実施すれば年間数兆円に上るバラマキ予算を必要とする子育て支援策ですが、その原資について、やれ予算の見直しによってひねり出すとか、国債発行によって調達するとか言われていますが、そもそもプライマリーバランスがマイナスの状態では、他の予算を削って子育て支援の原資をひねり出したところで、やはり国債発行による調達であることに変わりがありません。
国債発行による原資の調達であることだけを取り上げて、「けしからんことだ」と結論付けるつもりはありません。
「もしかしたら」、そのバラマキが直ちに消費に向かい、経済を浮揚させる効果がある「かもしれない」ですから、バラマキによる経済効果の方が、国債残高増加による将来の税負担を上回る可能性があるかも知れないわけですし・・・
(ちなみに僕は、そんな経済効果は生まれないと「予測」しますが、予測の範囲でしかありません)
しかし本当に必要な議論は、そんな「あてにならない」マクロ経済予測なんかより・・・
「どうして政府が子育ての支援に首を突っ込む羽目になったのか」
を考えることだと思います。
それを考え、分析した上で、効果的な対策を実施するべきだと思うわけです。
国債発行による資金調達⇒子育て支援という名のバラマキ、というスキームをルックスルーすれば・・・
ジーさんバーさんの、『当人としては将来使う当てのないお金』、によって、本人の意思による直接の国債購入、または、そのお金を預金している市中銀行や郵貯、そして年金などを経由した間接的な国債購入が、国債の原資ですから、この部分をルックスルーすれば、「国債はジーさんバーさんが買っている」ということになるわけです。
そうやって調達したお金が、政府によって、子育てする家庭にばら撒かれる。
しかも、調達には資本コスト(←つまり国債利率・・・この場合は利回りではなく実際に支払われる金利であるところの利率です)が必要になります。
つまり、子育て支援に関するお金の流れをルックスルーすれば・・・
「自分たちの子孫を反映させるために必要なお金を、政府を経由して、子孫に対して『有利子で』貸し付けること」
を意味するわけです。
これ、違和感感じませんか?
ジーさんバーさんが、直接、自分たちの子孫に、「使うあてのないお金」をプレゼントすればいいことじゃないですか。
何も政府を経由して、金利まで頂きながら、バラマく類のことじゃないでしょ!
と僕は思います。
「それでは、(家系内の資産継承によって)裕福な家系だけが益々裕福になり格差が広がる」、という意見もあろうかと思いますが、お金をプレゼントされた子孫は、少なくともジーさんバーさんより消費意欲があるわけですから、ジーさんバーさんの懐にあるより遥かに経済を浮揚させる効果(←つまり国債残高増加を伴わないバラマキ効果)があるはずです。
そもそもお金を使うあてのないジーさんバーさんに、わざわざ子孫からの「金利」を支払う意味なんて全く無い!と僕は思います。
かといって、国債利率をゼロにするわけにはいかない。
じゃーどーするか。
これ、10年ほど前から、講演のたび、執筆のたびに毎度表現していることですが・・・
「期間限定で、生前相続を無税にし、その期間を過ぎた後の生前もしくは死後の相続には100%に近い相続税を課す」
これで万事解決なんですよ。
そりゃザイムショーが、将来の相続税収を国債費に充てる魂胆であることぐらい承知しています。
けれど、世代間で政府を経由せず直接お金が引き渡されれば、今後の国債発行は抑制できるわけですから、同じです。
ジーさんバーさんの今後の生活費なら、相続を受けた子孫が負担すればよいことです。
相続を受けた子孫は、少なくとも現在よりは消費を行うことになるでしょう。
いずれの場合も、間違いなく経済効果があります。
その上、国債残高の増加、および、将来のインフレ時における国債費(主に支払利息)増加を抑制することができます。
さらに、相続されたお金が、子育て世代によって消費されれば、直接相続を受けた家族以外にも波及し、「よし!結婚して子供作ろう!」と思う人も増えるでしょう。
そういった効果は、雇用の促進にもなるわけです。
誰がなんと言おうと、この国の経済の問題は、消費意欲の少ないジーさんバーさんにお金が偏っていることです。
人口ピラミッドが高齢者に偏っているといった「頭数の問題」より、お金が高齢者に偏っているという「資産バランスの問題」の方が、実際には重大な問題です。
それが元凶です。
それが元凶であるなら、それを直接是正すればよいのではないでしょうか。
わざわざ政府が間に入って・・・
ダムがどうした、
道路がどうした、
空港がどうした、
郵政がどうした、
天下りがどうした、
なんていう部分的な配分の取り合いなんて議論をしている暇があったら、上記のような抜本的な改革をすべきです。
自民党から民主党に政権が交代しても、ぶっちゃけ、「配分の矛先が少々変更されるだけ」です。
抜本的な解決には成り得ません。
生前相続税の期間限定無税化、
および、
自給率アップヴィジョン、
この二つが、今この国に最も必要な改革です。
2009年10月9日 板倉雄一郎
PS:
明日、実践・企業価値評価シリーズ1日セミナーの募集を開始します。
次回はもう無いかも知れません。
ご興味のある方は、是非、この機会に!