板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「仲間」

もう、ずいぶん長い間「自動車レース(実車やカート)」をやっていないが、スタンディングスタート独特の「孤独感」をふと思い出した。
運動会の100メートル競走のスタンディングスタート時に、心が宙に浮いたような感じになるのを共感して頂けるだろうか、あの感覚を何倍にも増幅したような感じだと表現すれば、なんとかおわかりいただけるのではないかと思う。
僕が初めて実車レースのスタンディングスタートの経験をしたとき、それが初めてであったが故にその孤独感は結構大きかった。

俺は一人だ。誰も助けてくれない。
リスクを取るのも取らないのもすべて自分次第だ。
手足の落ち着きが無かった。
尻の座りが悪かった。
ステアリングや三つあるペダルの操作感がいつもと違い、必要以上に軽く感じた。
そして何よりヘルメットの中に響く自分の呼吸音が孤独感をさらに増幅した。

「どうしよう・・・大丈夫かな俺、ヘマせずウマくやれるかな・・・」

そんなとき、ふと思った・・・

「そういや、周りに居る他のドライバーも同じ境遇なんだよな!」

これに気が付いた途端、僕の気持ちは平常化した。
レースを合理的に進められる精神状態を手に入れることができた。

「仲間」には大きく分けて二通りあると思う。
一つは、同じレーシングチームに所属し、成否を共にする仲間。
一つは、境遇を共にするドライバー仲間(←ライバルとも表現できる)
前者を「内部仲間」、後者を「外部仲間」と呼ぶことにしよう。

どちらのカテゴリーの仲間も、自分を励まし、勇気付け、前進する原動力である。

レースが終わり、共にバトルした相手に・・・

「いやぁ~楽しかったけど、あの時ビビリましたよ。速いですねぇ!」
「いやいやそんなこと無いですよ、僕もかなり怖かったですよぉ~」

そんなドライバー仲間との会話が自分をして「自分だけが怖いわけじゃない」と、自分がレースを続けることが場違いではないと安心させてくれた。

結果、僕にとってレースは「興味はあるが怖いもの」から「楽しむもの」に変化した。
当然ながら成績も徐々にではあるが向上することになる。


企業経営に置き換えれば、内部仲間は従業員や株主など同社の利害関係者であり、外部仲間はいわゆる「起業家(企業家)仲間」である。

19歳で最初の会社を起業した僕には当たり前だが最初から内部仲間は居た。
しかし、起業家として境遇を同じくするはずの「起業家(企業家)仲間」に遭遇するまでに僕の場合、その後の7、8年を要した。

僕の経営する会社がマスコミ(経済紙)に取り上げられるようになり、その記事を見た起業家仲間が声をかけてきてくれたからだった。
SNSどころかインターネットさえ一般的でなかった当時は「外部仲間」と出会うことは簡単なことではなかった。
出会った仲間は、後にいくつかの経営者団体を創ることになる。そしてそのうちのいくつかは現在も活動を継続している。

起業に限らず、何かを始めるとき、同じ境遇の「外部仲間」は非常に役に立つ。
起業時、起業家は「内部仲間」の調達にばかり目を奪われる傾向にあるが、内部仲間の調達や吟味(つまりリクルーティングやパートナーシップ)と同等以上に「外部仲間」との出会い、そして、立場の共有は起業家として生きて行く上で非常に重要なことなのだ。

安心安全安定・・・そんな環境はこの世に存在しない。
しかし「内部仲間」に加え「外部仲間」を作り交流を持つことによって、心を安定させ、リスクを取りながら前進する勇気を持つことはできるのではないだろうか。

2011年1月25日 板倉雄一郎


PS:

過去に30回以上開催し、900名程の卒業生を輩出した「実践・企業価値評価セミナー」の受講生同士が、今でもTwitterやFacebookで不思議なくらい仲良しであることを観るにつけ、僕のセミナーの最も重要な価値は「外部仲間」を見つけられることにあるのかもしれない、とさえ思う。




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