板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「100年に一度の金融危機!?」

メディアでは、「100年に一度の金融危機、経済危機」という表現が目立ちます。
恐らくは、1929年の世界大恐慌(果ては第2次世界大戦)という歴史を参照してそう表現しているのだと思いますが、僕は、「100年に一度」という修飾は正しくないと思います。

正しくは、「人類史上初の金融危機」です。

その理由は、現在ほど、情報、金融、物流、生産などがグローバルに発達した世界における金融危機など過去に無いから。

1929年の頃は、(生きていたわけではないですから経験的にはわかりませんが)、少なくとも今ほど世界経済がリンクしていたわけではありませんし、特に「情報伝達」に関しては、ネットも、ファックスも無ければ、世間一般には電話すら普及していない時代ですから、「金融が情報によって動く」ということを前提にすれば、当時とは全く別の金融システムに起こってしまった金融危機です。

悪いニュースも、良いニュースも瞬時に世界に伝わり、モノの生産においても、物流においても世界がリンクしている現在において、過去のいずれかの時期を参考にすることは不可能だと思います。

以上の意味から、「この先を予測すること」など、誰にもできないのだと思います。

トヨタの営業損失の話題が世界で報道されていますが、当然といえば当然です。
この事実について、何かしらコメントしようと、何度もエッセイを書いてみましたが、既にメディアで報じられていること以外に特別な価値のある分析や表現を行うことができそうに無いので、特にコメントできません。

世界中のメディアが「トヨタでさえ・・・」というニュースを報道していますが、正直、「何をいまさら」と思っています。

とにかく、リンクした世界経済全体が信用収縮を起こしているわけですから、自動車であれ、家電であれ、ヨーロッパであれ、アメリカであれ、アジアであれ、とにかく「売れない」わけですから。

 

それでも、10年も経てば、「誰かが生き残り、多くが(経済的に)死滅する」という結果が判明するわけです。

過去に例が無かったとしても、一ついえるのは、「読める人間」は生き残り、「リスクを取ってチャレンジする人間」の『一部』が生き残るのだと思います。
しかし、これまでのビジネスモデルを変更せず、ただただ「我慢」をするだけでは生き残れないのではないかと思います。

要するに、知識と、先見性と、「運」を兼ね備えた人間が生き残るのだと思います。
それ以上のこと(為替がどうなる、株価がどうなるなど)については、誰もわからないのだと思います。

 

けれど一方で、僕のところには、「新しいビジネスモデルに意見をください」といった内容の相談が増えつつあります。
非常に心強い傾向です。

「今がチャンス!」と捉えたのか、それとも、「他にすることが無いから仕方なく考えた」のか、それはわかりません。
けれど、「何かしたい」とか、「何かしなくちゃ」といった人間がこのご時勢に少しずつ増えていると実感することは、とても心強いです。

不況型のビジネスモデルて、結構あるんだなぁと思う次第です。

「仕事よこせぇ!」と叫ぶことを続けていても、とにかく世界がシュリンクしているのですからお話になりません。
他人に依存することより、組織に依存することより、「自ら価値を提供する」にシフトしなければ、いつまで経っても問題は解決しないのだろうと思います。

「新しいビジネスモデル」、それは、現在のような不況下という栄養を受けて、育っていくのだろうと思います。

2008年12月24日 板倉雄一郎

PS:
本日はクリスマス・イブ。
今年のクリスマスは、イマイチ盛り上がりにかけますよね。
僕は、母上と近所のお店で「天然とらふぐコース」を食べます。
気がついたら、今年初のふぐです。たのしみぃ~!

 





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