板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「グル!?」

会計監査を行う監査法人の収入は、監査対象企業からの監査報酬です。
会計監査を必要としている投資家が(少なくとも直接的には)監査報酬を支払うわけではありませんし、資本市場の透明性がビジネスの基盤である証券取引所が監査報酬を支払うわけではありません。
どちらかというと監査「されたくない」側が監査報酬を直接支払っています。

視聴率を測定~公表するビデオリサーチ社の株主リストには、民法キー局や大手広告代理店が並びます。
視聴率を必要としている広告主が視聴率を測定しているわけではなく、視聴率が高いことが収益に結びつく企業が視聴率の測定~公表を行っています。

このように、データを分析~公表する側の「モラル」だけがデータの信憑性を裏付ける仕組みは、書き出したらキリが無いほど、たくさんあります。

最近の例では、いわゆる「信用格付け機関」があります。
ご存知の通り、信用格付けを分析~公表するS&P、ムーディーズなどの格付け機関の収入は、これまた、格付けを「してもらう」企業から得ています。
そんな構造なのに、機関投資家は、彼らの公表するAAAだとかの格付けを担保として、投資を行ってきました。
その結果は、皆さんがご存知の通りです。
金融危機を招いた「かなり大きな原因」であることは、疑いの余地がありません。

 

アメリカに「Consumer Reports」という雑誌があります。
自動車、家電製品から食品に至るまで、数ある消費者向け商品の評価を行い発表する雑誌です。
この雑誌の収益は、「すべて」消費者である読者から得ています。
商品を提供する側の企業広告は一切ありません。

「誰の評価を信頼すべきか」

これを考えるとき、「あんた誰からお金もらって食ってるの?」というビジネスモデルから、「評価者を評価する」という思考、大切だと思います。

もちろん、評価者が評価対象者から収益を得るモデルの場合の「すべてがインチキだ」と言うつもりはありません。
しかし、手厳しい表現を避けるバイアスには成り得ます。
評価する側のモラルが欠ければ、インチキに成り得る「可能性」を、少なくともビジネスモデル上では否定できません。
評価する側のモラルが維持されていたとしても、表現上でのバイアス(たとえば、やんわり否定するなど)は十分にありえます。

証券会社による格付けにおける、「本当の意味」を、あくまでジョークとして・・・

Buy・・・まあ、持っていても損は無いかもしれない。
Hold・・・こんなクソ株さっさと売ってしまえ。
Sell・・・???

と読み取るべきだという話は、プロの中からたくさん聞こえてきます。

ではなぜ、上記のConsumer Reportsのような「極めて合理的なビジネスモデル」より、「グルの可能性を否定できないビジネスモデル」の方が、圧倒的に多いのでしょうか。

簡単に言えば「本質的な損得」より「目の前のキャッシュフロー」にばかり気を取られるからだと思います。

広告主は、自らの大切な資金を効率よく使うために、広告主自らが広告効果測定を行うべきだと思いますが、それをやろうとすると、広告主がお金を『直接』支払わなければなりません。
Consumer Reportsによる評価を手に入れたければ、彼らには広告収入が無い分、読者は比較的高額の雑誌を買うことになります。
投資家は、「一見」ただで手に入る格付け情報があるのに、わざわざ自腹で調査しようとは思わない傾向があります。

しかし、以上は、「直接の支払」のある/なし、に過ぎず、結局はそのコストを評価結果を欲しがる者が間接的に負担しているわけです。
視聴率の調査コストは、広告料に含まれて居ますし、
監査費用は、結局のところ当該企業の株主が負担しているわけです。

そもそも負担しているコストの「支払先」を、合理的な支払先に変更するだけで、以上の構造的な問題が解決するというのに。

世の中、「目先の金」にばかり気を取られる人が「大多数」である以上、「グル・ビジネスは美味しい!」ってことが続くのだと思います。

しかし、そんな仕組みは、世の中に「本当に良いモノやサービス」を残し、そうでない者を排除する力を失ってしまう可能性が高いと思います。

2009年2月6日 板倉雄一郎

PS:
そういえば、TOYOTA iQは、2008年カーオブザ嫌ぁ~~~ですね(笑)

その後、千葉トヨタ側から提示された「買い取り金額」を見て、愕然としました。
何せ、USSにおける(同じグレードの)オークション価格より遥かに低い金額でしたから。
これはすなわち、「フツーの買取価格」ですし、千葉トヨタにしてみれば、「僕から買い取ってすぐに売っても十分な儲けが出る」ということですし、彼らの儲けの源泉は僕の損失だということです。

商品に対する不満でがっかりしている顧客から、「2度の儲け」を得ようとするんですから、さすがトヨタグループですよね(笑)

断っておきますが、「返品」とは、僕の「意思表現であって、実際のスキームは、単なる「買取」ですから、千葉トヨタと僕がやっていることは、「価格交渉」に過ぎません。

僕から千葉トヨタへの交渉のたたき台は・・・
1、試乗せずに買ったわけだから僕にも責任がある。したがって「少なくとも」およそ20万円ほどになる税など諸経費については、僕が当然負担する。
2、しかし、「少なくとも僕=顧客の価値観」では、とても乗ってられないという商品上の問題であるから、オークション実勢価格以上を提示いただきたい。

こういったことでしたが・・・もうめんどくさくなってきました(笑)

最初から、「無理して」、日本企業の売り上げに貢献!なんてよけーなこと考えずに、Mercedes Smartにしておけばよかったなぁ・・・

 

PS^2:
僕は、たとえば気に入った飲食店情報をこの場で掲載することが時々あります。

たとえば、ITAKURA’s EYE 「ラッキースポット!」にて、お台場のイタリアンリストランテをご紹介しましたが、先日、この店を利用した際、エッセイでのご紹介から一ヶ月間で、店側が把握しているだけで、僕のエッセイによって来店された方が5組ほどいらっしゃったと教えていただきました。
(そのうちお一人だけが、僕宛にお礼のメールを送っていただきました。)
こういうのとてもうれしい。
そして当然、その日も、しっかりクロージングいたしました(笑)
もちろん、僕は、この店から一切のアフェリエイトをいただいていませんし、そもそも、飲食のためのコストは自腹です。

 

PS^3:
なぁ~んて、「僕の評価にはバイアスが無い!」みたいに主張していますが、実は「グル」を喜んでやっている場合があります。
お食事会の席では、「男性が男性を褒めちぎる」わけです。

「彼はねぇ、こんな風にふざけているけれど、実はすげぇ~ビジネスマンなんだよ」とかね。

「ナッシュ均衡」をベースにしたグルグル、めちゃくちゃグル(笑)

 

PS^4:
オリエンタルランド、過去最高益ですね。
これ、「上質のサービス」が利益に結びついた非常によい例ですね。
だって、ディズニーって、「エロい」ですもんね(笑)

不景気による「安・近・短(アンキンタン)現象」によるものだ!と指摘されそうですが、他のアンキンタン遊園地は減収減益ですからね。

やっぱり、大切なのは、バラマキより「エロさ」ですよ。

軽自動車が「比較的」売れています。
「モノ」としての「機能」で考えれば、軽自動車で十分なわけです。
金融危機によってファイナンスが付きづらくなり、将来のキャッシュフローに対する不安が増し、逆資産効果の現在では、「エロさ」の付加価値がなければ、消費者はそれ以上の価格を支払わないと思います。

ホンダが「インサイト」を、「プリウス」を40万円ほど下回る価格で発表しました。
トヨタも次を発表するでしょう。
結局、「ハイブリッドによる低燃費」という「モノ」としての「機能」を訴えるわけですから、価格競争になるだけです。

電気自動車にも「エロさ」を!
そうおもうなぁ~

ハイブリッドや電気自動車って、どこか「わざわざ」、

「僕は新技術の車だぞぉ~!」

ってルックスにしたがるじゃないですか。
あれ、必要なことですかねぇ???





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