板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  スタートミーアップ  > SMU 第121号「記事裏読みスタート」

SMU 第121号「記事裏読みスタート」

そろそろ、日本経済新聞の記事に関する考察についてのエッセイシリーズを始めてみようかと思います。本日は月曜日ということもあり、たいした記事が無いので、本記事とは別に「Switch on Monday」
に面白いパートがあったので、これを取り上げましょう。

10月18日(月曜日)日本経済新聞(朝刊)の第17面に「新球団争い 直感VS理論?IT起業家、西氏・孫子の系譜」という記事があります。
ええと、数年ほど前なら、この手の系譜記事には、ほぼ間違いなく「ハイパーネット・板倉氏」などとかかれたものですが(笑)、今は、「元」との表現でも見当たりません。つまり見る影もありません。
「ビジネス志向?マニア志向」が縦軸に、「直感派?理論派」が横軸にされた分布図で、紹介されているのは、サイバーエージェント藤田氏、サイバード堀氏、ライブドア堀江氏、(元)アスキー西氏、アップルコンピュータ・スティーブンジョブス氏、ソフトバンク孫氏、IIJ鈴木氏、楽天三木谷氏、ネットエイジ西川氏、カルチャーコンビニエンスクラブ増田氏、インデックス落合氏、インターネット総研藤原氏、アプリックス郡山氏、アクセス荒川氏、そしてマイクロソフト・ビルゲイツ氏といった面々。
この中で、僕が直接あったことが無い方は、スティーブンジョブス氏、荒川氏、郡山市、落合氏で、他の方々とは、ビジネスの話を直接したことのある関係です。(一部の方は、合コンでしか顔を合わせないという人も居ますが)
日本経済新聞社による分布分類については、まあ「気持ちはわからないでもないけれど、直接本人を知っている人が書いていない記事」とすぐにわかります。
どこがどう違うのかについては、割愛しますが(たとえばGMO熊谷氏については、とても「直感」で行動するような人物ではないどころか、かなり論理的にビジネスを考える傾向があります。学位や職歴によって分類されている大雑把な記事というわけですね)要するに「記事」などというものは、そんな程度であるわけです。
記事から外れますが、株式投資の際に多くの人が参考にする「アナリストレポート」というのがあります。これも、まあほとんどあてになりません。実際にアナリストレポートに頼って投資して、大きく損失を出したことのある人なら、良くわかるでしょう。

つまり、何が言いたいのか・・・というと、世に氾濫するメディアによる情報というのは、それを個人が吟味(評価)することができる環境に無ければ、ほとんど何の役にも立たないということです。
しかし現実には、記事に書かれていることの大部分は、一個人の情報量では太刀打ちができません。ですから、僕の場合、自分とそのメディアの傾向のバイアスを図ることにしています。このバイアスを認識できれば、自分が直接知らない情報(=メディアの情報しか手に入らない場合)についても、情報にバイアスをかけることによって、ある程度自分の感性に近いところで認識することができるというわけです。
たとえば、その記事の中で、「そのメディアより自分の方が良く知っている」という内容を見つけます。社会人なら、なんらかしら専門分野というのがあるでしょう。そして自分の意識と彼らの意識の「差」に注目します。それを同じメディアに対して何度も繰り返していくうちに、そのメディアの情報表現の傾向がわかるようになってきます。それが個人(読み手)とメディアのバイアスとします。このバイアスができれば、初耳情報であっても、ある程度吟味ができるようになるというわけです。

何らかの意見、情報、分析などは、「それが誰の手によって収集され、加工され、表現されたのか」がわからなければ、ほとんど何の価値も無い。そういう結論も導き出されます。
「表現者の立場」(=わかりやすくいえば、表現者の都合ということになります)を理解することも、情報を吟味する上で非常に大切なことですよね。たとえば、前出のアナリストレポートの場合、彼らは証券会社(という企業の株式の売買によるビジネスをしている)立場を理解すれば、必ずしも中立な分析結果と意見を出すとは限らないことが良くわかるはずです。
余談ですが、匿名メディアの情報など全く意味が無いと認識する方が、「もしかしたら本当かもしれない」などと思ってしまうより、はるかに良い結果を生むという言い方もできます。

以上が、日本経済新聞の裏読みシリーズに入る前の、準備といったところです。

それでは、本日は、セミナー、講演の打ち合わせ、取材、スタッフミーティングと忙しいので、まずはジムへでも行って、目を覚まします。

2004年10月18日 板倉雄一郎





エッセイカテゴリ

スタートミーアップインデックス