板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「わかってない人多すぎます」

日経平均が小幅に上がったり下がったりを繰り返しています。

僕は、ぶっちゃけ・・・

「この状況で、よく買う奴が居るものだ」

と思います。

が、出来高を見れば誰でもお分かりの通り、実は「誰も買ってない」わけですよね。
相場を動かしているのは、おそらく、短期筋の「為替にリンクした投機活動」がほとんどで、個人や年金ファンドなど、いわゆる長期投資を前提にした投資家が、「今こそ底値だ買いだぜ!」ってことでロングしているわけではないわけです。
(未だにそれを叫んでいる投資ファンドもありますけれど)

上記の「この状況で」とは、このところのエッセイでも書いているとおり、戦後のアメリカ経済をベースにした世界のビジネスモデルが崩壊し、資本主義に暮らす人類が未だ経験したことの無い変化の中に、私たち(投資家であれ、普通の生活者であれ)が置かれているという状況です。

この状況で、「何年頃から景気が回復する」などの意見をすればするほど、「インチキ」に思えてなりません。

だれにも「この先」は読めないと思います。
(もちろん、結果的に、「誰か」の意見があたる可能性は十分にありますが)

当然ながら、個別企業の将来業績予測についても、「少なくとも僕には」、その予測ができません。
したがって、将来業績予測と資本コストを因数にする企業価値評価も、自信を持って「この株価なら投資しよう!」なんて思える投資家(評価者)は存在しないのだと思います。

と書いてしまうと・・・

「じゃあ、企業価値評価なんて意味無いじゃん!」

って話になりそうですが、ぜんぜんそうは思いません。

企業価値評価の術を持っているからこそ・・・

「先が読めないから投資できない」

という判断を、「自信を持って(笑)」できるというわけです。

待つのも相場ですし、待つべきか行くべきか、を判断するにも価値評価は絶対に必要です。

「どうなるかわからない投資対象」に、大切な資産を投資することほど馬鹿ばかしいことは無いわけです。

 

夜な夜な活動していると、いろんな話を聞きます・・・

「証券会社を買収して、資金を集めて、海外で運用して」、とか、
「財務状態の芳しくない上場企業をいくつか買収して、くっつけて、再上場して」、とか、

そんな「いつかどこかで聞いた話」を、まるで新しいビジネスモデルであるかのようにプレゼンする方の話を聞いていると辟易してしまいます。

「そんな状況じゃない!」

今起こっていることの本質、ことの重大さを、まるで理解していない方が多いと思います。

たとえば、このところ報道されているクレジットカード業界の損失・・・

損失額の予想も莫大ですが、彼らの資金調達手段である債権の証券化も滞っているいるわけです。
クレジットカード・・・これ特にアメリカ人消費者の「最後の砦」です。
彼らは、宅配ピザでも、コンビニでも、スーパーの買い物でも、ひたすらクレジットカードを利用します。
レイオフされて収入が無い状態でも、「しばらくの間」は、クレジットカードで消費を続けることができます。
しかし、これもまた、「最初は金利だけ、数年後から元本の返済してね」というサブプライムローンと同じように、今後じわじわと焦げ付きが顕在化してくるはずです。

つまり、「今が底ではない」とはっきりいえます。

この世界的に極めてやばい状況、わかっていない人が多すぎます。

わかってない人が多すぎることは、非常に問題です。
このやばい状況を理解できている人が多ければ、効果的な対処方法も見つかるだろうし、その対処方法を具現化することも不可能ではありません。
けれど、わかっていない人ばかりで、過去のビジネスモデルの範囲での対処ばかりしているようでは、冗談抜きで世界がデススパイラルに陥ってしまいます。

今はまだ、生活必需などいわゆる「ディフェンシブ」が他の業種に比べ業績悪化の程度が軽微ですし、ゲームなど「家庭内モノ」も、中には業績好調な個別企業もあります。
しかし、明日の収入にすら不安を持つような消費者が増えれば、これらの消費も抑えられることになります。
それが顕在化した頃には、取り返しが付かない状況になっているかもしれません。

今はまさに、「デススパイラルの入り口」に過ぎないと僕は思います。
個別企業の問題なら、僕がここで、「わーわー」騒いだり、場合によっては、直接コンタクトして「わーわー」いうことでも何とか解決できる可能性もあります。
しかし、ことは世界的なことですから、「みんな元気にやろうぜ!」と叫んでもほとんど何の意味もありません。

僕は過去に、「一人が動き出さなくて全体が動くわけが無い」と散々主張してきましたが、そんな時間のかかる方法は、いまや通用しません。

だから、この場で、「皆さんが思っているより、やばい状況なのですよ」と表現し、「わかっている人」を少しでも増やすことしかないのだと思います。

わかっている人が増えれば、「どうすればいいか」という議論が今以上にされるのではないかと思います。

以上の僕の分析が「的外れ」であれば、それはそれで良いことですけれど。。。

2008年11月28日 板倉雄一郎

PS:
母上がのんきに「この株券、電子化だよね。どうすればいいの?」なんて言ってきました(笑)

おいおぉ~~~い、去年の内に僕に言ってよ、さっさと現金化したのに・・・

息子がどんな仕事してるのかわかっていらっしゃらないようで(笑)

ここにも、一人、「わかっていない人」が居たりして。

 





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