板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「米ドルのダイリューション」

AIGに対する公的資金の注入(=実質国有化と資産売却)、
RTC(アメリカ版)整理回収機構による金融機関の救済(の準備)、
各国中央銀行によるドルのインターバンク市場への供給、
などなど、米をはじめとする各国の政府、中央銀行は、「ドル支え」に様々な政策を打ち出しています。

短期相場では、上記の対策を好感し、株価上昇(債権下落=金利上昇)となっていますが、これまた「超短期的」な混乱の中の一つの現象に過ぎない、と僕は思います。

上記の様々な政策に共通する本質とは・・・

「ドルのバラマキ」ですし、その結果として、「1ドル辺りの価値下落」です。
すなわち「ドルのダイリューション(希薄化)」ということになります。

その一つの表れが、「金(ゴールド)」価格の上昇に現れています。

もちろん、これらの政策によって、米経済が「ドルのダイリューション以上の成長が見込まれる」と市場が認識すれば、1ドル辺りの価値が下落することはありませんが、そんな楽観的な見込みをする市場参加者が多いとは、少なくとも僕は思いません。

したがって、中期的(3年以内)には、ドルの価値は下落傾向と思います。
(短期的、特に超短期的なことは、僕にはさっぱりわかりませんけれど(笑))

考えられることは、ドルベースでの米国企業の株価は(これまでに比べ)ある程度維持される可能性がありますが、米国以外から(為替をオフセットした)米国企業の株価は、下落傾向になるのではないでしょうか。

 

相場全体についていえることは・・・

米発の「金融危機」という表現をよく見聞きしますが、本当は、米発不動産バブル崩壊ですから、現在の金融機関の財務状態とは、「その結果(因果を探れば、金融機関の無節操な住宅融資が原因ともいえますが)」ですから、米の住宅価格の動向(住宅着工件数、在庫増減など)を注意深く観察することが最も重要だと思います。
ただし、住宅を購入する上では、一般的に金融機関からの融資を受けなければならないですから、同時に金融機関の財務状態も観察する必要があります。
まさに、金融機関と、住宅価格の「鶏と卵」状態ですね。
(僕ら日本人が踏んだ轍ですよね)

現在の世界的な経済混乱の中で、米を置き去りにアジアや新興国の「内需」が伸びるのか、それとも世界全体がしばらく混沌とするのか、それとも「やっぱり強いアメリカ」が復活するのか、そういったマクロ経済の予測も結構大切ですが・・・

今こそ、「個別企業」への投資の「準備」をする時期だと思います。
仮に、米国に登記され、米国の証券市場に上場している企業であったとしても、その顧客が全世界にあり、付加価値(←すなわち労働力による価値創造)の大きな商品を提供している企業であれば、ドル相場の下落を打ち消し、十分な株主価値の増大を実現できるでしょうし、また、現在の金融危機のおかげで、その個別企業の株主価値の下落以上に株価が下落している企業、すなわち「価値 >> 価格」の状態の企業も出てくるでしょうから、一つ一つの企業の分析をしっかり行うには良い時期だと思います。

米国企業に限らず、個別企業の今後を予測するために最も重要なことは・・・

1、どこから原材料を調達し、
2、どれほど(商品に対する)付加価値を創造し、
3、どこに主な商品マーケットを持ち(または、持とうと先行投資をし)、
っているか、だと思います。

たとえば、比較的元気の良いいわゆる資源国から原材料を調達し、リセッションしている米に対して売る、なんていう企業は(どの国に登記され、どの国の資本市場に上場していたとしても)いただけない、といったことです。

「これはいい!」を見つけたとしても、今すぐに手を出すことには消極的にならざるを得ないですけれど。

2008年9月19日 板倉雄一郎

PS:
「自分勝手4連休」なので、22日月曜日のエッセイは(よほどのことが無い限り)お休みします。
せっかくの連休ですが、台風の影響が心配ですよね。
どうやら規模が小さい台風なので、近づいて急に雨風強くなるようです。
十分注意してください。





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