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ITAKURA’s EYE 「高速道路料金に関する間抜けな議論」

この件、過去のエッセイでも書いたことが(確か)あります。
また、高速道路料金を、「無料化すべきだ!」とも、「するべきではない!」とも、主張するつもりはありません。
(国家全体を見れば、以下に述べる理由により無料化すべきだという立場ですが、個人としては、無料化によって渋滞が増えるの嫌ですから、どっちでもないわけです。)
ここで主張したいことは・・・

「ルックスルーしていない間抜けな議論はさっさと止めるべし!」

ということです。

 

高速道路料金無料化について、

「受益者負担(=料金徴収)から、国民全体への負担(=税による負担)だ」

といった、「一見真っ当な意見」を、良く見聞きします。

けれど、
(その程度は別にして)、高速道路の「受益者」とは、「現時点でも」国民全体であり、
現時点でも、高速道路料金の「結構大きな割合」は、国民全体で負担しているのです。

なぜなら・・・

日本の物流の90%以上は、トラック輸送によるものです。
そのトラック輸送には、高速道路利用が間違いなくあります。

「街中でのトラック輸送には高速道路料金がかかっていない」

なんて話も、ルックスルーできていない間抜けな意見です。
街中の輸送「までの過程で」、そのモノ(または、そのモノを構成する部品などの一部)は、ほぼ間違いなく高速道路を利用しています。

この場合、高速道路料金を「直接」負担するのは、運送会社ということになりますが、このコストは、「当然ながら」、運送コストに上乗せされることになります。
その運送コストは、運送を依頼する企業が「直接」支払うことになりますが、そのコストは、回りまわって最終的な消費財の価格に含まれているわけです。

したがって、高速道路料金を無料化しようがしなかろうが、「料金の徴収ルートが異なるだけで」、結局は国民全体が負担していることに変わりが無いのです。

だったら!

ETCによるデメリット・・・ETCによる事故、ETCを設置するコスト、ETCを運用する天下り団体の利益などなどを排除し、その分浮いたコストによって、現在よりたくさんの「高速出入り口」を作ればよいですし、出入り口が多くなれば、これまた「天下り団体の収益源となっているサービスエリア」なんていう利権の塊のサファリパークみたいな施設より、フツーに出口から出て、フツーの町にある飲食店を利用するようになるから地方活性化のためにももってこいなのです。

(↑ ああやっぱり無料化推進派ですね僕は(笑・・・ただ渋滞がひどくなるのはごめんです。))

現在のような、「1000円乗り放題」に喜ぶ馬鹿者が如何に馬鹿者であるかは、すなわち、「きっついスキーブーツを脱いだときの開放感に喜ぶこと」と同なわけです。

「高速道路を無料化すると、現在の高速道路料金収入である年間〇兆円を税で負担しなければならない」なんていう、至極間抜けな主張を聞くたびに、

「こいつまるでアホか、または、天下り団体の手先か」

と思う次第です。

高速道路料金を無料化すれば、その分、物流コストが削減され、回りまわって国民全体のコストが抑えられるわけです。

つまり、高速道路に関するお金の流れをルックスルーして、すべてまとめて表現すれば、

「高速道路料金無料化とは、高速道路料金を徴収するための組織への配分を減らし、その分国民の負担を軽くすることになる」

わけです。

本質的には、「ただそれだけの選択」に過ぎないわけです。
ぜんぜんややこしくないのです。

(つまり、天下り組みの排除になるわけです。職を失うそいつらには、生きるためのぎりぎり定額給付でもやってやればいいわけです(笑))

 

高速道路料金に限った話ではありません。
皆の頭の中が、「会計基準」によってできていて、「キャッシュフロー」で考える「癖」が無いからこういう間抜けな議論がまかり通るんですよね。

「キャッシュフローをルックスルーする」

これができずに、経済を語ることはできませんし、したがって真っ当な政治を行うことはできません。

 

2009年5月17日 板倉雄一郎

PS:
政治家の思考能力を確認するうえでも、その政治家の「キャッシュフローをルックスルーする力」を見極めるようにするといいですよ。
一見真っ当な意見をしていると思っていた政治家が、「実はアホ!?」って気がつくことが多々あると思います。





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