板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「PKOじゃ救えない」

<円安傾向>

先週辺りから「円安」傾向です。
主な原因は、「貿易赤字」と考えられます。
世界的な景気後退により輸出が減少し、その一方で「円高還元セール!」なる消費が進み、結果として貿易赤字となっているわけです。

貿易赤字とは、通貨通用面で見れば、「(輸入による)外貨の流出が、(輸出による)外貨流入より大きい」ということですから、「円を売ってドル(など)を買い、海外への支払に充てる」ということで、円安傾向となります。
加えて、輸出が減少するということは、輸出によって稼いだ外貨を、国内への支払に充てるために円転する(円を買う)という行為が減少しますから、これもまた円安傾向の原因となります。

輸入の減少幅より輸出の減少幅の方が大きいということから見て、資源、エネルギー、食糧などを「海外から買ってこなければ生きていけない日本の姿」が浮き彫りになったように思います。

日本国全体を企業にたとえ、資源輸入⇒国内での付加価値増⇒輸出、というスキームだけが輸入の理由であるならば、輸入は単なる「原材料費」という「変動費」ですから、「継続性」という意味では大きな問題ではありません。
しかし、生きていくための「固定費」についても、国内では賄えないわが国の経済モデルでは、貿易赤字は、長期的に見えて由々しき問題だといわざるを得ません。

とはいえ、円安が進行し、アメリカをはじめとする「輸出先の経済が持ち直せば」輸出増となりますから、いずれは均衡する可能性はあります。
問題は、いつ頃までに、世界的に、「緩やかな成長の持続性」が見えてくるかという点になります。

これ、世界的に、「政府頼み」ですから、全く読めません。

輸出が落ち込んでいる原因は、「円高によって日本製の価格競争力が落ちた」ということではなく、輸出先国の景気悪化です。
したがって、「円安になれば輸出企業が儲かる」なんて短絡的な円安メリットは期待薄です。。
海外にモノやサービスが売れない(輸出落ち込み)状況での円安は、まずいわけです。

<PKO>

日本政府が、PKO(=Price Keeping Operation)を検討しているそうです。
総額20兆円!

その額のもたらす株式市場へのインパクトは、「結構でかい!」と思います。
この、「国民による自社株買い」とも言える策は、3月末危機(←金融機関の保有する株式の時価下落により、金融機関のバランスシートが痛み、更なる貸し渋りに至る可能性)を回避することが最も大きな目的だと思われますが、これこそ、Making Numbers政策であって、その効果は、「一時的」だと思います。

株価とは本来、株価を担保する企業業績(←詳しくはキャッシュフロー予測)があり、その上で市場が株価が形成する・・・これが本来の株価であって、株価を担保する企業業績に対する市場の予測が悲観的であるにも関わらず、「株価を無理やり押し上げる」ことは、株主が民間から国民に移転する期間の一時的な株価押し上げになるだけで・・・「国民による自社株買い」は、「高値掴み」になる可能性を否定できません。

また報道によると、実際のオペレーションは、ETFを買うらしいのですが、それこそ「十羽一からげ」で、お先真っ暗な企業の株価も、先行き明るく積極経営を行っている企業の株価も、どっちも上昇させてしまうわけですから問題です。
ダメダメ企業の株を買う分を無駄にするなら、その分をイケテル企業へ回した方が絶対にいい。
「選択と集中(=破綻すべき企業は破綻するべき)」が求められると思うのですが。

PKOより、その価格を担保する企業業績・・・すなわち実体経済の浮揚策に使うべき20兆円だと思います。
(もちろん、PKOが実体経済にもたらす影響が全く無い、と言っているわけではありません。効果の程が、額から予測するより少ないのではないかという意見です。)

未だ、「これぞドンぴしゃ!ROIが極めて高い!国民が元気になる!」と思えるような政策にはお目にかかれていません。

2009年2月25日 板倉雄一郎

PS:
このところ、不景気型のビジネスモデルが持ち込まれることが多くなりました。
僕は、ちょこちょこ、これらのベンチャーに対して個人資金を投資していますが、その投資判断は・・・

1、設備投資の少ないビジネスモデル≒サービス業
(もはや、「生産」では稼げない時代ですから)
2、1とかぶりますが、「機能」を売るのではなく、「心の満足」を売るビジネスモデル
(任天堂とかディズニーとかレジャーとか、まだまだ売れていますからね)
3、客単価を小さく、客数で稼ぐビジネスモデル
(いうまでもなく、お財布の紐、固いですから)
4、そして、「女性」を顧客にするビジネスモデル
(女性だけじゃなくてもOKですが、女性の心をくすぐる小額の商品がいける!と勝手に思っています)

先日、「おお!これいいぞぉ!」と思えるビジネスモデルが持ち込まれました。
女性向けのサービス業で、経営者もスタッフも「女性」。
もちろん、このビジネスモデルを持ち込んできたのも女性。

これ、やりたい。

PS^2:
おりこうさん おばかさんのお金の使い方』が文庫化されることになりました。
3月までに加筆修正しなくっちゃ。
(あんまりお金にはならないですけどね)

PS^3:
若者よ、仕事が無いなら、自分で起業しろ!

これ、今、一番伝えたいことですが、自分で始める奴は、放っておいてもやりますからね。

最近は、特に若い女性が元気な感じがします。

今、政府や、社会や、企業に対して、「くれくれ」言っている馬鹿者は、景気が浮揚しても置いてきぼりになることがわからないのですかねぇ・・・





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