板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「元には戻らない」

28日のニューヨークは大幅に値を上げました。
米国の不動産価格も一部地域では下げ幅が縮小しているようです。
本日の東京も、(為替に大きな変動が無い限り)、大幅な上昇が期待できます。

「今が底値なのか!?」

「今日から上昇トレンドなのか!?」

そんなことは僕にはわかりません。
けれどはっきりいえることがあります・・・

もう元には戻らない。

 

2007年から顕在化した米国不動産バブル崩壊は、振り返れば、バブルが崩壊するまで、彼らのインチキローンとデリバティブが作り上げた幻想マネーによって、米国が諸外国からモノやサービスを赤字垂れ流しで買うことができていた「構造」の崩壊と言えます。
決して、単なる周期的な景気の良し悪しによるものではありません。
逆に言えば、この10年ほどの新興国を含めた世界的な景気拡大は、米国の幻想マネーの「おかげで」実現された一時的な成長だったと言えます。

米国だけが「悪さ」をしたのではなく、彼らの「悪さ」に(金融機関ばかりではなく)世界経済が乗っかった結果、世界的なバブルとその崩壊が今目の前に顕在化したわけです。
要するに「世界的なバブル構造」によるものだと言えるでしょう。
もちろん、その構造の中には、日本の異常な低金利もかなり重要な要素として「役立っていた」ことは言うまでもありません。

過去10年ほどの世界的な景気拡大が、以上の「インチキ構造」に依存したバブルであったとすれば、1年や2年で、「元に戻る」なんてことは現実的ではないですし、同じ構造の復活による景気回復であれば、それを受け入れるべきではないと思います。

 

株価は様々な要素によって形成されます。
したがって、もし、今後の景気後退を織り込んだ上でも「売られすぎ」と多くの投資家が判断するのであれば、今後企業業績の下方修正が発表されたとしても、大きく下げることは無いどころか、むしろ上昇する可能性すらあります。

下方修正が発表されても・・・

「あれ?その程度? なら買いだ!」

といった具合ですね。

しかし、実体経済における景気悪化は、今後、徐々に表面化すると思います。
実体経済は、「情報と資金移動と決済」だけに集約される金融とは違い、ヒトの雇用や解雇があり、モノを作ったり運んだりがあり、生産設備を作ったり償却したりがあり、カネを調達したり返済したりがあり、研究開発があり・・・つまり、金融ほど、急加速したり、急減速したり、急旋回したりできるわけではないのです。

「あれ?その程度? なら買いだ!」

のはずが、次の発表でも、さらに悪くなる可能性を否定できません。

2008年が金融パニックの年であるとすれば、2009年は実体経済が本格的に悪化する年になるような気がしてなりません。
少なくとも、「(実体経済が)今が底で、2009年から良くなる」という根拠を見つけることはできません。

でも、後手後手ではあるが各国政府や中央銀行の政策の結果、最悪の事態は、避けられた、ような、気がします。

1929年の世界大恐慌から第二次世界大戦までわずか10年でした。
そんな方向はまっぴらですからね。
「お金儲けの話」の範囲で終わりにしていただきたいと切に願いますし、私たち一人ひとりが、最悪の事態にならないような議決権の行使(=お金の使い方)を行わなければならないのだと思います。

2008年10月29日 板倉雄一郎

PS:
相当注意して、うがいを密に行っていたのですが、どうやら風邪をこじらせてしまいました。
周囲が言うには、「板倉さんは遊びすぎ!」ってことなのですが・・・うん確かに(笑)
風邪が完治するまで、しばらくおとなしくしていようと思います。
思うだけなのかもしれませんけれど(笑)





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