板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「嫉妬の文化はデフレの原因」

今の世の中、「不景気話」ばっかりですよね。
確かに、景気減速ですから、そんな話が多くても仕方がないと思います。

しかし!

本当にすべての分野で景気が悪いのでしょうか。

都心の割と高級な飲食店の「暗証番号によるドアロックの個室」が人気があります。
都心からちょいと離れた有名高級温泉宿は、予約でいっぱいだったりします。
高級乗用車の新車は売れていなくても、「新古車(←ディーラーがオフバランスするために放出した走行数百キロの物質としての新車、しかし、一度登録されているので法的には中古車)」は、結構動いています。
(ちなみに、VWグループのAUDIは、売り上げ高を伸ばしています。)
日本の住宅は売れなくても、日本人による海外(たとえば住宅価格が下落したアメリカの保養地)の住宅購入が盛んです。

少なくとも僕の周囲では、かなり羽振りの良い友人がたくさん居ます。
そして、彼らは、以下のようなことを口をそろえて表現しています・・・

「このご時勢で、羽振りが良いことが周囲に漏れると嫉妬されるから、密かにね」

今の日本で、高級車を乗り回したり、夜な夜な高級飲食店を徘徊したりすることが、周囲の嫉妬をさそい、それが反感に変わり、最悪は現在儲かっているビジネスに悪い影響が出てしまうことさえあるわけです。

彼らと遊びを共にする機会が多いのですが、以前(=2008年夏以前)に比べ・・・

「今回のこと、内緒にしておきましょうね。」

そんな約束が毎度当たり前のように交わされます。

それだけ、彼らは敏感に「自分たちが相対的に成功していること」および「成功に対して嫉妬する文化」を敏感に感じ取っているわけです。

で、彼らは、「日本を離れたい」と言い出すわけです。

僕の友人や知人の中には、シンガポールへ移住した人も居ますし、
住宅価格が大幅に下落したアメリカの保養地(ハワイやマイアミなど)に億単位の住宅を別荘として購入した人も居ます。

日本で稼ぎ、海外で豪遊する。

そうさせるのは、明らかにこの国の「嫉妬の文化」ではないでしょうか。

嫉妬を恐れれば、どれほど稼いでも、消費を抑えるか、少なくともバレないようにするでしょうし、そもそも稼いでいることを(税務署以外には(笑))隠すようになります。

かくして、稼ぐ人間の消費さえ抑えられ、彼らの貯蓄は益々増え、「使われていないお金」が山積みになり、益々経済は悪化します。

 

非正規雇用者が解雇され、住宅を失い、路頭に迷う映像を見ながら、

「かわいそうだなぁ、でも彼らに比べれば自分はマシな方だ」

と自慰することで我慢する人が増える世の中であるより、

確かな価値を社会に提供することによって稼いでいる人間を賞賛し、

「おれもガンバろっと」

と思える人が増えることが、本質的に経済を浮揚させるわけです。

けれど、以上のように、成功している人ほど、それを隠そうとします。
間違ってもメディアで取り上げられることはほとんどありません。
益々、「みんなで苦しんでるんだから我慢するしかない」なんて間違った方向に進んでいるような気がします。

成功している人を「賞賛する」文化に、何とかならないものでしょうか。
日本で事業を行い成功した人が、この日本でお金を使う・・・それが経済をドライブするわけです。

「景気の悪い人」が、高らかに(?)自分の状態を表現し、
「景気の良い人」が、密かに暮らす。
そして、景気の実態以上に、景気が悪い「イメージ」が蔓延する。
結果、デフレスパイラルが継続する。

経済は、つまるところ、人の心が動かします。
為替、金利、そして財政出動などの「理論的な経済原理の範囲」だけでは景気が本当に良くなることなど無いのです。
それらの政策は、「やる気のある人の後押し」に過ぎないわけです。

稼いでいる人間が、気兼ねなくお金を使える世の中にならないと、お金が回ってこなくなるわけです。

景気とは、要するに「お金の回り具合」なのですから。

2009年1月19日 板倉雄一郎

PS:
昨年の株価下落局面で、めちゃくちゃ稼いだ人間が、実はたくさん居ます。
けれど、彼らは(税務署以外には)、その事実を言おうとはしません。
その傾向は、どんどん強まっている感じがします。

気持ち悪い世の中です。

 





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