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ITAKURA’s EYE 「スゴイ奴パート1」

読者の皆様もご承知のことと思いますが、僕は滅多に他人のことを「すげえ!」と無条件に賞賛することはありません。
その理由は、「お墨付き」を与えてしまうことによる責任みたいなものを感じることが原因でもありますし、そもそもイチイチ細かいところで気に入らない部分が見えてしまうという自分の性格が原因でもあります。
そんな良く言えば敏感で繊細な部分も、このところは「ウザイ性格の一部」だと思うようになりました。

そこで今後、自分とは比べ物にならないほど、「スゴイ奴」、をシリーズとして、思いついたときに書き綴りたいと思います。

初回の今回は、「お食事会のスゴイ奴」です(笑)・・・

彼の年齢は、僕とほぼ同じ。
投資会社に勤めるサラリーマン。
顔は、(彼には大変失礼ですが)、ブサイクではないけれど、特にイケメンというわけでもありません。
フツーのメガネをかけていて、いつも特に特徴の無いスーツ姿。

この彼を、古くからの友人に紹介されたのは、ほんの一ヶ月ほど前のことです。

「板倉さん、元気のいい40代を紹介しますよ」

そんな一言に、大して期待していなかったというか、

「どうせ、押し出しの強い、いやな感じの奴なんだろう」

などと思いながら、誘われるがままにスゴイ彼の主催するお食事会に出かけて行きました。

彼のセットするお食事会は、彼がパーティーなどで、「ほんの数十秒の会話だけで誘った女の子」の場合がほとんど。
出会ってからこれまでに、3回ほどのお食事会をセットいただきました。

お食事会での彼の会話は、それを口語文章に落とし込めば、お世辞にも「面白い!」と思うような内容ではありませんが、彼が何かを話し、彼自ら自分でそれにウケて軽く笑うことを通じて得られるその場の雰囲気は、どういうわけか和やかさをかもしだします。

そして、まるで「押し出し」を感じません。
特に、「俺の場合は、~なんだよね!」と、自らのプレゼンスを積極的に高めようとする他のメンツの前では、彼のもつ独特の「和やかさ」はなお印象的です。

彼は、お食事会の席で、
女性の隣の席を他のメンバーに積極的に譲ります。
他のメンバーにいじられても、笑いながら上手にノルります。
個別の女性との会話にのめりこむことも、ほとんどありません。
とにかく、自分のプレゼンスをまるで訴えようとしません。

しかし!

毎回必ず、「お持ち帰り⇒・・・」という成果を挙げています(笑)

お食事会が終わり、飲食店から路上に出たところが、それぞれの「(その日の)人間模様」を観察するにもってこいの場なのですが、別れ際の皆での会話の中でも、参加した女性が、彼女の方から彼にわずかに擦り寄り、彼の顔を見上げる姿は、まるでその女性が以前から彼の彼女であるかのようにさえ感じます。
もちろん、彼とその女性は、このお食事会が初対面です。
彼女の彼への擦り寄り方は、「今日はこの男をゲットよ!」といった感じではなく、「なんとなく感じのいい人ね」といった感じで、おそらくは彼女たちも、彼女たち自身の行動に気がついていないのではないか、という微妙な自然さを感じます。

その瞬間、僕は軽い嫉妬を感じるとともに、その女性を口説こうとする意欲を失い、そして、「彼の女性を惹き寄せる魅力はどこから来るのだろう?」と、お食事会の目的も忘れ、帰りの移動中、考え込んでしまうほどです。

先日のお食事会でも、そんな印象を受けたので、僕はさっさと「負け犬」として帰宅しましたが、後に聞いた話によると、その後、残ったメンバーで都内の「とあるプール付きの飲食店」での2次会にて、皆で水着になって楽しい時間を過ごしたそうです(笑・・・めげてないで行けばよかった)
初対面の女性を水着にさせるその雰囲気・・・昔の僕(「懲りないくん」時代)なら実際にそういう経験はありますが、やはり老いたのでしょうか、それとも、老いたと勝手に思い込んでいるのでしょうか・・・

彼にどれほどの収入があるか僕は知りません。
けれど、明らかなことは、一切経済力をアピールすることはありません。
(しかしお金の使い方は非常に上手です)
車も車種は知りませんが、トヨタ製のおそらくはセダンでしょう。つまり、フツーの車です。
住居も詳しくは知りませんが、ヒルズやタウンなどの「俺様はここで暮らしているんだぞ!」といった場所ではないようです。
知識をひけらかすこともありません。
他のメンバーに対する自らの優位性をアピールすることもありません。
男として当然の「スケベさ」を隠すこともしませんが、見るからに「エロい」という感じでもありません。
決して上品ではありませんが、少なくとも下品ではありません。
毎回女性をセットする幹事を務めますが、見返り(逆に招待されること)を求めません。
お食事会で、他人の発言に注意を施すこともありません。
(ただし、明らかに自分が不利になるような発言については、かなり厳しく指摘するところはあります(笑))

僕は、彼の魅力を言葉で表現するには至っていません。
彼の魅力の本質をまだ掴みきれていないからです。

お食事会での「成果」のために・・・

必要以上に体を鍛え、
自慢できるほどの住居を構え、
(時にそれをアピールするためのパーティーを自宅で開き)
これみよがしの車に乗り、
イタリア製の高級ブランドスーツに身を固め、
(さもなければ、カジュアルでも相当に高価なブランド品で身を固め)
会話の節々に「自慢話」を交え・・・
まるで、求愛のときにやたらと派手な色彩の羽に身を包み、やたらと派手な踊りをメスの前で披露する鳥類(←居ますよねそういう鳥)のような男。
それって、全くイケテナイということを、彼の態度と成果は、如実に示しています。

 

さて、以上のスゴイ奴の分析は、僕をして、「お食事会での成果」以上に、「ビジネスにおいても通用する示唆」を与えられるような気がします。

僕の中にも、「これほどの知識と能力を持っているのだから、もっと稼げてもいいはずなのに」という思いが全く無いわけではありません。
そんな思いに囚われると・・・

「いったい何が自分に足りないんだ!?」

という思考に突入することがあります。

しかし、本当は、「何かが足りない」のではなく、「(知識や経験や能力の)使い方に問題がある」のだと、彼のスゴサを分析する過程で気がつきつつあります。

あれもこれもつぎ込んだハイテクカーより、余計なものを排除し、しかし、一点の個性を打ち出したロータスのような車の方が、実は魅力的です。

ソフトウェアコードと開発費がどんどん膨大になりつつあるシミュレーションゲームやロールプレイングゲームより、その場で楽しめるNINTENDOのWiiやDSの方が市場を奪っています。

どんどん複雑化する社会の中で、「自分はこれだけあればいい」という生き方に魅力を感じます。

 

足りないものを探すことより、余計なものを排除すること、
万能であることより、自ら求めることに忠実であること、
スペックで気を惹くより、相手の心に突き刺さるたった一つの何かを持つこと、
つまり、自然体で居ることの大切さ、を彼の言動から再認識させられました。

そう思うと、今の僕は、なにやら面倒なツールに囲まれながら生きているなぁと反省させられます。
事業においても、私生活においても。

これじゃだめ。

自分も疲れるし、他人も疲れさせる。

やっぱりお食事会で得ることはたくさんある(笑・・・というのが本日の結論でした)

2008年9月12日 板倉雄一郎





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