このところの巷では・・・
<俄(にわか)経済評論家の増加>
「」内は巷の発言。()内は僕の胸の内。
「2009年いっぱい景気は悪いけど、2010年には一気に回復するね」
(その根拠は一体なんだよ。)
「いやいや短くとも3年はダメだよ」
(その根拠もなに?)
「GMが救済されれば大丈夫なんだよ」
(GMの延命コストは莫大だよ。そもそもGMのバランスシート見たことあるの?)
「いやいやいや、これからはイスラムが主導する世の中になるね。世界の人口の大部分はイスラムだからね」
(はぁ?(笑))
「オバマになって世界は安定するんだよ」
(はぁ? アメリカの歴史上、ほとんどの戦争は民主党がやってるんだよ。そんなことも知らないでよく言うよ)
「いや、やっぱりアジアだよ。東洋文化に変化するんだよ」
(そうなる時こそ、世界大恐慌だっつーの)
キリが無いのでこの辺で止めますが、巷では「俄経済評論家」が増えています。
そんな評論をする方々のご専門は、少なくともマクロ経済学でもなければ、株式投資でもなければ、政治経済でもなかったりします。
中央銀行のバランスシートの中身すら知らない人だったりします。
ビッグスリーの「スージ」なんて、一度も見たこともないどころか、売上高や利益の「桁」だって知らないわけです。
よくもまぁそんなんで経済の「見通し」を『他人に』語れるものだと、ある意味関心してしまいます。
お食事会の席などで、女の子を前に、そんな感じでホットな話題に精通している演出をする輩を見るにつけ、意地悪な僕はイジメたくなるわけです。(笑)
例えば・・・
「なるほど、ではアメリカ経済は、赤字垂れ流しで世界からお買い物をしているわけだけど、どうしてそれでアメリカは回っていたの?」
「GMのバランスは総額どれほどで、それは米のGDP比でどの程度なの?」
「フレディーマックの公表されている債務はどのぐらいなの?隠れ債務はどの程度だと予測するの?」
当然誰も答えられない。
で、僕が女の子にもわかりやすいように簡単に説明するわけです。
やっとあきらめた輩は、今度は僕の専門について聞いてくる。
もちろん正直に答える。
すると今度は、
「エロトークより、そういう話がいいなぁ、是非教えてくださいよ」
と来る。
で、僕は答える。
「それ僕の仕事だから、聞きたかったらセミナーに来てください。以上。」
これ以上は話さない。
そして、お食事会の場は、再びお食事会らしい話題に戻るわけです。
言論の自由は大切だと思います。
そして、今、経済について学習し、調査し、自分なりの意見を持つことも非常に大切だと思います。
けれど、結局のところ彼らの俄知識は、書籍やメディアが伝える情報の寄せ集めに過ぎず、しかもその情報の解釈に明らかな間違いやスージの規模に関する感覚の無さから多くの意見は的外れだったりします。
僕も、沢山の本や雑誌に目を通します。
自分で買うことはほとんどありませんが、過去に寄稿したり、取材を受けたことのある出版社や、執筆依頼をされる出版社などから、毎月たくさんの新刊や雑誌が送られてくるので、「ザックリですが」それらに目を通しています。
だから、俄経済評論家のそれぞれの意見に対して、
「ああ、あの本を読んで、あの部分を間違って理解しているんだな」とか、
「あの本を読んだんだな。で、初めて聞く概念だからインスパイアされて、頭の中それだけになっちてるんだな」とか、
そんなことが手に取るようにわかります。
僕はこう思います・・・
「自分の意見」とは、情報収集⇒専門知識による分析⇒経験と知識による予測⇒明文化という過程を経て初めて「自分の意見」になるのであって、誰か他人がこれらを行った上で出された見解を寄せ集めることではない。
上記の俄経済評論家の話を聞いていると、そこいらのおばちゃん達の井戸端会議となんら変わらないわけです。
正直、聞いていて、見ていて、恥ずかしい。
その場から帰りたくなるというのが正直なところです。
しかし僕は、その場にとどまります!
なぜなら、カワイイ女の子が隣に居たりするから。(笑)
読者の皆さん(そして僕自身も)、他人の振り見てわが身を正せ。ですよね。
ぶっちゃけ、経済は、それを理解すればするほど、「どうなるかわからない」という結論が一層正しく思うようになるものです。
<大きな政府へまっしぐら>
日銀が総額2兆円ほどのCPの「買い上げ(←満期まで保有=リスクは民間金融機関から日銀へ移転)」を行うことを検討しているという報道がありました。
その程度では、「一息つける」ぐらいでしょう。
アメリカでは、財政出動および中央銀行による債務保証などで、少なくとも対GDP比10%以上のバラマキが行われる見通しです。
大きな政府を好む米民主党にしてみれば「やりたい放題」でしょう。
しかし、確かな情報を掴んでいるわけではありませんが、米の金融機関(たとえば住宅関係)が抱える「隠れ債務」は、公表されている額より遥かに多いらしいです。
そして、住宅価格はまだ下がり続けています。ファイナンスが付かないのですから当たり前です。
対GDP比10%程度のバラマキではどうにもならないでしょう。
ヨーロッパもしかりです。
さてさて、本当にどうなるか、少なくとも僕にはわかりません。
わかることは、世界が大きな政府に「しかたなく」まっしぐらという事実だけです。
それは、政治の意思決定が、経済活動に対してこれまでに無く大きなインパクトを与えるということを意味します。
益々もって、経済の知識だけでは、どうなるかわかりません。
<どれかは当たる>
「2009年の後半には景気は底入れする」とか、
「2012年までは景気後退が続く」とか、
そんな「占い(としかいいようがないですから)」を聞くたびに、「こんなこと言って収入が得られるんだから楽な商売だな」と(笑)
でも、たくさんの意見があるわけですから、いずれ「どれか」は当たるでしょうけどね。
<わからないものはわからない>
「先行きが読めないものは読めない」
この結論も、一つの貴重な結論です。
わかるはずもないことを、先行き読めないものを、無理してわかろうとしたり、読もうとしたりするから、「どうすればいいかわからない」ということになってしまうわけです。
先行きが読めないという結論なら、読めないなりの対応があります。
わからないなら、わからないなりの対応があります。
どんな状況でも、取るべき合理的手段は必ずあるものです。
<じゃあどうすればいいのよ>
いつも書いていることですが、生活のための「固定費」を限りなく小さくするべきです。
しかしそれだけでは、世界経済は益々シュリンクしてしまいますから、固定費を小さくした上で、固定的ではない経費をたくさん使うべきです。
そして起業意欲のある方は、是非この機会に、「これまでにない新たなビジネスモデル(または、不景気だからこそ需要が生まれるビジネスモデル)」に対して、自らの能力と、時間と、資金を投資すべきだです。
(僕は既に始めていますよ)
僕の生活は、「景気が良いときに節約してお金を作り、景気が悪いときにたくわえを放出する」を実践しています。
おかげで、お金の稼ぎも、使い勝手も、非常に効果的です。
(↑ これは来週のエッセイで詳しく書きますし、このテーマの執筆依頼がありますので、気が向けばちゃんと本を出します。)
しかしいずれの景気の局面でも、常に固定費は最小限に抑えています。
これ、精神的余裕を得るためにも、純資産を増やすためにも、(女の子にモテルためにも(笑)、極めて合理的な手段です。
2009年12月16日 板倉雄一郎
PS:
都心の飲食店の業績が極めて悪いです。(もちろん例外もあります。)
上記の僕のやり方とは逆に、収入に占める固定費の割合が多い人が、多すぎるのです。
だから今、固定費を賄うために、外食、旅行、高価な衣類、自動車などへの支出が抑えられているわけです。
人間、ただ生きていればそれでいい、ってわけじゃないと思うんですけどね。
むしろ、ただ寝泊りするだけの場所なんかに(収入に対して)大きな支出をすることの方が、少なくとも僕には不合理に思えてなりません。