きな間違いだ。なぜなら、優秀な人は、優秀であればあるほど、その専門分野にとやかく言われるのが好きではない。自分の上司に当たる経営者が、自分の分野に入り込んできたらうっとうしいし、そもそも自分の存在意義が無い。
また、新興企業の経営者の中には、自分が如何に優秀であるかを証明するために事業を始めた人も居る。これも大きな間違いだ。最初の原理に従えば、間違いであることは議論の余地が無い。
以上の二つは、間違いであるばかりか、そもそも事業を失敗に導くよくある要因とさえ言える。
なぜ、そういえるのかを、雇う側と雇われる側の違いから考えてみる。

自分より優秀だと思える人間に出会ったとき、あなたならどう思いますか?
「悔しい・・・いや、俺の方が優秀だ」と思う。
「悔しい・・・が、まあいいか」と思う。
「すごい人だ。お友達になりたい」と思う。
「すごい人だ。力を借りよう」と思う。
まあ、人によっていろいろ考えはあるだろう。
けれど、僕が出会った好業績の企業の経営者(企業家)の答えは、以上のどれでもない。
では、雇う側の人が自分より優秀な人間に出会ったときに考えることとは・・・・
「すごい人だ、いくらで手に入る?」
である。

これに関してこれ以上くどくど説明は要らないでしょう。
以上のことが、雇う側と雇われる側の大きな違いなのです。


2004年6月10日 板倉雄一郎
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