板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「世界の共産主義化?」

世界各国が「大きな政府」に、「仕方なく(他の選択肢が無く)」偏向していく様子が連日報道されています。

中でも市場原理主義の最先端であったはずの米国が、いまや各国に先んじて大きな政府への道筋を着々と歩んでいるようです。
(もちろん、現在の段階では、政府が「肩代わりする債務」のボリュームは、対GDP比でわずかですから、共産主義化というのは大げさではありますが)

その結果、予測されることは、財政悪化ですし、したがって将来の増税を見込んだ更なる景気減速の見通しですし、つまるところ一層の「円高(=他の通貨の希薄化)」ですし、その先では、「ドルを基軸通貨にしておいてよいのか」という議論にも発展する可能性があります。

各国の中央銀行は、政策金利を下げる傾向にありますが、どの国の政策金利も「下げ余地」はほとんど無いわけです。
政策金利を1%下げたところで、「それなら資金を調達して運用しよう!」なんて脳天気な人がたくさん現れるとはぜんぜん思いません。
なぜなら、世界中が景気減速しているわけですから、「世界のどこに行ってもモノやサービスが売れない」わけで、「どれほど資金コストが安くても」、資金調達の必要が無いということになります。
現在の状況で、資本コストが安くなることによって資金調達したがるのは、運用目的ではなく、債務返済に苦しむ人や企業ということになりますから、「底上げ」には少々効果があったとしても、景気浮揚の効果はほとんど無いといって過言ではないでしょう。

この状況の中で、一つ気がついたことがあります。
景気後退を、政策金利や財政出動で解決できるは、「ある個別の国の経済状態だけが他国に比べ悪い場合」だ、ということです。

たとえば90年代の日本、ブラジル、ロシア、韓国・・・

過去の「ある個別の国」の景気悪化とその対策には、政策金利、財政出動が確かに効果を表しましたが、それは、「他の元気な国がモノやサービスを買ってくれる」状況にあったり、「他の元気な国が元気の無い国の事業に積極的に投資した」結果に過ぎないのだと思います。

現在のように、世界全体の元気がなくなっている状況では、その効用が限定されるでしょう。

このところのエッセイで何度か書いていることですが、今起こっている世界的な景気後退は、循環的(というか自然に起こる)景気の上げ下げといった現象ではなく・・・

世界のビジネスモデルの崩壊」です。

資源国が資源を売り、生産国が商品を生産し、(主に)米国がそれを赤字垂れ流しで買いまくる。
儲けた資源国や生産国は、その資金を米国債や米国の企業に投資することによって資金が循環する。
そんな継続不能なビジネスモデルを、少しでも継続しようと、「もともと無いお金」を「信用」という名の下にどんどん使わせる・・・

そんなインチキビジネスモデルが崩壊し、世界経済がダメージを受けたわけですから、政策金利を1%程度下げたところで、GDP比数パーセントのバラマキを行ったところで、解決するわけありません。

解決しないどころか、大きな政府による根源的な問題の方がむしろ大きいのではないかと思います。

それは、大きな政府に偏向することによる「競争原理の衰退」です。

競争があるからこそ、成長があるわけです。
「どうせ政府が肩代わりしてくれるさ」では、競争は生まれません。

世界経済が長期にわたって停滞することになると思います。
メディアや識者が伝える以上に、長期にわたり世界の経済は悪くなっていくと、少なくとも僕は予測しています。

今必要なことは、世界のビジネスモデルを、各国が連携して「再構築」することです。
なのに、残念なことに、G20などでも、「これまでのビジネスモデルを前提にした議論」しか行われていません。

それじゃ解決不能だと思います。

今、日本国が、自らの国と世界に対してできることがたくさんあると思います。
けれど、政治は「内輪もめ」ばかりですよね。
政治が内輪もめばかりしているのは、有権者が「おらが村」のことばかり考えているからではないでしょうか。

有権者が、もっと世界に目を向け、世界の中の日本、という現実のポジションを理解する必要があると思います。

いっそのこと、「世界の基軸通貨をYENにしよう!」とか、少なくとも現段階では「ばかげたこと」でも、言ってみるのはいかがでしょうか。

YENを担保するのは、資源でもなければ、購買力でもなければ、軍事力でもなく、まさに「世界経済」です。
日本経済が、世界各国からの資源の輸入と、世界各国への商品の輸出をベースにしているからこそ、「世界と通じている経済」=「世界経済を反映している経済」といえると思います。
だからこそ、基軸通貨に相応しいと冗談抜きに思います。
(↑ 実現性はかなり低いですけれど)

日本国においては、「円高になると全滅」というビジネスモデルを再構築する必要があります。
金融サービスの世界展開など、「円高になれば、輸出製造業の収益性は悪くなるが、一方で、金融サービスが儲かる」といった、いわゆる「国家としての事業ポートフォリオ」を再構築する必要があるのではないでしょうか。
お金のバラマキによって大きな政府になるぐらいなら、大きな政府として「国家戦略」を是非打ち立てていただきたい、と思うわけです。

今の政治には無理?

だよね。

2008年11月26日 板倉雄一郎

PS:
今週末は、僕の友人11名と共に河口湖の豪華別荘にて「合宿議論大会」を行いました。
富裕層を顧客に持つ企業の経営者、
(うまく売り抜け、めずらしく凹んでいない)不動産投資会社、
飲食など生活必需分野のベンチャー企業経営者、
大手商社勤務の方などなど。

楽しかったし、勉強にもなりました。

こういう活動は、いずれエッセイなどの栄養になると思います。

 





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