板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「今か未来か」

投資とは、今のキャッシュを差し出す代わりに、将来のキャッシュフローを手に入れる行為である、ことは過去にも何度も書いてきました。

「今差し出すキャッシュの価値」 << 「将来のキャッシュフローの現在価値」

であるときに、概念として投資は成功といえるわけです。
この概念を考えるとき、「今の生活が大切なのか、将来のいずれかの時点での生活が大切なのか」、という難題に突き当たります。

この難題は、「継続性」を考えることにより、ある程度解決可能だと思います。

継続性・・・それは、ある事象が未来のどの時点でも継続して「いなければならない」ということだと誤解されることがあります。
もちろん継続性というからには、その事象が未来のどの時点でも継続していることが望ましいのは言うまでもありませんが、結果として、未来のある時点で、その事象が継続しているかどうかは、さほど重要なことではないと僕は考えます。
重要なことは、未来のある時点で、その事象が継続しているかどうかより、未来の継続性を観測する現在の時点において、回帰的に考えた結果、継続可能である(≒継続性がないとはいえない)ということをもって、「継続性がある」と認識することが大切なのだと思います。

明らかに継続性がないこと・・・

たとえば、ガソリンスタンドが1000kmもはなれたところにしかないときや、ガソリン代を支払うお金がないところで、ガソリン車の運転を続けること。

たとえば、収入が月に100万円しかない人が、月に200万円の支出を続けること。

そういった継続性に明らかな疑問があるとき、仮に「今」が楽しかったとしても、その楽しさに継続性が明らかにない場合、「今」の楽しさには、常に「近い将来続かなくなるぞ」という思いが付きまとうわけですから、「今」の楽しさが半減、いやむしろ、「今」が楽しくないと思うのが自然だろうと思います。
継続性を観測し判定するのは、常に、「今」やることだからです。

つまり、未来の継続性を「今の」条件にすることを含め、やはり「今」が最も大切なのだろうと思います。
継続性が、少なくとも理論的に担保されている今であるからこそ、今を楽しめるのではないでしょうか。

さて、投資の話に戻ります・・・

仮に、投資すべき条件である、

「今差し出すキャッシュの価値」 << 「将来のキャッシュフローの現在価値」

が満たされていたからといって、今あるすべてのキャッシュを差し出すことは、今の生活がおぼつかなくなるわけですから、今がハッピーになる方法ではないですよね。
逆に、上記の条件が満たされていたとした場合に、「今が大切だから」と、一切の投資を行わず、今の消費に回してしまえば、今の欲求が満たされる代わりに、未来の豊かな生活が担保されなくなってしまうというわけです。

どの程度を今消費し、どの程度の未来への投資に配分するか・・・その答えは、投資対象のリスクが如何ほどであるかによって組み立てるポートフォリオを考える前に、純資産のどれほどの部分をリスクにさらすことが、普段の生活を鑑みた上で、「ぐっすり眠れるか」、にあるのと思います。

以上に直接の関係はありませんが、禁煙に取り組んでいる僕にとって、とても興味深い記事がありましたので、ご紹介します。


2010年6月10日 板倉雄一郎


PS:
継続性の評価が、今のハッピーに大きく依存することは、投資や企業活動以外にも、あらゆる分野において当てはまりますよね。

たとえば恋愛においても、相手に対する信頼を失えば、今日や明日は継続できても、数ヵ月後の継続性については疑問を抱かずにはいられないとか^^

継続「するとみなされる」こと、は、今のハッピーにきわめて大切なことだと思います。





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