板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「世代間格差スパイラル」

世代間格差がこの国の政治・経済の様々な問題の元凶である、と過去のエッセイでも書いてきました。

消費性向の低い高齢者層に経済資産が偏り、消費が落ち込み、円高と相まってデフレーション・スパイラルが継続する。

年金制度が構築された頃に想定していなかった人口ピラミッドが現実になり、若年世代の社会保障負担が増加し、若年層が夢や希望を持つメンタリティーを阻害し、経済活動が停滞する「不安スパイラル」。

社会保障費の増大と経済不況による税収減の結果、国債発行残高は年々増加し、国民の社会保障に対する信頼が崩れ、高齢者の消費性向が増々低下するという「不安スパイラル」を解決できないでいる。

発展的に解釈すれば、金融緩和を行ったところで皆が「溜め込むだけ」なら円高対策にも経済対策にもならない。
(どれほど金利が安くても、そのお金で消費したり投資したりする対象が無ければお金は世間に出回らない。したがって円高&デフレは継続の可能性が高い)

とまあ、世代間格差がこの国の様々な問題の元凶だと僕は思っているわけです。

では、世代間格差がどうして広がったのか。

これは、言うまでもなく、技術や医療の発達に伴って、

「急速に」平均寿命が伸びたから。

なのだと思います。

もし、極めて緩やかに平均寿命が延びる場合や、平均寿命が最初から100歳ぐらいで安定していれば、恐らく今のような世代間格差は生まれなかったでしょう。
あくまで戦後からの数十年の間に「急速に」平均寿命が伸びたことが、世代間格差を広げた原因なのだと僕は思います。

(「平均寿命の推移」については、このワードでググればたくさんグラフを交えた情報が出てきますので、WWII以降の世界が急速に平均寿命をのばしている事実がよくわかると思います。)

これは、日本に限ったことではなく、世界の先進国でも同様ですし、新興国の将来も同様の問題を抱えることになるでしょう。特に「一人っ子政策」をとっている中国の数十年後は、未知の人口ピラミッド問題を解決しなければならなくなるのは必然です。

高齢者の存在が元凶だ!
高齢者を殺せ!

などと言いたいわけではもちろんありません。
以上はあくまで「現状認識」です。
しかし、この現状認識から解決策は生まれるのだと思います。
つまり、世代間格差が様々な問題の元凶であり、世代間格差が生まれる原因は平均寿命の「急速な」伸びにあるのだとすれば、平均寿命が安定するまでの間、平均寿命が急速に延びることによる様々な弊害を打ち消す政策を実施すれば良いのだと思うわけです。

例えば・・・

「3年程に期間を限定した相続税の無税化、および、期間終了後の相続税率の大幅なアップ」

(過去のエッセイでは何度も書いていますので、サイト内検索にて「相続税」というワードで検索いただければ関連するエッセイがたくさん出てきますので参考にされてください。)

つまり、消費性向の低い高齢者から消費性向の「比較的」高い若年層へ資産を移転させるというわけです。

また同時に社会保障の継続性を担保するための「消費税の段階的アップ」

(こちらに付いても過去のエッセイで何度も書いていますので参考にされてください。)

つまり、インフレマインドを政策的に実現し、且つ、税収増を狙うというわけです。
これが現実になれば、高齢者の社会保障に対する不安も薄れ、上記の政策による資産の若年層への移転、および、あらゆる世代の消費性向の上昇につながり・・・というのは発展的過ぎ、予測に基づき過ぎですけれど。

以上の二つをセットで実現するというのが効果的なのだと思います。

スパイラルを解消するためには、スパイラルの原因の原因の原因を突き止め、原因の原因の原因を解決するという手段を踏む「源流対策」でなければ、法律を100本作っても、何兆円バラまいても、そのコスト以上の効果が期待できるとは思えないのです。

2010年10月18日 板倉雄一郎


PS:
「社長失格」電子書籍のリリースは、11月1日~8日の間を予定しています。
何しろアップルによる審査という他人依存スケジュールですので、はっきりしたことはなかなか言えないのです。
すいません。





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