板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「なにが起こるかわからない2009年」

読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。
(↑ ちょっと遅いですけれど)
本年は、昨年中の「お遊びモード」を少々返上し・・・

セミナー事業(既に募集を開始している「実践・オプションの基礎と活用セミナー」に続き、2月には久々の「合宿セミナー」の開催も予定しています)、

新規事業(2008年中に、セミナー卒業生と共に一つのIT関連新規事業をスタート・アップさせましたが、2009年には更に2つほどの事業を開始予定です)、

コンサルティング活動(僕がお役に立てそうな事業において、アドバイザーとして価値提供をするお仕事を2008年末よりやらせていただくことになりました)、

執筆活動(今のところ2件ほど出版計画がありますが、本当に書くかどうか・・・)、

など、精力的に活動をさせていただく年にしたいと思います。

エッセイも継続的に執筆しますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

(「お遊び」は、ほどほどに継続したいと思いますけれど)

2009年最初のエッセイは、これまた徒然とさせていただきます・・・

<欧米文化から東洋文化への回帰!?>

昨年末以来、「西洋的価値観から東洋的価値観への回帰」なる表現を見聞きする機会がありました。

もう少し具体的に表現すれば、行き過ぎた金融資本主義をベースとした消費社会から、モノや資源を大切に有効利用する経済へのシフトといったことになろうかと思います。

一見、聞こえが良い見通しですよね。

そして、米オバマ政権が打ち出すであろう「グリーン・ディール政策」に代表されるように、環境や資源を大切にする社会を「一見」、目指すかのように見えます。

僕個人も、本当にそのような社会にソフト・ランディングできるのであれば、それに越したことはないと思っています。

このまま世界経済が危機を脱し、再び順調な「成長」を続けることになれば、いずれ資源も地球環境も人類の生存を満足できない状態になるであろうと(素人ながら)思うからです。

しかし、現実的には、「そんなの無理」です。

<アメリカのビジネスモデル>

世界経済に大きなインパクトを与えているのは、なんだかんだいってもアメリカです。

何度も書いていることですが、アメリカの金融資本主義ビジネスモデルの要は、基軸通貨ドルあってこそ成り立っています。

基軸通貨をベースに赤字垂れ流しで世界からモノやサービスを買い、その過程で失ったドルを、米国債や米国企業への海外(←対米輸出黒字国)からの投資などによって還流さえることによって「ようやく」成り立っている金融資本主義ビジネスモデルは、だから常に、「対米投資のネタ」を「無理やりにでも」作り上げることによってかろうじて回っています。

その「ネタ」は、たとえば、1990年代のIT産業であり、2000年代の石油関連企業(←アフガニスタン、イラクに関連する戦争物資産業も含む)であり、同時期のインチキ不動産業であったりするわけです。

米オバマ政権の掲げる「グリーン・ディール政策」は、「地球環境を何とかしよう!」といった正義感に満ち溢れた政策という側面より、「次なる(米投資の)ネタ」の側面の方が遥かに高いと思います。

そもそも、アメリカ経済は「グリーン」に対し、技術的にも、生活習慣的にも、最も遅れている経済システムですから、本気で環境問題を解決しようとすればするほど、その分野で優れている日本や欧州にしてやられる可能性が高いわけです。

そんなことアメリカがする分けないのです。(笑)

彼らは、現在の国家ビジネスモデルを維持するための「次のネタ」を着々と準備しているに過ぎず、その戦略の見事さ(←これは多くの過去の例で検証できます)から、アメリカの金融資本主義ビジネスモデルは、「しばらくの間(←それは3年とか5年とかではなく、もっと長く)」継続することになるのだろうと思います。

誤解を恐れずに言えば、2007年から顕在化した金融危機のおかげで、彼らの「何でもアリ度」は、より一層加速するのではないかとさえ思います。

直近の過去の歴史で考えれば、たとえばイラク戦争は、ユーロ建てで原油を欧州に輸出しようとしたイラクに対して、「そんなことしたらドル基軸が揺らぐじゃねぇ~かよ!」とこぶしを振り上げたことは明白です。(← それ以外に米国がコストと人材損失をかけた理由は見当たらない)

つまるところ、世界経済とは、純粋な経済学より、国家の存続をかけた政治的な動機によって支配されているわけです。

その観点から考えれば、アメリカが自らの存続のために「なんでもあり」の政策を実施するのは自然なことだと思います。

<ドル安は誰も望まない>

基軸通貨ドルがあってこそのアメリカは、基本的に「ドル安」を望みません。

そして、世界のあらゆる国が、米国債や米企業への投資など「ドルの金質」をアメリカにとられている上に、アメリカは、「大切なお客様」ですから、誰もドル安を望みません。

世界経済が国家戦略によって多くの影響を受けること、そして、誰もドル安を望まないことを考慮すれば、基軸通貨ドルの存在も、長期的なドル安もありえないと思います。

とにかく、それが「グリーン・ディール政策」なのか、「食糧政策」なのか、(農産物を含む)遺伝子工学なのか知りませんが、とにかくアメリカは「次なるネタ」を用意し、世界の「基軸」でありつづけるための戦略を講じてくるのだろうと思うわけです。

以上の仮定の下では、「アメリカ経済が回復(のように見える)時期は、(一時的ではあるが)割と早く訪れるのではないか、と思う部分もあります。

<GM救済は失策>

とはいえ、アメリカの失策も多々あると思います。

政府によるつなぎ融資を受けたGMがやっていることは、報道によると「ローン金利ゼロキャンペーン」なる、単なる「安売り」です。

政府の援助(←いや国民の援助)を受け、安売りをやっているだけですから、企業としてのGMが提供する価値は、金融危機以前と比べ、なんら変わらないということになります。

少なくとも、トヨタが太陽電池車などの「次世代自動車への投資」を行っていることとはまるで対照的です。

この会社、ダメです。

ダメな会社を延命するための「バラマキ」は、単にドルの希薄化を招くだけで、一時的な株価上昇、新車販売台数の下支えにはなっても、本質的な解決にはなるはずもありません。

アメリカでも日本でも同じですが、「成長分野へのバラマキ」でなければ、通貨の希薄化を招くだけです。

とはいえ、関連する労働者など500万人とも言われるビッグ3を今破綻させるリスクとコストは計り知れないですから、「誰も責任取りたくない」わけですが・・・

「破綻させるコスト」VS「延命するコスト」

を正確に算出できる人などこの世に居ないのですが、僕個人的には・・・

「破綻させるコスト」<<「延命するコスト」

ではないかと「感覚的に」思います。

<米民主党は何をするのか?>

それによって米共和党議員などが反発する「大きな政府」への舵取りがある程度現実味を帯びるのではないかと思います。

というより、米民主党政権が経済の建て直しを行う上で、最も抵抗になっている「税を無駄使いするなぁ!」という共和党政権に対する「だってしょうがないでしょ!ほら」といった説得材料にもなりうるのではないかと思うわけです。

ビッグスリーかもしれないし、複数の地方銀行かもしれないし、大幅なドル安かもしれないし、とにかく「何らかのトリガー」を米民主党は、彼らの政策を実施するために、「わざわざ」引くのではないかと思います。

そのとき、相場は底入れするのではないかと思うわけです。

<日本と同じ道を、アメリカ発で世界が追う>

2009年の世界経済は、かなり厳しいことになりそうです。

FRBが金融緩和を実施しても、直接企業に融資を行う商業銀行は、その融資基準を厳しくしているようです。

まるで、90年代の日本と同じような軌跡です。

中央銀行がお金をばら撒いても、商業銀行で目詰まりを起こす。
これを解決するには、財政出動しかないわけですが、それこそ米民主党の「望むところ」ではないでしょうか。

過去に例を見ない「直接バラマキ」を実現できるわけですから。

アメリカが民主党政権になって、尚さら「なんでもアリ」のアメリカが、それこそ何をするかわからない(=どうなるかわからない)と思うのは、僕だけではないと思います。

<その時こそ世界大恐慌>

欧米文化から東洋文化への回帰!?から始めた本日の徒然エッセイですが、本当にそれが起こるのであれば、その時こそ、アメリカ金融資本主義が崩壊=世界大恐慌が現実になるのだろうと思います。

人は、身勝手です。

子々孫々のことを最重要課題として考えることができる人など、ごくわずかです。

「今の世界大恐慌と将来の継続性」を望む人より、
「子々孫々を犠牲にした今の繁栄」を望む人の方が、遥かに多い。

そう思うのは、やはり僕だけではないと思います。

アメリカ金融資本主義が、世界をそうしてしまったのだと思います。

大変残念なことではありますが、それも人類が生き残る「一つの選択肢」なのかもしれないと思います。

2009年1月7日 板倉雄一郎

PS:
遅ればせながら、高城剛氏に「おめでとう!」じゃなくて、「ありがとう!」と言いたい。

彼とは、彼がJ-waveでDJを勤める番組(番組名失念・・・確かピーター・ドラッカーの他界に関する番組だったと記憶しています)に出させていただいたぐらいのお付き合いしかありませんが、オーバー40の男が、美しく可愛い20代前半の女性と結婚するというニュースは、「うらやましさ」より、「オーバー40の証明」に成り得ると解釈できるわけです。(笑)

元気が出るニュースをありがとう!!!!

つまり、「実年齢」じゃないんだよね。

今年も、「お遊び」がんばろっと。

あっ、彼の場合、「結婚」だから「お遊び」じゃないんだよね。
そのあたりが、イマイチ、モテない僕の原因???(笑)





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