板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「トヨタの価値感」

新型プリウスのブレーキ制御に関する問題に関するトヨタ自動車のアナウンスの一つは、(品質保証担当役員とかの役職の方からだったと思いますが)、

「(ブレーキが一時的に利かなくなるというクレームは)、運転者の『感覚』的なことで、車両の欠陥ではない」

とかなんとか言っています。

(上記の発言部分に関しては、テレビ映像から拾った内容なので、大体そんなことを言っていたということで、文言が一致していない部分もあります。)

 

このアナウンスに、トヨタの価値感が透けて見えると僕は感じます。

この発言、拡大解釈すれば、「ドライブフィールはトヨタの品質保証外である」、とさえ感じられる内容です。

昨年の今頃、僕自身のミスで、試乗もせずに購入したトヨタiQのドライブフィール(および一部機能の不完全さ)が、余りにも酷く、その後のトヨタとの返品交渉(←取引の実態はオークション実勢価格程度での買取要請)において、同じようなことを感じた経験があります。

もちろん、上記の発言は、顧客からのクレームをフィードバックし、最近、制御ソフトウェアの改良を施したということが、リコール隠しではないかとの疑惑に対し、「リコール隠しではない!」、と主張したかったという都合はわからないでもありません。

 

「機能的には問題ありません」と、「機能」だけを商品とする同社の価値観にこそ、

「付加価値による利益創造ではなく、コストダウンによる利益捻出しかできない」

という同社の企業体質の根源ではないかと思います。

とても残念です。

これだから、取引先や従業員がカモな状況が続くわけです。

 

作っている側の価値観が「優れた機能をそこそこの価格で売る」なのですから、トヨタブランドに、「エロさ」、を感じることができないわけですよね。

彼らの以上のような価値観が、彼ら自身の首を絞める結果にならなければよいのですが。

だって、機能と価格だけなら、今後のEVの振興も考慮すれば、いずれ新興国メーカーと同じ土俵で戦わなければならなくなりますからね。

 

せっかくレクサスブランドまで立ち上げたトヨタなのですから、こういうときは・・・

「ブレーキに関するドライブフィールの『明らかな』問題が顧客の多数から報告されたので、これを無償で改良いたします。」

と、リコールではなく、顧客サービスと品「質」保証のために積極的に動く姿勢なんかをアピールした方が良かったのではないかと思います。

 

ブランド価値こそ、企業の大切なアセットでないでしょうか。

だから、コスト増になるとしても、それはブランド価値の対価だと考えるような企業体質が企業価値創造の根源だと思いますけれど。

 

クルマ大好きの僕に言わせれば、

「ドライブフィールが品『質』の一部でないとしたら、クルマって一体ナンなんだ!」

です。

機能だけなら、同じトヨタグループのダイハツで十分なわけですから。

(僕が実家周辺の買い物で使う15年落ちのダイハツ・ミラは、機能としては十分ですし、これまで大きな故障もありませんし、燃費もプリウス並みです。)

 

2010年2月4日 板倉雄一郎

 

PS:

とはいえ、トヨタ車は、車種によっては素晴らしい車種も複数あると思います。
問題は、車種によって、クルマとしての完成度に差があるということろでしょうか。

トヨタにはがんばってもらいたいです。





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