板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  ITAKURA's EYE  > ITAKURA’s EYE 「走りながら考える!?」

ITAKURA’s EYE 「走りながら考える!?」

板倉雄一郎事務所(のコミュニティー)では、2009年から一般にリリースできる「であろう」2つの新規事業を始めています。

(「合宿セミナー」の卒業生であれば、これらの事業に参加することができます。事実、2つの事業の一つには、およそ13名、もう一つには60名の合宿セミナー卒業生に参画いただいています。)

この2つの事業の準備を通じて、10年の間、新規事業をお休みしていた僕は、少しずつではありますが、ムクムクと「起業家魂」が復活しつつあります。

と同時に、過去の失敗から学んだいくつかの教訓が頭をよぎります・・・

1、リソースと経営スタイルの一致

事業のリソースとは、人、モノ、金、情報、時間、であることは言うまでもありませんが、それらのリソースの「性質」と、ビジネスモデルの「性質」の一致が図れて居なければ、事業は間違いなく失敗します。
たとえば、リソースの一つ「お金」について軽く説明すれば、極めてリスクの高い事業を行ううえで、リスクを好まない資金(←有利子負債)を利用すべきではなく、リスクを承知している資金(←イクイティーファイナンス)を利用すべきだといったことです。
この考え方は、お金に限らず、他のすべてのリソースについてもいえることです。
スタートアップの段階で、起業家が最も重視しなければならない仕事です。

2、経営スピードの意味を知る

経営にはスピードが必要であることは、言うまでもありません。
しかし、この場合の「スピード」とは、「世界初!」や、「業界初!」といった「急いで最初にやること」を意味するわけではありません。
少なくとも僕は、過去において「スピード」に関して上記のような誤解しており、それが事業失敗の極めて大きな原因であったと、今では認識しています。

経営におけるスピードとは・・・

(市場の波を観察し、事業スタートに絶好のタイミングを見つけたときに、すぐさまその波に乗ることができるように)

「組織の準備を整えておくこと」

です。

たとえば僕の過去の失敗の場合、「タラレバ」を言いたくはありませんが、もし「あと2年事業スタートを遅らせていれば、ネットバブルに乗れた」という考察ができます。
「早く」はじめるのではなく、チャンスに『速く』乗ることができる準備こそ経営におけるスピードです。

3、経営者の最も重要な仕事は、ディシジョン・メイキングである。

別の言い方をすれば、いちいち細かいことに口を挟むべきではない、と言うことになろうかと思います。
全経営責任を負っている経営者は、細かいことも気になります。
また、商品やお金の使い方における細かいことが「気にならない」経営者もまた失格だと思います。
細かいことが気になるが、それら一つ一つの事象についていちいち具体的な口出しをするのではなく、気になる細かいことが発生する原因を突き止め(それは多くの場合、ヒトに依存するのですが)、気になる細かいことを一掃するような「教育」であったり、「システム改善」であったりを行うべきだと思います。

それらのベースになるのが、「事業理念」の統一性だと思います。

「何のために我々はこの事業をやっているのか」

それをトップが明確に示すことができ、組織に浸透すれば、経営者がいちいち気にしなければならない細かいことが発生する可能性がぐっと下がります。

経営を継続するにあたり、経営者は常に、「事業理念」をベースに経営判断を続けなければならないと思います。

このまま書いてゆくと一冊の本になってしまいますので、詳しくは、過去の僕の著書「失敗から学べ!「社長失格」の復活学」板倉雄一郎著 日経BP社に譲るとして、本日の主題に移りたいと思います。

 

「走りながら考える!」という事業を進める上での考え方についてです。

結論から書けば、ある条件を満たせば「走りながら考える」は極めて合理的な行動規範です。

もし、あらゆる情報、あらゆる意見、あらゆる思考を重ねた上で・・・

「これ以上は、やってみなければわからない」

と自信を持って自分と自分の組織に言えるのであれば、あとは「走りながら考える」という言葉は励みにもなり、不測の事態が起こった場合の対応における勇気にもつながると思います。

しかし、「走りながら考える」という言葉を、「今考えるのが面倒だから」と、思考停止のための「イイワケ」に使われる場合を良く見かけます。
これはいただけません。

あらゆる思考を重ねるために、その準備期間を十分に取ること、これは事業の成否を決定する極めて重要な経営者の仕事だと思います。
上記の「2」で書いた「経営のスピード」と合わせて考えれば、なおさら重要なことです。

 

本日、新規事業の一つについて、担当するパートナーから以下のような意見をいただきました・・・

「現状のリソース(←人材のこと)を考えれば、しっかりしたアウトプットを出せない可能性もあるので、別の収益源も考えた方がいい」

僕は即座に反論しました・・・

「準備が始まったばかりの(←価値創造の努力が始まったばかりの)リソースの状態を前提に、将来の事業プランを考えるべきではない。」

つまり、リソースベースで事業計画を考えるのでは、「何の価値想像も伴わない」と僕は思います。

事業理念に基づき、「何を実現したくて事業を始めたのか」を常に認識し、それを実現するために必要なリソースを調達するか、現状のリソースの価値を高める「努力」があってこそ、事業を行う本当の意味があるのだと思います。

「走りながら考える」という態度だと、以上のような「本来の目的」を見失い、「今のリソースで何ができるか」と考えるようになってしまうわけです。

上記パートナーの指摘どおり、確かに準備が始まったばかりの現在では、事業目的を達成する上で、リソースの状態が完全ではありません。
しかし、この事業の場合の主なリソースは、「資金」や「モノ」ではなく、「ヒト」です。
「ヒト」の最も優れたところは、「成長することができる」点にあります。
そのために「十分な時間」を準備にあてることの方が、「(ソフトウェア開発で言えば)バグだらけ」の状態で早期にリリースすることより遥かに重要なことだと思います。

このサイトの読者の方々には、2009年中には新規事業をリリースできると思います(たぶん)。

板倉雄一郎事務所のコミュニティーだからこそ可能な事業です。

乞うご期待ください。

2008年9月3日 板倉雄一郎

PS:
あんまり意気込みすぎて、結局細かいことに具体的な指示を出しすぎて、焦って、結局過去と同じような失敗をしないように、仕事に没頭「し過ぎないように」、お食事会のペースも守って楽しみたいと思います(笑・・・なんですかその結論)

というのも、過去に経営していた企業の場合も、僕がホドホドに遊んでいたときの方が、事業が順調だったという経験があるからです。
せっかく順調に進んでいた事業を、大化けさせるために、僕は日に18時間労働に切り替えましたが、その結果が、タイミング見失い、方向性を見失い、理念を忘れ、大失敗となりました。

同じ失敗は繰り返したくないですよね。
それじゃ、何のために失敗したのかさっぱりわからなくなってしまいます。

というか、いまどき(経済状態が極めて悪化している現状で)お食事会なんかでお金と時間を使っている方は、やはりそれなりにビジネスを上手に行っている方々ばかりですから、彼ら(時に彼女ら)と接することによって、極めて多くの情報とヒントを得られるわけです。
これらは、「本や新聞には書いていない」極めて重要なことです。

早速、最近、新規事業の「売り方」についてのヒントを得ることができました。





エッセイカテゴリ

ITAKURA's EYEインデックス