G20に即効性や具体性を期待した資本市場関係者はほとんどいなかったでしょうから、G20の結果を受けて、市場に大きなトレンドの変化が生まれることは無いでしょう。
G20で提示された具体策とは、そのほとんどが、「今後同じような金融危機が起こらないための規制強化」であって、「足元の世界的な景気後退を防ぐ即効的な方法」については、これまで各国が行ってきた金融政策&財政政策を積極的に強調して行う、という程度の内容にとどまりました。
当り前ですが、「特効薬は無い」ということになろうかと思います。
今後の「比較的悪いシナリオ」を考えると、各国の「税収不足」が挙げられます。
2008年度の税収は、世界のあらゆる国々で「相当に減少する」でしょう。
企業の利益が減少すれば、直ちに株主価値の毀損になることはいうまでもありませんが、同時に「法人税の減少」を招きます。
現在、世界中のあらゆる国が「公的資金の注入」を行っていますし、G20でも「必要ならもっとやろう!」ということになったようですが、その原資はいうまでもなく各国の税収(または、国債で賄う場合、その原資は将来の税収)です。
一方で、公的資金のバラマキを行いながら、他方で税収が減少するわけですから、「バラマキ効果(←即効的な景気回復)」が現実にならなければ、かなりひどいデススパイラルに陥る可能性が高いといえます。
アメリカ合衆国の「これまでの」ビジネスモデル(?)は、赤字垂れ流しで世界からモノやサービスを購入しても、支払ったドル通貨が、米国債の購入や米国企業への投資によって米国内へ還流することによって、「幻想的な継続性」を見せてきました。
しかし、それを実現できていたのは、日本やサウジアラビア、中国などが稼いだお金を米国債に投資していたから、といえます。
米に限らず、世界各国が、「自国通貨のバラマキ」を行うことになりそうですが、その原資(多くの場合国債)を、今後、一体、誰が、引き受けるのか・・・
読者の皆さんどう思われますか?
景気後退によって、いわゆるイクイティー市場(株式など)からデット市場(国債をはじめとする債券市場)へ資金が移動しているうちは(=移動させる資金があるうちは)、国債価格の暴落も無いでしょうけれど、それさえ枯渇するようなことになれば、安全資産とされる国債であったとしても、「買い手不在」となる可能性を否定できません。
財政状態の悪い国の場合、国債が売られなくとも、為替変動によって(海外から見た場合の当該国の国債の資産価値は)下落することになります。
そうなれば、「バラマキたいが原資が無い」という状態もありえます。
日本の場合、世界的に見ても財政赤字は史上空前の状態です。
しかし一方で、(これは誰も発言しないことですが)、国民の金融資産が1400兆円ほどあるといわれていますから、将来の「相続税」によってある程度カバーが可能だといえます。
また幸いにして、日本国債の場合、「円建て国債」であること、「国債の保有者(=つまり貸し手)」が日本国内にあることによって、過去のアルゼンチンやブラジルのような国家的な危機に至る可能性は低いといえますが、今後発行する国債がきちんと消化できないという事態にでもなれば・・・
「日本の皆さん、みんなで国債を買いましょう!!!」
なんていう政府広告が流れたりして・・・それって不穏な社会情勢ですよね。
まるで、「戦時国債」な雰囲気になってしまうのではないでしょうか。
そうならないことを、心から祈っています(?)
だって、祈るしかないですから。
2008年11月17日 板倉雄一郎
PS:
週末は、過去の合宿セミナー卒業生向けの「オプション取引セミナー」を開催しました。
当事務所では、基本的に、長期バリュー投資を推奨してきたわけですが、世界の経済情勢がこれほどまでに変化した現在、「ロングポジションだけでは稼げない」わけですから、「他の手」をご紹介したというわけです。
盛況の内に新しい試みのセミナーは無事終了しましたが、セミナーコンテンツが非常に良かったので、いずれ一般募集も行ってみたいと思います。
その節には、どうぞよろしくお願いいたします。
PS^2:
風邪、ようやく良くなりました。
結局、「のどが痛い」と思ったときから一ヶ月を要しました。
読者の皆様も体調管理には十分注意してください。
けれど今度は、毎年恒例の「肩と背中の筋肉の塊現象」がやってきてしまいました。
首、肩、背かな、痛くて堪りません。
風邪の治りに時間がかかることも、毎年寒くなると「ぎっくり背中」になってしまうことも、「歳」を感じさせます。
くそぉ~!
でも、本人が「歳だなぁ」なんて言ってしまったら、本当にそうなってしまいますから、がんばってお食事会とその後のデートを継続しますです。はい(笑)