板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「モラトリアム」

亀井静香郵政・金融大臣の提唱するモラトリアム(=支払猶予法)が、もし、施行されるようなことがあれば、彼の思惑とは正反対に、対象となる中小企業の倒産が相次ぐことになるでしょう。
だって、貸しても返してくれない企業に対して金融機関は融資しなくなりますから。

(参考までに・・・過払い返還請求のTVCMが盛んですし、担当する弁護士もぼろ儲けですし、返還された個人もホクホクかもしれませんが、過払い金を返還させた人は、二度とサラ金からお金借りられませんし、サラ金に手を出すような個人は、そもそもフツーの金融機関から融資を受けられるようなクレダビリティーに持ち直すことは無いでしょうから、足元では「ラッキー!」でも、先行き大変です。)

そもそも、民間同士の既に締結された契約に対し、政府が介入するなんてことをやるのは、昭和恐慌のような経済的な「大混乱」の状況なら別ですが、現在のように各種指標が示すより実体経済が悪化しているとは言え、「大混乱」というわけではありません。

あくまで、民間同士の協議の中で、返済のリスケなり、DES(Debt Equity Swap)なりを行う上で、その協議が「少々」中小企業に有利になるような間接的な法律を作る範囲に留めるべきだと思います。

また、グローバルの視点から考えれば、民間同士の契約がいつ変更されるかわからない国への投資は引き上げられることになるでしょうから、様々な「予測不可能な」混乱が派生すること間違いなしです。

 

ところで、そもそも亀井大臣は、本当にモラトリアムの実現を目指しているのかどうか・・・
郵政問題を有利に解決するための「一石」として、メディアの注目を浴びているうちに大騒ぎしているだけなのかも知れませんけれど。

ちなみに、亀井大臣の発言にあるような、いわゆる中小企業などの「弱者」保護に関して、僕は一切関心が無いわけではありませんし、そもそも弱者としての中小企業の状況、気持ちについて、僕は最も理解と経験のある人間の一人です。
債権者である金融機関と債務者である中小企業との力関係についても、「痛いほど」良く知っています。
けれど、十羽一からげで、「返済しなくてええよぉ~」なんてありえない。
それじゃ経済停滞どころか経済大混乱になるだけです。
そもそも経済とは、様々な「契約」によって成り立っています。
その契約が信頼できないのであれば、その国の経済はおしまいです。

このジーサン、一体何がしたいんですかね?

 

2009年9月29日 板倉雄一郎

 

PS:
「ぎっくり背中」、おかげさまで大分良くなりました。
本日より、仕事も遊びも復活。
でも、車やワンコのメンテナンスばかりではなく、自分の体のチェック&メンテナンスに本腰入れようと思うようになりました。

で、オープンセミナーの後、人間ドックに久々に入ろうと思います。
それはそれで楽しみです。





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