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ITAKURA’s EYE 「ネットビジネスモデルの条件(その4)クラウド」

「iPadを使い始めた」という情報を公表すると、様々な利用方法に関するアドバイスをiPhoneやiPadの先輩達からいただくことになりました^^

なかでも、iPadと自宅PCの間のデータのやり取り・・・それはiTunesによる同期ではなく、外出時にiPadの内部に無い情報へのアクセスのことですが・・・について、クラウド系のツールをご紹介いただき、便利で感謝しているところです。

すでにご存知の方も多いと思いますが、「Dropbox」は使い勝手が良いです。

PCとiPadの両方にインストールしておけば、ネット接続さえ出来ていればいつでも情報にアクセスできます。
PC側には「My Dropbox」なるフォルダーが「MyDocuments」内に作られて、このフォルダーに必要なファイルを放り込んでおけば、外出先のiPadのDropboxアプリから簡単にアクセスできるというわけです。
「My Dropbox」に放り込んだファイルは、バックグラウンドでPCからクラウド上のサーバー(無料では2GBの容量で、月額料金を支払うと容量を増やせます。)にアップロードされ、外出先のiPad上のDropboxアプリのデータフォルダーには、実際にファイルを開かない限りサーバー上のファイルのインデックス「だけ」が見え、実際にファイルを閲覧しようとすると、ファイルがダウンロードされ表示されます。
また、閲覧したファイル(=実際にダウンロードされたファイル)は、たとえばPDFであれば、iPad上のiBookアプリ内に格納することが出来て、外出先でのちょっとしたプレゼンテーションなんかに使えます。
もちろん、「素晴らしい技術」とか、「新しいアイデア」ではありませんし、既存の無料サービスでも工夫すれば同様の目的を果たせる場合もあります・・・たとえばGmailに必要なファイルをメールに添付したカタチで置いておくなど・・・ですが、このアプリの場合「使い勝手」が非常に良いと、少なくとも僕は感じました。

このようなクラウド手法の利点は・・・

1、ネット上の資源を有効利用できる

情報インデックスの共有が基本で、実際の閲覧を行わない限り、ファイル本体(以下ボディー)の転送が伴わないので、自分のPCやiPadのコンピュータ資源(・・・ディスク容量、通信負荷)ばかりではなく、ネット上の資源(・・・トラフィック)の利用を最小限にすることが出来る。

2、大容量のファイルでも容易にデータ交換できる

メールソフトへのファイル添付の場合、相手先のメールサーバーやメーリングソフトの仕様次第では、ファイルが勝手に削除されてしまったり(・・・iPadの場合、ファイルが大きいとiPadのメーラーがダウンロードしてくれません)、そもそもメールのアップロードもダウンロードも結構時間がかかってしまいますが、それを回避できます。
(もちろん実際に閲覧するときはFTPが行われますから、その分待ち時間がありますが、My Dropbox フォルダ内のすべてのファイルをFTPするわけではなく、今見ようとしているファイルのみのFTPですから、イライラするほどではありません。)

3、クラウド利用でネットの利便性を最大化できる

いうまでもなく、自宅、外出先のプライベート端末、そして他人のPCなどからクラウド上のデータにアクセスできるわけですから、この上なく便利です。

こういったクラウド利用の利点が最も顕著に現れるのが「大容量ファイル」の閲覧や配布の場合ではないかと思います。

たとえば僕の場合、新調したケータイ(F-06B)・・・それは僕にとってWi-Fi親機としての機能が最も重要ですが・・・フルHD撮影が可能なので、パーティーやデートの際、ついつい撮影してしまうのですが、撮影なんかしてると、こう言われる事多くないですか・・・

「今撮ったやつ後で送ってね^^」

低解像度&短い時間の動画であれば、ケータイメールでも十分に送れますが、フルHD&長時間となれば、メールでの送信は無理。
DVDメディアに焼こうものなら、ファイル変換やらで結構な時間が必要になり、その間PCの資源はかなりの割合で占有されるので、お話になりません。
当然複数人への配布なんて絶対に無理。
そこで、クラウド上に保存しておいて、そのインデックス情報(と必要によってPassword)を配布したい複数の方にメールで送ればよいわけですよね。
後は、実際に誰かが閲覧するときにストリーミングだかFTPだかが行われるといったぐあいに。

<情報カテゴリの分離通信>

映像コンテンツは、大容量ファイルの代表例ですが、大容量であるからこそ、その扱いは上記のようにめんどくさい。
僕の考える理想的クラウド利用を映画で考えて見ると・・・

一度、何らかの方法・・・店頭やアマゾンでDVDを買ったとか、VODサービスでストリーミング視聴したとかなんでもOK・・・で買ったことのある映画は、本人認証さえ出来れば、どんな場所のどんな端末でも視聴できる。
そうなってもらいたいものです。
出来れば、映画館で観た映画についても、同様に視聴できたら良いと思います。
映画のような商業コンテンツの場合であれば、一度なんらかの方法で買ったコンテンツを別の方法で視聴する場合には、その方法に関する付加費用だけ支払うといった感じで。
たとえば、一度DVDで購入しておけば、クラウド上の映画コンテンツをストリーミングによってケータイで視聴する時に、「新規の支払い」をするのではなく、ケータイでの視聴時に必要な「ファイル形式変換サービス」分の費用を支払うことによってケータイでの視聴ができるとか。

その場合、面倒な利権問題はとりあえず置いといて、必要なシステムとは、コンテンツと利用者に関する情報を別々に管理・通信するインフラだと考えます・・・つまり、ライセンス管理サービス、映像コンテンツボディーの唯一存在、ファイル変換サービスなど。

1、ライセンス管理サービス

その人が、その映像コンテンツを見る権利を持っているか否といった「ライセンス管理」を行うサーバーがクラウド上に唯一存在すればよい。
というより、唯一の存在でなければまずい^^

2、映像コンテンツボディーの一元化

その映像コンテンツの「ボディー(←実際の映像データ)」は、クラウド上の「たった一箇所」にだけあれば、1のライセンス管理と合わせて、視聴権利のある人の視聴リクエストに応じて適当なファイル形式でストリーミングなりFTPなりしてやればいい。
この方法だと、コンテンツボディーになんらかの修正が加えられても、全世界の視聴者に対して修正が有効になる(ダウンロード保存している場合も、ファイルに変更を加えることは容易に出来る)

3、ファイル変換サービス

解像度や通信速度など、そのとき利用する端末の仕様に対し、コンテンツボディーを最適化させ送ってあげるサービス。

で、何が出来るか?

たとえば・・・

「友人に映画をプレゼントできる」

コンテンツボディーをDVDなどの物理メディアを送る必要なんてない。
友人がそのコンテンツを視聴できる権利を自らが買い、メールにてそのコンテンツの「インデックスだけ」を送ればよい。
受け取った友人は、メール上のインデックスをリンクすれば、ライセンス管理サーバーに問い合わせ後、そのコンテンツを、いかなる端末でも見ることが出来るといった具合に。

「自分の映像をシェアできる」

自分で撮ったパーティーの映像の権利は、(細かいことを言わなければ)自分がすべての権利を持っているわけだから、その旨を上記のライセンス管理に通知し、配布したい複数の友人へ無料で(場合によっては有料で(笑))ライセンスを提供し・・・「パーティーの映像見てね」と映像コンテンツのインデックスだけをメールによって送ればいい。
友人は、手元にある端末からパーティーの映像を観ることが出来る。

「同じ映画を違う人と見る場合のコスト削減(笑)」

まあこれは半分冗談ですが、彼女1と観た話題の映画を、全く観ていないふりをして彼女2と見に行く場合、一度その映画を「買ったことがある」という情報は、クラウド上にあるので、チケットをケータイのIDなど通信機能のある電子マネーで買うときには、「(自分の分は)映画館のスペース利用分」だけのチャージで観ることができるとか。
もちろん、このような機能は彼女1にも彼女2にも適用されるので、彼女1や2が、他の男性と見に行くときに、映画をおごる男性は、彼女の分の料金が安いことが気になったりするのですが(笑)

といった具合に、大容量コンテンツとクラウドコンピューティングはとっても相性がいいと思います。

ただし、様々な利権が絡むことですから、技術的なことより商業政治的な部分で実現は遠い将来ということになろうと思います。
本質的には、既得権を持つ者にとっても、以上のようなクラウドに賛同することは、足元の利益を失うが、将来の利益を増大させること・・・つまり投資・・・に値すると思うのですけれど。

様々な端末の存在、大容量常時接続の常識化・・・これらはビジネスを大きく変える可能性を持っています。
後は、ビジネスの変化を恐れないビジネスマンの器量次第ってことではないでしょうか。

こういった話は、文章で書くと、本当にめんどくさい。
30年後ぐらいには、脳みその中の映像を他人とシェアできるようになるかもよ^^
それって、結構、ヤバイですね(笑)


2010年7月1日 板倉雄一郎


PS:

テレビリモコンを使っていて毎度思うのですが、なぜ、「どこから飛んでくる電波か」によるカテゴリ分けが必要なんでしょうかねぇ?
地デジ、BS、CS、光・・・これらの違いって利用者にとってはどうでもいいことですよね。
録画されたかどうかさえ、YouTubeによって意味なくなっているんですから。

もちろん、コンテンツはフリーが当たり前!なんていうつもりは全くありません。
むしろその逆で、視聴者の目的はコンテンツそのものなわけですから、そのコンテンツがどのような媒体によって運ばれ、どのような端末で観るのか、なんてことに視聴者の支払いの多くが配分される現在のシステムより、コンテンツそのものに対して多くの配分がされるべきだと思います。
そのほうが、より価値の高いコンテンツが増えると思うのですけれど。
(書籍の場合、著者への配分は、書籍購入者が支払う金額のわずか10%ですから)

何度もしつこいようですが、既得権を持つ者が長期的視点を持って取り組めば、あらゆるビジネスが理想系に近づくと思うのですけれど。

既得権者が、提供した価値以上に儲けるために、最終支払い者に経済的負担と非利便性を強いている・・・そんな非合理的なことは、技術と時間が変えていくことを願います。


PS^2:

経済見通しや相場については、悲観論ばっかりでおもしろくないので(笑)、しばらくは、分析系ではなく創造系のエッセイを続けたいと思います。


PS^3:

それにしても蒸し暑いですよね。
おかげで、部屋にこもってiPadいじりまくりです。

でも、ふと、思うことがあります・・・

「こんなに工夫しながらiPad使うなら、5万円のノートブックの方がいいんじゃないの?!」
って(笑)

ノートブックなら、キーボード付いているし、ファイル操作やメールなど柔軟性が高いし、そもそも慣れてるし・・・つまりWindowsPCなら、ぶっちゃけなんでも出来ますよね。
大きさだって、iPadに本皮カバーとか被せたら同じぐらいですからね。

でも、逆に言えば、それでも使いたくなるアップル製って、まさに「エロさの価値あり!」ってことですね^^

アップルの業績を見ていて思うことは、「機能の詰め込みじゃ儲からない」ってことです。

それにしても、iPadの液晶画面上のソフトキーボードに慣れようと努力する僕って一体・・・





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